Tango Pub Bar Restaurant(タンゴ パブ バー レストラン)/ヴィエンチャン(ラオス)

ヴィエンチャンの食文化を語る上で、フランスによる保護国時代のあゆみは無視できない要素ですが、「Tango Pub Bar Restaurant(タンゴ パブ バー レストラン)」ようなビストロ形式のレストランも、その文化的遺産の正当な継承者として機能しています。オーナーはフランス人で、ヴィエンチャンの中心地・ナイトマーケットすぐ近くに位置します。
「Pub Bar Restaurant」とありますが、実態はブラッセリーのような雰囲気。木材を多用した内装と暖色系の照明によって構成されたダイニングに加え、欧米のカフェ文化を踏襲したテラス席の用意もあります。欧米人の殆どはテラス席に座っていましたが、私は蚊に刺されるのを避けて店内奥に引きこもりました。
アルコールにつき、ビールなどは周辺相場よりもやや高めであるものの、それでも1杯400-500円程度なので大勢に影響はありません。他方、ワインなどは地代と人件費が影響してか、ド輸入品であるにも関わらずパリや東京よりも控えめな価格設定です。
シャルキュトリー盛り合わせ。山ほど盛り込まれて3千円を切るのだから恐れ入る。塩気が効いた生ハム、スパイスの香るサラミ、肉の旨味が詰まったパテなど、ひと口ごとに異なる食感と味わいを楽しめます。4人ぐらいで食べてちょうどよいボリューム感です。
なお、シャルキュトリの塩気はかなり強めであり、ワインやデフォで用意されるパンと合わせて楽しむと良いでしょう。とは言えパンのレベルはパっとせず、ルアンパバーンの「THE APSARA RIVE DROITE(ジ アプサラ リヴ ドロワト)」で食べたものは本当にレベルが高かった。
3種のヤギチーズのサラダ。ヤギの乳から作られるシェーブルチーズを主役に、と思いきやベーコンの量がとんでもない。この料理はもちろん後続の料理もボリューム満点なので、ちょっと注文し過ぎたかもしれません。なお、シェーブルは酸味のある爽やかなコクと独特の香りを保持しており、フランスから輸入した上できちんと管理していることが伺えます。
鴨の胸肉はマンゴー蜂蜜ソースで楽しみます。鴨は程よく脂が乗り、濃厚なコクがあるのが特長的。そのしっかりとした脂の旨味を、マンゴーのトロピカルな酸味と蜂蜜のまろやかな甘みが包み込む甘じょっぱいハーモニーで楽しみます。

添えられたラタトゥイユも山盛り。水をほとんど使わず、野菜自身が持つ水分と旨味だけで煮詰められているため、トマトの凝縮された酸味と野菜の自然な甘みが濃厚に絡み合います。ラタトゥイユとパンだけで立派なランチになりそうだ。
こちらはバヴェットステーキ。牛のハラミやカイノミに近い、横隔膜周辺のお肉です。日本の霜降り肉のような脂の甘さではなく、赤身特有の力強い肉の味をダイレクトに楽しむスタイルであり、噛めば噛むほどに繊維の間から濃厚な旨味と肉汁が溢れ出します。適度な弾力があり、「肉を喰っている」という野性的な満足感が格別。

付け合わせはドフィノワ 。フランス南東部ドフィネ地方の郷土料理で、平たく言えば「ジャガイモのクリームグラタン」でしょうか。表面の焦げたクリームの香ばしさと、中のホクホクとしたジャガイモの優しい甘み、そして食欲をそそるニンニクのアクセントは、シンプルながらも存在感抜群の旨さです。
これだけ満喫して、支払いは一人4〜5千円ほど。内陸国とは思えない食材の質と、フランス人オーナーによる本場の味付け、そしてラオス価格。これらが見事に融合した、非常に使い勝手の良いお店です。ヴィエンチャン滞在中、現地の味に少し疲れた時や、ガツンと肉とワインを欲した夜に、間違いのない選択肢となるでしょう。

食べログ グルメブログランキング
人気の記事
「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。