赤鬼/三軒茶屋

日本酒の聖地、赤鬼。30年以上続く老舗であり、三軒茶屋の飲み屋の中では最も有名なお店ではないでしょうか。TVや雑誌の取材は日常茶飯事であり、東京屈指の予約困難店です。
店内は至って普通の居酒屋といった趣。入口がわかり辛い、というか隣の道路沿いのお店にうっかり入ってしまいそうになるのでお気をつけて。

なお、当店は予約困難ではありますが、2回転目に入りたい旨をお店側に伝えておき、近くの飲み屋で待機しておくと、電話をかけてくれるという仕組みもあります。どうしてもお邪魔したい方はその作戦でどうぞ。
私は平日17:45に入店。「ごめんっ!旦那のゴハン作ってから行くから少し遅れる!」とのことだったので、独りオゼノユキドケで始めさせて頂きます。ヴァイツェンタイプでフルーティー。ジューシーな風味が堪らない。
お通しは豚肉を炊いたものと、キュウリと鶏肉の和え物。普通です。
ビールが空いたので日本酒に移行。
なるほど有名店だけあってその種類はさることながら、当店限定品やPB品までもが充実し、飲みたいなという酒が常にあるという印象。
「赤鬼と言えば十四代」と十四代の充実ぶりが誉れ高いですが、岐阜の銘酒、小左衛門についての限定品も複数満たされておりました。
せっかくなので十四代の赤鬼PB。1,200円と格安です。香りが豊かで弾けるような瑞々しさがあり、一方で水のようにスイスイと飲めてしまいます。
思わずホタルイカの沖漬けを注文。美味しいのですが、ちょろりと4匹だけというポーションであるため、これで500円は割高です。
「遅くなってゴメンね。旦那に『飲んでくる』って連絡したら『いいけど、飲み始めの時間、早くない?』って怪しまれちゃって」滝沢眞規子似の専業主婦と合流。たまらん、とビールを一息で飲み干し、あっという間に日本酒に辿り着く彼女。
こちらも赤鬼限定の生酒。先のPB品よりも果実味が豊かであり、青リンゴジュースを飲んでいるかのような錯覚に囚われます。

「おつまみ、さっき頼んでたよね?来るの遅くない?」と専業主婦。確かに我々はお通しと沖漬けしか食べておらず、20分前に注文した食べ物が到着する気配が無い。
お刺身盛り合わせ。当日注文の場合は8種盛ですが、電話予約の時点でお願いしておくと1種類追加サービスという仕組みです。これはいいシステムですね。客が嬉しいのはもちろん、お店側も需要を読むことができる。今夜はシマアジとタイが特に良かったです。

「不味くは無いんだけどさあ、オペレーション悪すぎじゃない?このお店」と滝沢眞規子。彼女は気が短いわけでは決してなく、客数に対しての店員の充実ぶりを鑑みると、あまりにスピード感に欠けた接客であることは事実です。
日本酒をおかわり、なのですが、先の杯が空いて注文してから到着まで20分近くを要しました。あまりに提供が遅いので何度も店員を呼びとめようとするのですが、「順番にお伺いしてますので!」と何故か店員側がキレ気味。いや、順番も何も、私が随分前に注文したものが来ていないだけなのですが。ムス子さんのように不機嫌になりつつある滝沢眞規子。
珍味3点盛り合わせ。左からホヤ、フキノトウ、カラスミです。フキノトウが秀逸。このような形で食すのは初めて。しかしながら量は赤子の小指ほどの量。

和らぎ水をお願いしても予想通りデリバリがなってなく、何人もの店員に声をかけまくってようやくありつけるという始末。一見客は百葉箱のように忘れ去られた存在なのかもしれませんが、人によってお辞儀の角度を変えるのは良くありません。
あと数品は食事を楽しみたかったのですが、「ねえ、あたしこの店もう無理だ。クチコミ、めっちゃくちゃに書いてやってよ」とタオルを投げる人妻。

もちろん悪意をもって問題を考えるようでは何も得ることはないので、単純に悪口のみを並び立てるつもりは無いのですが、それにしても接客が一事が万事この調子であり、被災地に贈られる千羽鶴ぐらい役に立ちません。

大勢いる店員は置物に近く、置物にしては可愛げがまるでない。少しでも催促すると不機嫌な表情を遠慮なしにぶつけて来るため、客は水の中に潜ったかの様な圧迫感に苛まれ続けます。もちろん彼らが生まれながらにしてヴォルデモートのような悪意に満ちていたかというとそうではなく、言うなれば気の良い新卒一般職が、役員秘書となった途端に感じの悪い女に成り下がるという構造に酷似しています。

哲学のあるオヤジが客を指南する、というスタイルであれば許容できるのですが、店の雰囲気が全体として天狗であり、バイトの若造まで客に対して居丈高な態度をとる虎の威を借る狐感はサービス業として認めることができません。

この店は昨日の専門家かもしれませんが、明日の専門家ではないでしょう。この状況が続くのであれば、近い将来、日本酒界のアンシャン・レジームとなること必至。デジタルネイティブ世代はそんなにお人好しじゃないですよ。


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私はヒールからスニーカーまでイケるクチです。三ツ星店もいいけど、場末の飲み屋街も魅力的。
おひとり様大歓迎の名酒場100軒を掲載。ひとり客の割合・男女比・ビールの値段などを「酔い処早見表」として整理されており読み易いです。紙媒体だと1,000円近くする本が、Kindleだとたった500円でお買い得!

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