元祖串かつ だるま 新世界総本店

通天閣近くの賑やかな通りから一本入った路地に位置する「元祖串かつ だるま 新世界総本店」。言わずと知れた串かつの発祥の地であり、1929年創業の歴史ある串カツ専門店です。2階の窓から顔を覗かせる「会長人形」の存在がまあまあ不気味で、路地裏という薄暗い空間において上空から監視するようなこの人形の配置は、総本店の神話性を高める演出として極めて効果的と言えるでしょう。
私イチオシの串カツ屋「八重勝(やえかつ)」と異なり、多くの支店を展開する「だるま」グループですが、総本店はカウンター12席ほどの狭小店舗であり、ライブ感や香りの立ち方が他店舗とは一線を画します。週末は行列を覚悟して訪れましょう。
着席してすぐに飲み物を聞かれたので、脊髄反射で「ビール」と答えてしまいましたが、これが大失敗。サーバーのメンテナンスが上手くいっていないのか、本来あるべき麦の甘みとホップの清涼感は消え失せ、酸化による鋭い酸味とえぐみが舌を刺します。飲み物メニューをよく見ると瓶ビールの用意もあったので、2杯目からはずっと瓶モノを注文しました。
気を取り直して「どて焼き」。白味噌ベースのタレである店が多いですが、当店はブラウンがかっており味噌の風味は控えめ。串刺しスタイルではなく小鉢で提供されるのも珍しい。もちろん美味しいですが、いわゆる関西の「どて焼き」としては珍しく感じました。
串カツは衣が特長的ですね。きめ細かい微細なパン粉を用いており、口内を刺激しない滑らかな口当たりと、油切れの良さが印象的。外側は軽やかにサクッとしていますが、内側の層には少し厚みがありモチッとした粘り気のある食感が残されています。
閉口したのはソースとキャベツで、何と別料金で352円。もちろん蚊の食う程にも思いませんが、鮨屋でアガリが有料ぐらいの違和感がある。ちなみにソースそのものは程よく粘度があり甘みと酸味のバランスが良く、かなり好きなタイプの味覚でした。
揚げ油は植物油ではなく牛脂(ヘッド)をメインに使用しているようで、これにより、揚げ上がりに動物性のコクと甘い香りが加わります。牛脂独特の風味がありつつも、高温でカラッと揚げるため本数を重ねても食べ飽きません。
いろいろ食べましたが、タネとしては写真中央の「牡蠣」がいちばんでした。冬季限定のものであり、大ぶりでミルキーな牡蠣たギッチリ詰まっており、これで1本286円とは自炊するよりも安いかもしれません。
お腹いっぱい飲み食いしてお会計はひとりあたり5千円強。私は年季の入った「八重勝(やえかつ)」原理主義者であるため色々とケチをつけてしまいましたが、真っ白なハートでフラットに臨めば実にリーズナブルな食体験。何より「串カツ」という労働者階級のファストフードを観光資源へと昇華させ、かつ厳格な運営プロトコルを通じてブランド価値を維持していることは賞賛に値します。行列するので、ピークタイムを外して是非どうぞ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。