ラス(L'AS)/表参道


表参道から徒歩10分の裏路地に佇む当店。シェフは2014年イギリスの高級グルメ雑誌「FOUR」主催の世界の若手ベストシェフに選ばれた実力派。
前回お邪魔した際はコルク側(同系列の店)に座ったので、今回の引き出しカトラリーは初体験です。なるほど大箱でテンテコ舞い状態のホールには手間の省ける良い工夫。
コース料理にワインペアリングを注文。「お誕生日おめでとうございます!お祝い遅くなってスミマセン!今日は好きなだけ飲んで!」ニッコリと笑いながら身を乗り出す彼女。確かに久しぶりだね、元気にしてたかい?

アミューズに「ひとくちの自家製モッツァレラチーズ」なるものが出たのですが久方ぶりの会話で盛り上がってしまい写真撮影を失念。白玉のような弾力のあるチーズであり面白い食感です。
スペシャリテのフォアグラのクリスピーサンド。前回食べた時よりも格段に美味しく感じました。フォアグラの個体差なのか、フランボワーズの風味に拠るのか。ポーションは変わらないはずなのに極めて食べ応えがあり、初っ端から本日一番のお皿です。
こちらのワインも絶妙。それほど値の張るものではありませんが、先のフォアグラにはベストマッチ。本日一番のマリアージュです。
「極上香りシメジとルッコラ、レンコンチップのサラダ、濃厚な温泉卵とウニのソース、ミモレットチーズ」仰々しい料理名ですが、これはまあ普通。自宅でも真似できそうです。
「全然連絡できてなくてスミマセン!最近カレシができたんですよ。もう、すっごくヤキモチ焼きで。今日はちょうど出張でいないんです」と片目をつぶる彼女。
パンは表皮がホロホロとこぼれるようにデリケートであり、内部はザクザクとした食感。中々に美味しく私好み。
なめらかな鶏白レバーとビーツのワンスプーン、オレガノ、ブラックオリーブパウダー。品の良い鶏白レバーに滋味溢れるビーツの香り。オレガノのアクセントも心地よい。もともとビーツはそれほど好きな野菜ではないのですが、大変美味しく頂けました。
「わ、ホラ、電話かかってきた。2人が離れているときは数時間おきに何かしら安否確認があるんですよ」しっ、と唇に人差し指を当ててから、通話ボタンを押す彼女。女はイザとなれば息をするように嘘をつく。
静岡県産フジマスのミ・キュイ、長野県産のキノコのスープ。マスこそは一般的な味覚ではありますが、量がたっぷりで嬉しい。キノコのスープもジャブジャブと気前良く、これにご飯でもぶち込めばそれだけで立派な昼食として成立するレベルです。
大変だね。ただ、嫌なことを言うようだけど、パートナーの浮気を心配する人は、そもそも本人にそのような下心があるからそういう心配をするんじゃないのかな、と私なりの考えを述べる。
イベリコ豚とタマネギのブロシェット、赤パプリカとトマトのピペラードソース。生ハム以外のイベリコ豚はあんまり好きじゃないのですが、この調理には満足。シンプルで飾り気の無い料理。万人ウケする味覚です。
「でも、あたしたち、結局こうやって2人きりで会っちゃってるから、嫉妬とか束縛とかって、何の役にも立たないってことですよね」と、彼女は小悪魔的な笑みを浮かべながら真っ赤なワインを口に含んだ。
ミニトマトのコンポート。そのまま食べて爽やか、追加でオリーブオイルを垂らしてもう一口。トマトを用いたデザートと見せかけて、オリーブオイルの香りを楽しむ工夫です。
お誕生日プレートをご用意頂きました。ありがたやありがたや。焚き火と焼きいもをイメージしたスイーツであり、焼きいも味のアイスクリームは勿論、我々の手元でも燃え続け香りを発し続ける見事な工夫。記憶に残ったデザートです。
オリジナルブレンドのハーブティで胃袋に休息を。

ごちそうさま、色々とややこしそうな時期なのに時間を作ってくれてありがとう、と丁重に礼を述べる。「とんでもないです!でも今度はいつ会えるかな。チャンスがあればすぐに連絡するからね!」チャンスがあれば、と彼女は再び繰り返す。

アリバイ工作など工夫すればどうとでもなる。


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