三代目だるま鮨/目黒

2019年秋にオープンしたJR目黒駅前のビル2階にある鮨屋。店内は20席超と鮨屋としては広いほう。ギンギラギンに照明が輝いておりカジュアルな雰囲気。乳幼児もOKで、テーブル席では子供がギャンギャンと大泣きしており私も悲しい気分になりました。
店内はどことなく雑然としており清潔感に乏しい。シャリもビニール袋にぶち込まれていたりと風情が感じられません。大将はイケメンで雰囲気がある。タメ語で話しかけてくるのが気になりましたが我々だけというわけではなく、どの客に対してもそうだったので、そういう芸風なのでしょう。

話は逸れますが、ヨーロッパ系のレストランはシェフやサービスが客にタメ口をきくということはまずないのですが、鮨屋はかなりの確率でタメ語をきいてきます。フランスの宮廷料理からの派生と、ファストフードからの発展の違いなのでしょうか。
いきなりギョクから始まります。左は蕎麦屋の玉子、右は鮨屋の玉子とのことで、味はまあ中くらい。ちょっと意図がわからず面食らいました。

「いやあ、コロナ、たまんないっすよ。4月以降の注文書を貰えてなくて、まさに薄氷を踏む思いです」シャンパーニュをグイグイ傾けながら溜息をつく彼。ずいぶんと分厚い氷である。
「シャリは赤酢と白酢を使い分けているので、まずは食べ比べで」とのことですが、酸味や塩味に乏しくパンチが感じられません。そこまでシャリを推すのであれば、銀座「とかみ」「すし匠」系ほどのアタックが欲しいところ。
前菜盛り合わせ。ウニの量に目を惹かれるのですが、質はそれなりであり量でカバーしているきらいがあります。春野菜(?)の小鉢は苦味がきいており美味しかった。

「ジム経営とか可哀想ですよね。問答無用で閉鎖しろって空気なのに、家賃は出ていく一方で。でも、パーソナルトレーナーたちは大忙しらしいですよ。ジムに人が集まるとアレだから、自宅に出向いて筋トレ指導するんですって」
早速にぎりが登場。カツオなのですが、まあ、普通のカツオです。

「おれ、またクビになるのかなあ。。。」外資系企業に勤める彼は、リーマンショック時に解雇の憂き目にあっているのです。
サラダはランチセットのオマケサラダといった風情であり、やはり意図がわからず。とはセメント色がかったドレッシングは割に好き。
のどぐろ。コンペイトウのように大きな結晶の塩がたっぷり振りかけられており腰が引けてしまいました。

「まだ社会人2年目だってのにクビはキツかったなあ。いきなり外人のすげえ偉い上司に呼ばれて、『君が属するチームはredundant』とか言われたんです。redundantの意味がその時はよくわかんなくってヘラヘラしてたんですけど、自席に戻って調べたら『余剰なんですもん。血の気が引きましたよ」
海老のスープがやってきました。悪くはないのですが、フレンチ生まれアメリケーヌ育ちの私には風味が薄く感じてしまう。

「まあ、オレだけじゃなくてチームごと全部クビだったから、自分が悪いわけじゃないって納得できたのが救いだったけど。退職金は1,000万円もらえたし」
マダイは中々のお味ですが、やはり結晶づいた塩は好みが別れるところでしょう。そんなに塩味をきかせたいならシャリを強くすれば良いのに。
穴子の茶碗蒸しとのことですが、穴子の量はごくわずか。

い、いっせんまんえんだと?社会人2年目のペーペーが?「厳密には退職金が800万円に、有給の買い取りが200万円だったかな?いきなりクビになって暇だったから、毎日合コンしてすぐに使い切っちゃいましたたけど。まあ、それで今のカミさんに出遭えたんだから結果オーライ」
キンメダイは美味しいのですが、ご近所の「回し寿司 活 美登利」と大きな違いがあるかと問われれば頭を抱えてしまう。

人間万事塞翁が馬。人生は長い。コロナやら何やら色々あるでしょう。極めて大きな不幸を経験したもののみ、極めて大きな幸福を感じることができるものなのだ。
ズワイガニがドカンと半分やってくるのですが、セルフで殻を外していかねばならず、とにかく面倒くさい。六本木「すし通」のカニのにぎりみたいにして欲しい。
サバだったっけな?プレートから少し垂らしてのプレゼンテーションなのですが、タレ(?)がボタボタとカウンターに落ちてきているのが気になりました。
サワラに
シマアジ。それぞれそれなりに美味しいのですが、やはりご近所の「回し寿司 活 美登利」と大きな違いはありません。
アラ煮は頭の部分がマルゴット登場であり迫力はあるのですが、やはりカニと同様に面倒くさいの極みである。
そら豆。「おにまる」のお通しで良く出てくるやつや。
ホタテはかなりのビッグサイズであり食べ応えがあります。塩の結晶についても、これぐらいのタネの大きさであればバランス良く感じることができました。
イカはイカスミの塩(?)と用いるなど工夫が感じられるのですが、タネそのものの味わいは中くらいです。
天使海老にカラスミを振りかけます。意図がわからず、また、カラスミの質も良くないため旨味よりも臭味が目立ちました。せっかくの美人が厚化粧で台無しである。
トロもそれなりに美味しいのですが、あくまで中級といった品質です。
コハダは妙に水っぽくダラついた舌触りでありあまり好きではありません。
〆は手巻き。シャリにブツ切りの刺身を乗せ、仕上げにイクラを流し込むという斬新な巻物です。迫力は満点なのですが塩気や旨味に乏しい。
赤出汁は特長のない一般的な仕様でした。
わらび餅で〆てごちそうさまでした。

少量多皿多量ではありますが枯れ木も山の賑わい、悪くはないが良くもないの連発といった印象です。飲んだ量はほんの少しなのですがお会計はひとりあたり1万円を余裕で超えました。その割に実にカジュアルな雰囲気で子供が騒いでいたりとヴィジョンが見えないお店です。質は回転寿司以上すしざんまい以下。しかしまあまあ高い。でも量は多い。

飲み放題プランもあるようなので、量で勝負したい飲み会などにどうぞ。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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