不風流/麻布十番


万歴龍呼堂という、ミシュランの星を取ったレストランがいつのまにか閉店し、不風流としてリニューアルオープンしていました。ぶふうりゅう、と読みます。
外装の土壁や、店内のカウンターなどがとにかくカッコイイ。現代的な美術館の趣きさえ感じられます。

シンプルな焼き魚を食べに行くつもりだったのに、「トリュフがけ極上すき焼」という響きに抗えず、そちらを注文。4,500円です。
注文してから15秒後に供される出汁巻き。味は中くらいですが、中々に量が大きく食べ応えがありました。
「ゴハンのお供にどうぞ」と、スジコ、昆布、お漬物です。しかしながらゴハンは手元にございません。供出順序がよくわからない。昆布は普通、お漬物はカットが大きく歯ごたえが楽しめて美味、スジコは間違いなくおいしいのですが、ふたりでこの量なので、粒を数え切れるほどに微々たる量でした。
お造りはアイナメにマグロ。アイナメが素晴らしい。コリコリとした歯ごたえにムッチリとした舌触り。品の良い甘味と旨味を湛えた固体。ポーションも結構あって、本日一番のお皿です。マグロは標準的なものでした。
ゴハンが登場。「京都米釜炊き白米」という響きが良く、厳かな土鍋からよそってくれるのですが、注文後5~10分で置かれた一膳という意味で、炊きたてというわけではなさそうです。それでもピカピカに輝く真っ白な白米様。文句なしに美味しかった。
本題のすき焼。ひとりあたりの量は50グラム程度でしょうか。肉にまつわる説明などは一切なく、あっという間に調理に着手。
関東風や関西風など色々ありますが、最終的には野菜などが加わった鍋状態となるのが私の中でのすき焼きの定義。しかしながら当店は肉を焼いてタレをかけて終わりという、しょうが焼きのようなスタイルでした。
肉を小皿に移し、表題にあるトリュフをワシャワシャと削っていただき、
「トリュフがけ極上すき焼」の完成です。これで注文後12分ぐらい。味わいはまあ美味しいのですが、トリュフの香りは飛んでしまっており黒色のダイヤの醍醐味は感じられず。また、割り下は暴力的なまでの調味の濃さであるため、どうにも喉が渇き脂がもたれる一皿です。

ところでさっきから何をタイムスタンプしているかというと、当店は提供速度があまりに早いんですよね。目の前にはホッカホカの肉がある一方で、最初の出汁巻きだの刺身だのには殆ど手をつけられていない。

もちろん「食事は味の薄いものから濃いものへ」という食事の黄金律を遵守したいのは山々ですが、目の前のメインディッシュが冷え冷えになっていくのは心苦しい。したがって、いきなり本番から始めるという風情もへったくれもない食べ方をせざるを得ないのです。
卵はエスプーマというかなんというか、繊細な泡状に仕立て上げられています。試みとしては面白いのですが、卵の粘り気や味わいが消え失せてしまっているので、私は普通のスタイルのほうが好き。
全ての料理が残っているというのに、トドメの赤だしまで出されてしまいました。もはやランチで4,500円のコース料理の風格はなく、場末の定食屋のような慌しい食わせ方です。

さすがにこれは酷いだろうということで、すき焼きの調理を一旦ストップしてもらい、まずは刺身や出汁巻きを片付けることを優先する。
しかしながら目の前の料理人はさっさとすき焼を始末してしまいたいらしく、調理を再開したくて再開したくてウズウズしており、「そろそろよろしいでしょうか?」とせっついて来る始末。俺たちそんなに食べるの遅いかなあと時計を見ると、お店に入ってから20分も経ってません。

お客様に最大限の美味しさと居心地の良いひとときを楽しんでもらおうという姿勢は全く感じられず、さっさと自分の作業を終わらせてしまいたい願望がミエミエ。とっととランチの客を追い返し、夜の仕込みに勤しみたい気持ちがあからさまです。
デザートは黒きなこのプリン(?)。中々に濃厚で密度の高い一品でした。ここまで所要時間45分。ちょうど1分100円の計算です。

あまりにオフビートなスピード感でした。当然に接待やデートには向かないお店です。一番安い冷麺や焼き魚をパパパと食べに来るのが最も納得感があるでしょう。せっかくの素敵な店構えなのに、もったいないなあ。


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