中国意境菜 白燕(バイエン)/稲荷町

台東区元浅草。上野と浅草という二大観光拠点の間隙に位置する「中国意境菜 白燕(バイエン)」。最寄駅は稲荷町で、出口をでてすぐ。「意境菜(いきょうさい)」といって料理の味だけでなく、見た目の美しさや香り、盛り付けの演出など五感全体で楽しむ中国料理のジャンルであり、食べログでは百名店に選出されています。
店内は シェフの調理風景を目の前で楽しめるカウンターが4席に、テーブル席が十数席に個室といった陣容(写真は食べログ公式ページより)。 内装は白を基調としつつ青い照明が印象的。

白岩勝也シェフは日本国内での修行に留まらず、中国本土の二大美食都市、北京と香港で研鑽を積んでおり、帰国後は広尾の人気店「JASMINE(ジャスミン)」で副料理長を務めていました。
酒は安く、アサヒスーパードライの中瓶が700円ほど。中国料理店としてはワインの品揃えが豊富であり、いずれも手頃なものばかりで好印象。もちろんポットで提供されるきちんとした中国茶の用意もあります。 
名刺代わりにスペシャリテのリンゴ飴。中身は茶葉の香りを纏わせた濃厚なフォアグラ。ねっとりとした旨みとスモーキーな薫香が口の中で溶け合い、なるほどワインを欲する味覚です。
前菜3種盛り合わせ。主役はシットリと低温調理された鶏肉に香り高い辣油と薬味が絡む「よだれ鶏」。その脇を固めるのは岩海苔を練り込んだ里芋のペーストと旬の瑞々しいカブ。これから始まるコースへの期待を一気に高めます。
大ぶりの水餃子。厚めの皮は生地から作っているそうで、中身より生地のほうが心に残る。タレは先程の「よだれ鶏」のものを流用しており、計算し尽くされた皮の食感が濃厚なタレをしっかりと受け止めます。
薬膳スープ。数種類の漢方食材をじっくりと煮出しながらも薬臭さは一切なし。豚肉は、ホロホロになるまで煮込まれ、その脂の甘みと旨みがスープ全体に厚みを加えています。複雑なスパイスの香りと優しい出汁の味わいが五臓六腑に染み入り、まさに滋味深い味わい。コースの中盤で胃腸を整えてくれます。
鯛を素揚げし、醤油ダレと発酵唐辛子の肉味噌を合わせます。鯛の皮目がパリッと香ばしく、肉味噌のパンチのあるコクと発酵由来の奥深い風味が重なり、噛むほどに味わいが増幅します。
岩手県の銘柄豚「岩中豚(いわちゅうぶた)」を店内で丁寧に干し肉に加工し、旨みを凝縮させました。熟成された豚肉の濃厚な風味がシャキシャキとした野菜の食感とよく合う。中華料理の真髄を感じさせるひと皿です。
〆のお食事にエゾアワビのおこわ。アワビの弾力ある食感と、ふっくらと蒸し上がったもち米のコントラストが心地よい。ただちょっと量が少ないかな。美味しいだけにもっと量を。
デザートは杏仁豆腐のエスプーマ仕立て。淡雪のように消える軽やかさがあり、濃厚な杏仁の風味を感じながらも決してしつこくはありません。お茶を用いたゼリーや「紅まどんな」の果肉も脇を固め、華やかで爽やかに締めくくります。
ジャスミンティーを楽しみごちそうさまでした。以上の料理が8,800円で、軽く飲んでお会計はひとりあたり1万円強といったところ。「意境菜」という独自の美学を現実的な価格帯で堪能できる良店でした。しかし、やはりどうしても気になるのが量の少なさ。ひとつひとつの料理は美味しいのですが、正直なところ腹五分目にも届きませんでした。ネット上の情報はランチの口コミばかりなので、次回はランチにお邪魔してみたいと思います。

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