2009年に新宿で旗揚げし、2015年に銀座に移転し10年の歴史を育んだ「レンゲ エキュリオシティ(Renge equriosity)」。「ヌーベルシノワ(新しい中華)」あるいは「イノベーティブ・チャイニーズ」の旗手として評判を集め、食べログではシルバーメダルならびに百名店に選出されています。
店内はバーやサロンを彷彿とさせるモダンな内装。赤や金、龍のモチーフといった、いわゆる中華料理店らしさは排除されています(写真は公式ウェブサイトより)。最大の特徴は客席と一体化したフルオープンキッチン。ステンレスの厨房と木のカウンターの対比が美しく、調理の熱気や香りをダイレクトに感じるライブ感が魅力です。
西岡英俊シェフは新宿御苑「シェフス(CHEF'S)」で日本の上海料理界の重鎮であるムッシュ王恵仁に師事したのち2009年に独立したそうです。
アルコールにつき、ビールは千円を超え、グラスワインは2千円からと、この手のレストランらしい値付けです。あまりガバガバ飲む気が起きないようなガバナンスがきいている。まあ、銀座ですし、こんなものと言えばこんなものでしょう。
飲み物と共にスっと先付が出てきました。左奥は毛蟹、右手前は冬牛蒡のひと口春巻きでで、揚げたてでパリッとはじける極薄の皮を噛み締めます。熱々の毛蟹の甘みと土の香りを纏った力強い牛蒡の風味の対比が心地よく、シャンパーニュが進む逸品です。
前菜盛り合わせ。冷菜と温菜が織りなす味覚のパレットのようなひと皿で、とりわけクワイが美味。独特の苦味と食感を持つクワイに、中華スパイスの代表格である五香粉をまぶして揚げることで、スナック感覚の中にエキゾチックな風味を閉じ込めています。これまでクワイと言えばオカンのおせち料理ぐらいでしか食べた経験がなく、オカンには申し訳ないがその3倍は旨かった。
薬膳スープ。烏骨鶏やスッポンといった滋養強壮に良い食材と、金華ハムや干し貝柱の乾物から抽出された旨味が何層にも重なり合っており、身体に染み渡るような透明感があります。薬膳といっても漢方特有の癖はなく、飲むほどに身体が芯から温まり、胃腸が整うような、優しくも力強い味わいです。丼いっぱいで飲みたいくらいだ。
伊勢海老と雲丹の麻婆豆腐。通常の挽肉の代わりに、伊勢海老の弾力ある身と濃厚な味噌、そして雲丹のクリーミーな甘みを用いており、これは果たして麻婆豆腐と呼んでよいものかと疑うほどチートな旨さです。辛味は控えめで、辛いものを食べるための料理ではなく、スパイスを通じて素材の良さを引き立てる料理とも言えます。
ハタの香り蒸し。広東料理の真髄である「清蒸(チンジョン)」で、魚が持つゼラチン質と白身の弾力を上手く引き出しています。上からかけられた醤油ベースのタレが実に香ばしく、白髪ネギや生姜のかおりと共に食欲を刺激します。ある意味では日本料理に近い風味があり、日本人の琴線に触れる味わいです。
メインの肉料理は黒毛和牛。しっかりと脂がのっているのですが、山椒のフレッシュな痺れと柑橘系の爽やかな香りが効いているため、和牛の脂を決して重く感じさせません。肉の濃厚な旨味を山椒がキリッと引き締め、余韻には爽快感が残る、コースの終盤でもペロリと食べられてしまう洗練された肉料理です。この軽やかさの実現はフランス料理界隈も見習うべき調理でしょう。
コースの締めくくりに大山地鶏そば。 具材を削ぎ落とし麺とスープだけで勝負するスタイルです。スープは雑味のないクリアな味わいで、鶏のピュアな旨味と甘みが凝縮されており、塩味は角がなくまろやか。 細めのストレート麺がその繊細なスープをたっぷりと持ち上げ、するたびに鶏の香りが広がります。やはり日本料理のような引き算の美学を感じる一杯です。
デザートは洋菓子のような外観。泡(エスプーマ?)は和三盆を用いており、口に入れた瞬間にシュワっと消え、上品で優しい砂糖の甘みだけを残します。底には「紅まどんな」とそのゼリーが敷かれており、柑橘の爽やかな酸味と和三盆の繊細な甘さが旨く溶け合います。
ライチの風味をきかせたお茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のランチコースが1.5万円で、酒やらお茶やらサービス料を含めてお会計はひとりあたり2万円といったところ。銀座という立地と料理の質を考えればリーズナブルな価格設定であり、次回はディナーを試してみたいなという期待を抱かせてくれました。雰囲気もサービスもバッチリで、接待に使うのも良さそう。次回はおぢを連れてお邪魔したいと思います。
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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
- チャイナハウス龍口酒家(ロンコウチュウチャ)/幡ケ谷 ←東京の10,000円以下の中華だとダントツ好き
- 中華銘菜?陽(センヨウ)/東高円寺 ←率直に美味しくアラカルト可なのが嬉しい
- サエキ飯店/目黒 ←切れ味抜群
- ShinoiS(シノワ)/白金台 ←めちゃ美味しいんだけれど高いんだよなあ
- 4000 Chinese Restaurant/西麻布 ←王道中の王道の中華料理ですげえ旨い
- センス(Sense)/日本橋 ←あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境
- 南方中華料理 南三(みなみ)/四ツ谷 ←素晴らしい、何も言うことは無い
- 蓮香(レンシャン)/白金高輪 ←日本人が一般に想像する中華料理のイメージを打破する多彩な魅力
- 中華バル 池湖(いけこ)/渋谷 ←度を越した費用対効果
- 紫玉蘭/麻布十番 ←税込800円は神のなせる業
- VELROSIER (ベルロオジエ)/河原町(京都) ←フランス料理みたい
- 開化亭(かいかてい)/岐阜駅 ←過剰なものは何も無く、足りないものも何も無い
- Mott 32(卅二公館)/中環(香港) ←この中華料理はちょっと東京には無い
- Lung King Heen(龍景軒)/中環(香港) ←総合力という意味では香港における飲茶で私的ナンバーワン











