アパッペマヤジフ/麻布十番


20歳の頃からの仲間との飲み会。ちとせ会館のレモンハウスから麻布十番の先鋭的なレストランで飲むようになり、我々も大人になりました。
「いやあ~お待たせ。俺イケメンだから10分遅刻しちゃったわ」と、A氏が登場。彼は一般の男性なのですが稀代のトリックスターであり、私の中では芸能人と同一視しています。彼の日常の細々としたエピソードを聞いているだけで愉快な気持ちに浸ることができる。家に遊びに行くと、大体美女が泣いています。
乾杯に併せてレバーのムース。手前がオリーブに、奥がトマトだったっけ?素直に美味しく酒が進む。今後の展開に期待を持たせてくれる味わいでした。
「いやぁ~、もう毎日ぷっちゃぷちゃなんだけど~」何でも最近遊んでいるパートナー(彼の女性関係は3ヶ月で入れ替わる)が性病に罹患し、その対応に手を焼いているとのこと。「もう俺、クラジミア2年ぶり8回目なんだよね。紅白歌手みたいでしょ?」究極のモラルハザードも、ここまで爽やかに語ってくれると気持ちが良い。
前菜盛り合わせ。ラタトュイユにレバーのパテ、イワシのマリネ、パテドカンパーニュ、中央はキノコのマリネです。イワシが記憶に残りました。旨味と脂が調和し男性的な味覚。量も結構あって、プレミアムモルツにピッタリです。
「コイツに自分の女友達紹介するのはマジでやめといたほうがいいぞ」と、B氏。「夜中に『○○くんどこにいるか知らない?』って女から泣きながら電話かかってくるから面倒でしょうがない」

「ああ、あの子ね。なんかケータイ壊れてLINEが全部消えたみたいで。慌ててFacebookで連絡来たけどシカトしてる。いやー、どうやって切ろうかと困ってたから丁度よかったわ」ここまでカジュアルに紐帯を破壊してくれると、フラれる側もせいせいするであろう。
バカラオのコロッケ。バカラオとはタラの塩漬けの干物のことであり、おそらくそれを戻して衣をつけて揚げたものでしょう。一般的なコロッケのように炭水化物炭水化物しておらず、酒のツマミにピッタリです。
この前飲んだときはさ、『ゆうべで11日連続で違う女と寝てる。新記録だわ。内訳はご新規さん8名リピーター4名。あ、12日連続か。新記録だわ』って言ってたよね。最近はどうなの?と興味本位で聞いてみる。

「うーん、それがさ、全くペース変わんないんだよね。ってか、長い付き合いのキミらだから言うけど、ここだけの話、俺、ずっとこんな感じなんだよね」
スペシャリテの「胡椒壺炊き」。特殊な壺(土鍋?)で炊き上げる胡椒料理です。具材を豚肉・ラム肉・アンコウから選ぶことができ、我々はアンコウをチョイスしました。フタの周りがパン生地で密封されており、食べる直前に店員さんが切り分けてくれるプレゼンテーションも面白い。もちろんこのパンは食べることができます。
フタを開けた瞬間に、おお~、と、どよめく店内。バカみたいにアンキモが入っており、痛風患者であれば尻尾を巻いて逃げ出すことでしょう。香りを取ると、スリランカ産の生の胡椒が織り成す複雑な風味が素晴らしい。BB弾のような噛み砕くと青々しい辛味が口の中で大爆発。見た目以上に辛く、胃腸の弱い私は翌日までおなかが痛くなりました。
どうして毎晩毎晩セックスをする必要があるのか、と問う。「うーん、眠りに落ちる直前まで何かしてたいんだよね。予定無くひとりで家に帰って、ゆっくり風呂に入って、さあ寝よう、っていう生活が全くイメージできない。あのね、俺はキミらが思ってる以上に、もっとやってるからね
「まあ、こんな生活もずっと続くわけがないってわかってて、そのペースが落ちてきた時が結婚する時かなあ」彼の言い方は寂しそうにも、楽しみにしているようにも、どちらにも聞こえた。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。