元永(もとなが)/博多

博多の赤坂駅から徒歩15分。スタイリッシュな中華料理屋のような字体を掲げる「元永(もとなが)」。食べログは3.81(2020年3月)でトップ5000入りしています。
ご夫婦で営むカウンター6席のみの小さなお店。バーやスナックのような雰囲気であり、手を伸ばせば届く距離に大将がいるため、自然と会話が生まれる雰囲気の良いお店です。
1番手にトラフグの白子。バリっと炙って餡をかけ、ネギやスパイスを散らします。白子の美味しさは当然として、少し濃いめの調味や種々の香辛料のピリっとした風味が楽しい。
塩じめのサバ。シメサバはその酸味に好みが分かれるところですが、こちらは塩を主軸に置き、酸味に惑わされることなく、サバの旨味がギュギュギュと凝縮しております。日本酒によく合う。
赤貝にぬたのソースを並べ、ヒゲのついたピーナッツやグルグルのネギなどを彩り良く並べました。なるほど「新和食」を標榜するだけあって、欧米系のプレゼンテーションに足し算の味わいが感じられました。
他方、タケノコはごくごくシンプルに素材の味をそのまま楽しみます。木の芽の爽やかな風味が心地よいアクセント。
牡蠣にも豪快に味を重ねていきます。これはもう、六本木一丁目「エディション コウジシモムラ」あたりで出てきてもおかしくないテイストですね。個人的には牡蠣が苦手な人にお出ししていたホタテのほうも気になった。
蟹しんじょうと大根のおでん。こんな豪華なおでんがあるか?見た目だけでなくビンビンに蟹の風味が立っており、欠食児童のように貪りついてしまいました。
トラフグを湯引きして、やはり味を重ねます。そうそう、このあたりになって気づいてきたのですが、ポン酢系のタレにネギ+ゴマという組み合わせが続いている。どうせ重ねるのであればもっとバラエティ豊かな調味にしても良いかもしれません。
子持ちカレイと空豆に、ちょいとシャレをきかせてカレー風味に。これは美味しいですねえ。カレイのツブツブな食感に、郷愁を誘う甘めのカレーのスパイス。緑の強い空豆も美味しい。
メインはフィレ肉。この値段で(後述)このクオリティの肉が出ることに驚きであり、そのシンプルながら力強い味わいに二度驚きです。トッピングはネギだけでなく、ガリやラッキョウも忍ばせており面白かった。
お食事はタケノコごはん。ふたりで1合以上のボリュームであり、食べきれない分はオニギリにして持ち帰りです。
足し算の和食から一転して、〆は素朴で優しい味わい。これまでの料理、美味しかったなと余韻を楽しませてくれる炭水化物です。
味噌汁はエビの風味が強く、和風のアメリケーヌソースとも言うべき味わい。
デザートは和三盆と抹茶のムース(?)に地元のあまおう。〆のゴハンに続いて素朴でほっとする味わいでした。

さてお会計。なんと、これだけ食べて1万円ポッキリなんですよ信じられますか?もちろん酒と税金は除いての価格ですが、同じ料理を東京で食べれば2~3万円は下らない価値を感じました。ここでの食体験に慣れた人が東京に来ると怒り出すに違いない。驚愕の費用対効果の和食店でした。


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