祇園 川上(ぎおん かわかみ)/祇園(京都市)

1960年創業の「祇園 川上(ぎおん かわかみ)」。花見小路から一筋西の西花見小路に位置する築100年以上の町家を改装した店舗であり、歴史的な趣きを感じさせる世界観。ミシュランでは1ツ星を獲得しています。
お店は結構大きくて、10席のカウンターのほか、本館・別館に合計7つの個室が用意されており、30名近い宴会にも対応可能とのこと(写真は公式ウェブサイトより)。歴史ある高級店ですがゲストに緊張を強いることなく、アットホームでリラックスできる接客です。
お酒はそこまで高くなく、日本酒で1合2千円弱といったところでしょう(原則的に220ミリリットルでの提供)。お店の方に相談すれば、料理に合う飲み物をご提案して下さいます。
「コノワタの茶碗蒸し」で幕開け。滑らかで上品な出汁の効いた玉地にコノワタの凝縮された塩味と独特の風味が加わります。熱々の温度帯が珍味特有のクセを心地よい旨味へと変え、単なる茶碗蒸しでなく酒を呼ぶ逸品へと昇華されています。
アワビのお寿司。シャリは肝のソースと和えられることでリゾットのようなねっとりとした食感と濃厚なコクを纏っています。その上に鎮座するアワビは水のように柔らかく、噛みしめるたびに深海のような旨味が溢れ出します。和食の枠を超えたクリーミーな余韻が長く続き、冷酒はもちろん重めの白ワインとも合わせたくなるような力強い味わいです。
季節の移ろいを盆上に映したかのような華やかな八寸。中でも特筆すべきはアンキモ。濃厚でクリーミーなアンキモのペーストに刻んだ奈良漬けを混ぜ込むことで、奈良漬け特有の酒粕の香りとカリッとした食感が加わり、アンキモの脂っぽさを絶妙に中和させています。まさに酒泥棒と呼ぶにふさわしい味わい。手前の但馬牛は噛むほどに上質な脂の甘みが広がり、冷めてもなお柔らかく、肉本来の力強い旨味が繊細な京料理の中で確かな存在感を放っています。

続いてフグぶつ(写真撮り忘れ)。薄造りとは異なる筋肉質な弾力があり、そこにゼラチン質の皮のコリコリとした食感が重なります。味わいの核となるのは全体に絡められた白子のペーストで、そこへポン酢餡の爽やかな酸味が加わることで、濃厚でありながらも後味はキレ良く仕上がっています。
お造り。近海物を思わせる鯛は程よく角が取れ、滑らかな舌触りと共に上品な甘みが広がります。イカは甘味たっぷりで口の中でとろけるよう。寒ブリは冬の王様らしく脂の乗りが抜群で、醤油を弾くほどの濃厚さがありながら決して重たく感じさせない鮮度の良さがあります。ホッキ貝は特有のシコシコとした食感と共に、磯の香りと強い甘みが噛むほどに滲み出る。
お椀は京都の冬を象徴する白味噌仕立てですが、その濃度は特筆もの。まるで上質なコーンポタージュのようなクリーミーさと濃厚な甘みを湛えており、具材の淀大根は箸がすっと入るほど柔らかく煮含められ、大黒しめじの食感がリズムを生みます。主役のクエは、脂の乗ったゼラチン質が熱々の汁に溶け出し、汁のコクをさらに深めています。
サワラのかけじょうゆ焼き。ふっくらと焼き上げられたサワラは、身の中に水分と脂が閉じ込められており、箸を入れるとほろりと崩れます。香ばしい醤油の焦げた香りが食欲をそそり、淡白ながらも脂の乗ったサワラの旨味をシンプルに引き立てています。付け合わせのサツマイモにはブランデーがきいており、洋菓子のような芳醇で大人びた甘みに仕上がっています。
ブラウンマッシュルームのすり流し。意表を突くほどに濃厚な大地の香りが濃厚で、和風出汁ベースでありながらまるでフランス料理のよう。余計な具材を入れず、マッシュルームの滋味だけをストレートに味わう構成です。
蕪蒸し。すりおろされた蕪はふわふわの食感で、甘みとわずかな苦味が心地よい。その中には穴子や百合根、キクラゲに生麩が組み込まれており、宝探しのように多様な食感と味が隠れています。全体をまとめる餡の優しいとろみが、これらの具材を包み込み、口の中で一体化させます。
津居山のカニ。言わずと知れた松葉ガニの最高級ブランドのひとつです。繊維の一本一本がしっかりとしており、口に入れると瑞々しいジュースと共にカニ特有の上品かつ濃厚な甘みが溢れ出します。身の締まりと解け具合が絶妙だ。
〆のお食事は卵かけごはん。シンプルながら贅沢を感じさせるセットであり、炊き立ての艶やかな白米ひと粒ひと粒に、濃厚な卵液が絡みつきます。お椀もお漬物も上質で、和食っていいなと再認識させてくれる締めくくりです。
お腹に余裕があれば、とのことでイクラごはんをお出し頂けました。宝石のように輝くイクラがたっぷりと乗せられたご飯は見た目にも華やか。口の中でプチッと弾けると同時に、濃厚な魚卵の旨味と漬け地の風味が広がります。そこに合わせられた海苔の佃煮が秀逸で、磯の香りを凝縮したような黒いペーストが、イクラの塩気とは異なるベクトルでご飯のお供としての深みを加えています。
水菓子に柿、いちご、紅まどんな。季節の果実たちが食事の余韻を綺麗に整えてくれました。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり4万円ほど。中々のお値段ですが、祇園のど真ん中で旬の高級食材をしっかり食べてこの支払金額であれば妥当でしょう。ランチは1万円を切るお弁当やコースも用意されているようなので、次回は季節を変えて、そちらを試してみたいと思います。

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