うぶか/四ツ谷

好きな食べ物は何かと問われると脊髄反射で「海老」と答える私。当然に甲殻類の名店である「うぶか」に行くべきとの助言を数多頂戴しており、ようやくお邪魔することができました。
荒木町の14席のみの小さなお店(写真は公式ウェブサイトより)。カジュアルな雰囲気であり少しキレイな居酒屋といった仕様。その雰囲気に釣られてか、ゲラゲラと手を叩きながら大騒ぎするグループ客がいてテンサゲです。
生ビールは白穂乃香。900円とやや高めではありますが、ホテルのラウンジで飲むそれと同様に丁寧に注がれたものであり完璧な味わいでした。

加藤邦彦シェフは甲殻類が好きすぎて「かに道楽」に入社し、京都の料亭などで研鑽を重ねた後に当店をオープン。
先付にすりながし。半液状の新玉ねぎの奥底にはワタリガニが山ほど詰まっています。タマネギの焦げたような香ばしい香りにカニの旨味がベストマッチ。直線的に美味しい一皿でした。
縞海老、湯葉、ウニ。見た目通りの美味しさです。エビとウニのクオリティは期待通りだったのですが、湯葉の旨さが想定外。
熟成した厚切りの鯛に車海老。これは鯛がチョベリグですねえ。じっとりとセクシーな味わいの肉をムシャムシャと特大サイズで食べる幸せ。当店はエビカニはもちろんのこと、サブの食材にも手抜きは一切ありません。
日本酒に入ります。いくつかの銘柄がグラスで1,000円前後、徳利で2千円前後という価格設定は、まあ、こんなもんでしょうか。
お椀はタラバガニ。であり、ピンポン玉サイズのカニ肉が2つほど入っています。それよりも山菜の存在感が目立ちました。滋味あふれる野性的な味わいに、木の芽の清涼感が鳴り響く。
こちらは栗蟹。美味しいのですが、全般的に味覚の方向性が同じであるため飽きが来ました。もちろんそういうコンセプトのコースであるためお店には一切の責任はなく、そういうチョイスをした私のせいです。
こちらは毛ガニ。たっぷりの味噌と共に頂くのですが、やはり暫くカニはいいやという気分になってしまいます。それよりもオーガニックのカブに心を惹かれてしまう。
スペシャリテの「車海老味噌フライ」。特大の車海老にたっぷりの味噌を詰め一気に揚げちゃいます。これは、もう、問答無用で美味しいですね。美味しくないわけがない。実山椒のタルタルも心憎い演出でした。
お食事にはズワイガニとアスパラの炊き込みご飯。やっぱりカニって絵になるなあ。
カニめしについては予想通りの美味しさなのですが、アスパラの瑞々しさに悶絶。加えてお味噌汁の芯のある味わいにも心を奪われる。ごはんは1杯おかわりして、残りはお持ち帰りさせて頂きました。
甘味は抹茶豆腐に和三盆の黒蜜を。シンプルですが飽きの来ない味わいであり、カニの旨味に食べ疲れた味蕾にとってはちょうど良かったです。

お会計はひとりあたり1.5万円ほど。まあ、こんなもんでしょうか。予約が取れない取れないと大騒ぎな割には、サスクワッチ伝説の種明かしを見たような、まあ、こんなもんかという感想です。
料理の構成からして宿命的かもしれませんが、ストーリー性や意外性を見出すことが難しいお店であり、そういう意味では神田「七條(シチジョウ)」のエビフライを10人前食べたほうが記憶に残るかもしれません。

客層もたまたま良くなかったのかなあ。店員は特に注意するでも無かったので、そういう意味では仕事仲間でちょっと豪華な打ち上げとして利用するのがちょうど良いのかもしれません。他方、シェフの料理に係るセンスはとても良く感じたので、アラカルトで食べたいものだけを注文できたり、甲殻類を一切出さない別業態などがあれば、また改めてお邪魔してみたいなと思いました。


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