高松/四条(京都)

四条烏丸を西に向かい、石畳の細い路地(膏薬辻子)の途中、京料理の金字塔『緒方』の斜向いに位置します。四条烏丸から徒歩5分という好立地。ミシュラン1ツ星。
2013年3月オープンと、割に新しいお店です。大将と女将のツーマンセルで臨む小さなお店 。意図的に客数を絞り、細やかな対応を心がけているのでしょう。大将は料理にかかりきりなので接点はありませんでしたが、女将の感じがとても良いですね。当意即妙に諧謔を弄する。カジュアルではありますが馴れ馴れしくはない、絶妙な間があります。
高校時代の友人と合流しエビスで乾杯。「最初に謝っておかなあかんことがあるねん」と穏やかでない。「このまえ会うた時に『○○さんを呼んでほしい』って言ってたやろ?あれ、連絡取ろうともしてへんかったわ」飲みの場でのくだらない約束を律儀に覚えていてくれるとは。私も軽率な発言は慎もう。
一皿目はジャガイモにイカ、バチコ。余計な調味がされることはなく、素材の味覚がダイレクトに伝わってきます。バチコの旨味がアクセントにすごくいい。
粕汁。具材はゴボウ、大根、ブリ、菜の花と具材が豪華。ランチの末友での粕汁はドロドロのヘヴィ級でしたが、当店は清澄の極みといったところ。味見のつもりでスープから口をつけたのですが、具材が干上がってしまうほど一気に飲み干してしまいました。
京都のお酒『坤滴』。何よりもまず、酒器がシャレオッティですね。中央部の氷で冷やす仕組みがアイデア賞。
お造りはヒラメにブリ。いずれも健康的な個体であり、醤油をちょこんとつけるだけで充分に旨い。たっぷりの大根おろしをブリで巻き、ミニチュアぶり大根として楽しむのもまた一興。
八寸が華やか。まず目で楽しむという日本料理の真骨頂。くわいのカステラが印象的。しみじみと甘く、仄かに香る野性的な香り。牡蠣も凝縮感があり酒が進みます。
風の森。コチラは奈良のお酒です。フルーティで清澄、キレイなお酒。ごくごく僅かな微発泡も魅力的なアクセント。
焼き物はタラの一夜干し。タラとしては美味しい部類に入るのですが、もう少しグっとテンションがアガる魚が良かったなあ。タマネギは甘みと旨味のバランスが良く、タラよりも記憶に残りました。
オマケのタラコの煮凝り。これは美味しいですねえ。ザラりとした舌触りから弾け出る塩気と旨味。日本酒をごくり。
おいなりさん。中にはゴロゴロとタケノコを湛えたしんじょうが詰まっています。油揚げのジュワリとした味覚がノスタルジアを感じさせ、素朴で懐かしい味わい。
〆シャンならぬ〆スパークリング日本酒。『月の桂』という京都純米にごり発泡です。基本的にスパークリング日本酒は好きじゃないのですが、これは例外。日本酒ながら酸味が実に豊かであり、米の甘味とのバランスもちょうど良い。サラサラと流れるようであり、あっという間に飲みきってしまいました。
食事はネギと鴨の炊き込みごはん。蓋を開けた途端、部屋中がネギの香りで満たされる。ネギマシュランとしてはあげぽよな瞬間です。
ネギの味覚が主体で鴨肉はほんの少し印象づけを行うという程度。調味も控えめであり、これまたスイスイと食べ進めることができました。お持ち帰りなどはせず2人で1.5合をその場で完食。赤出汁もお漬物も基本に忠実な味覚です。
デザートは長芋を甘く炊いたものとイチゴ。これは若干企画倒れ。ヌルりとした食感に妙な甘さが悪目立ちし、私は好きな味覚ではありませんでした。やはり長芋は醤油系の味が好きだ。

そこそこ飲んでひとりあたり1.3万円。京都のきちんとした割烹でのディナーとしては極めてリーズナブルです。同じものを東京で食べれば2万円は確実に要することでしょう。
料理の印象は素朴・シンプル。まさに引き算の料理であり、素材の味を引き出すという芸風です。ウニだトリュフだマツタケだ、といった料理を所望する方には合わない点も多々ありそう。京都の雰囲気のあるレストランの入門編に是非どうぞ。


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