京都祇園 天ぷら八坂圓堂(やさかえんどう)

1885年にお茶屋として創業し、1960年に八坂通に移転したのち、1991年に天ぷら専門店としてリブランドした「八坂圓堂(やさかえんどう)」。祇園を中心に(京都の)岡崎や大阪・東京にまで展開する一大天ぷらグループへと昇り詰めました。
店内は厨房を取り囲む椅子カウンター席に座敷カウンター、個室にお茶室と様々なタイプのお席が用意されています。内外装共にザ・日本な誂えであり、インバウンド客は胸熱でしょう。スタッフは皆、簡単な英語を操り外国人対応はお手の物(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
アルコールはそれほど高くなく、日本酒も地元のものから国民的ブランド酒まで幅広く取り扱っています。ビールの杯が進めば着物を着た仲居さんたちが瞬で注ぎに来るので、三菱商事の社員と飲んでいる気分です。
先付に湯葉豆腐。波打つ感じの豆腐であり豆の味が濃い。より高いコースであればお造りなどが付くのですが、我々は早速天ぷらに入ります。
まずは名物のトウモロコシの天ぷら。甘味が強く、お塩などを付けなくても充分に楽しむことができます。
エビパン。パンに海老のすり身を塗り付けて揚げたものでしょうか。企画モノのタネですが素直に美味しい。
海老はダブルでやって来ます。悪くないのですが、極上品質でもなくサイズ感も中くらいで、あまり印象に残らず。もちろん値段相応と言えば値段相応です。
エンドウ豆のコロッケ。こちらも企画モノであり、店名に掛けているのかもしれません。和歌っぽく言えば掛詞ですし、今風に言うとオヤジギャグです。
シイタケに海老のすり身を詰め込みました。シイタケの旨味とエビの旨味が調和した上でパンチのある味覚です。
タイを紫蘇で包んで頂きます。美味しいのですが繊細なタネでもあり、シイタケ海老の次に食べるには線が細く感じます。
京かんざし。金時人参を早採りした京野菜だそうで、舞妓さんの付ける簪に似ているところからそう呼ばれるそうです。
粟麩(あわふ)。粟の実を蒸しあげて練りこんだ食べ物ですが、天ぷらとして食べるのは初めてです。思いのほかミッチリと密度が高く、食べ応えのあるひと品です。
カボチャ。このカボチャは美味しいですねえ。サツマイモのように甘くズッシリとしたアタック。一般的な薄切りスタイルとは異なりズッシリと食べ応えがあります。
琵琶湖のモロコ。琵琶湖周辺や京都辺りで取り扱われる高級魚です。ふんわりとした食感で骨ごと食べることができます。さてこれを外国人客に対して英語でどう説明するのかと耳をそばだてると「レイク・フィッシュ」と表現していました。その通りだ。
アナゴは淡泊な味わいで、それでいて一本でなくミニミニの切り身なので拍子抜け。価格帯を考えると仕方がありませんが、つい先日に丸々一本を食べて来たばかりなので余計に悪目立ちしました。
お口直しにサラダ、、、なのですが色々と妙に細切りで食べ応えが無く、それほどお口は直されません。あまり仰々しくひと品として出さない方が良いと思いました。
〆のお食事に天丼をお願いしたのですが、妙にイモが多く炭水化物オン炭水化物丼です。タレの味が濃いので何とか食べ切ることができましたが、ごはんの量は小サイズでお願いすると良いかもしれません。
グレープフルーツのシャーベットで今度こそお口直し。ごちそうさまでした。

ランチの一番安いコース7,700円に軽く飲んでサービス料が10%加算されてひとりあたり1万円弱といったところ。ド観光地で由緒正しき数寄屋造りを楽しみ、それなりの天ぷらを食べてこの支払金額は悪くないディールです。

何より接客が素晴らしいですね。一見の観光客だからといって雑な扱いは全くなく、丁寧で真心のこもったおもてなしです。美食の追求が目的とは少し違うかもしれませんが、きちんとした会食や外国人ゲストを案内する際に活躍しそうなお店でした。

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てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。