AZUR et MASA UEKI(アズール エ マサ ウエキ)/西麻布

「Jetsetting fashinista」ナパヴァレーベストワイナリーで1位に選出された「AZUR WINES(アズール ワインズ)」と、植木将仁シェフのコラボ店。西麻布の交差点から青山方面に登った、「豚組」のすぐ近くに位置します。
路面店であり、ウェイティングスペースからダイニング、個室まで用意されており、まさにグランメゾンといった風格。それでいて木を多用した暖かみのある内装は居心地が良く、暖炉の火が気分を和らげてくれます。緊張させないグランメゾン。
ワインはペアリングでお願いしました。お料理は1.5万円のペアリングは1万円。税サを入れてトータル3万円と、この手のレストランとしては値付けが控えめ。そのあたり資本注入しているオーナー陣が頑張ってくれているのかもしれません。
真っ白なクロスに小石を並べ、5種のアミューズを並べます。なのですが、その動作が緩慢で時間がかかり、発音が悪く料理の説明が聞き取り辛かったので、結果、味も良くわかりませんでした。このあたりはもっと普通のプレゼンテーションでいいと思います。
さっそくスペシャリテの「甘美なる憂愁」。キャラメリゼしたフォアグラ
海老、パイナップル。合わせるソースはチョコレートです。それぞれの素材の質は極めて高く、思いのほかチョコレートにも合います。ただし、クロスの上に紙を敷いて食べる演出の意図はよくわかりませんでした。
合わせるワインはAZUR WINESのロゼ。南仏風のクイクイいけるタイプであり夏休みを思い出させる味わい。ところで当店は当該ワイナリーとのコラボ店のはずですが、出てきたワインはこれ1本のみと実に割り切りが良い。AZURのみで構成するわけではないのでご注意を。
稚鮎と蓼。ソースにはホワイトアスパラガスに種々のスパイス。やや和食に寄せた皿であり、日本人ならではの料理でしょう。稚鮎の苦味がハッキリと立ち、スパイスの風味がそれに寄り添います。
合わせる酒はメロンの香りが漂う日本酒。このペアリングは抜群に素晴らしいですね。料理の苦味に青系の香りが付与され、まさに初夏といった風味が口の中に広がります。
キノコのスープ。恐らくキノコと塩程度の調味でしょうが、大地の味わいが五臓六腑にジワジワと染み渡り、ちょうど良い箸休めです。
パンはホエーを用いた特別誂えとのことですが、これは普通のパンのほうが私好み。あともうちょっと量を食べたい。
イシダイに生海苔。イシダイのバリっとした表面に清澄な身質のコントラストがグッド。生海苔の風味も日本人であれば誰もが美味しく感じる仕組みでしょう。
ところで私は当店のソムリエの芸風がとても好きです。組み合わせるプロセスが実に科学的であり、なぜこうしたのかの説明を明快にこなす理論派です。話も簡潔で長ったらしくないのもすごくいい。
山菜をシンプルに。やはり苦味の強い大人の味ですが、
このソーヴィニョン・ブランが驚くほどマッチします。こんなに迫力のあるソーヴィニョン・ブランは中々お目にかかることはないでしょう。
メインはエゾジカ。均一に優しく火が入れられており、嫌な硬さはなくシットリと咀嚼することができます。野性味には溢れているが、臭味は一切ない。行者ニンニクのソースもグッド。
合わせるワインはエゾジカの良さを煽り欠点を補完する名脇役。
〆としてタイラガイのリゾットが出てきました。タイラガイは食感がフニャフニャなことが多くそれほど興味がない食材なのですが、当店のそれは別格。どういうわけかギュっとした噛み応えがあり、味覚にも凝縮した旨味が感じられました。
〆のお食事にもワインが付帯します。総量で考えれば結構な量。これだけ飲んでペアリング1万円というのはかなりお得。
デザート1皿目は豆苗にメロンのスープ(?)。デザートとして豆苗を食べるのは生まれて初めてです。
先のソムリエはワインだけでなく食材に係る説明も論理的であり、説明が上手くハキハキと喋るヲタクといった風情です。
カリフラワーを主軸においたクリームに、苺と桜、そして驚きのしば漬け。豆苗に引き続き、しば漬けをデザートとして食べるのは初めてですが、これが実によく合う。ただしパンに始まりひねりすぎるきらいがあるので、一度このパティシエの何でもないヴィエノワズリやケークを食べてみたい。
ラスト1杯はシュールなエチケットのロゼ。最初から最後まで知っているワインはほとんどなく、いずれも振り切った特徴をもちながらも料理にはきちんとマッチした素晴らしいペアリングでした。
小菓子もきちんと出ます。パート・ド・フリュイにマカロン、少しのショコラ。
自家菜園の手摘みハーブを用いたハーブティでごちそうさまでした。

バランスの良いお店でした。しっかりとした内外装でありながら決して気負う雰囲気ではなく、サービス陣の対応も親しみ易い。チームワークが良く、気持ちよく働けている様は見ていて心地よいです。

料理につき、やや演出が過剰に感じましたが、おそらくこれはシェフというよりはオーナーの意向のような気がします。もちろん私はクラシックを好むのでそう感じただけであり、トレンドを考えれば世の中のニーズにマッチしたストーリー構成でしょう。

ワイン選びの素晴らしさについては既に述べました。立地や風格を考えればこれで総額3万円はありよりのありです。


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