ボガマリ・クチーナ・マリナーラ(Bogamari Cucina Marinara)/北参道

私のことがちょっとだけ好きな、発言がモデル風の女の子との初デート。そう、例の、それぞれと個別にデートし、改めて3人で集まり私のビヘイビアに対する振り返り作業を行うというエモい企画です。
「本当に一番好きな食のジャンルはお鮨だけど、初回デートから『お鮨行きたい』とは言い出しづらいから、『魚介類が好き』って答えるようにしてる」との意を100%汲み取り、魚介類専門のイタリアンレストランをチョイス。
彼女は泡、私は白穂乃香で乾杯。ちなみに魚介類専門のイタリアンレストランと記載しましたが、これは本当にそうであり、肉類は一切置いておりません。生ハムすら無い。「素敵なお店。確かに魚介類が好きとは言ったけど、ここまでヒネって突き抜けてくるとは思わなかったわ」
パンやグリッシーニたち。オマケの川エビの素揚げが素朴で美味しく、ビールにもピッタリ。みんなスナック菓子なんか食べるのはもうやめて、間食するならこういう素材そのままのものにすればいいのに。
突然大きな紙袋から包みを取り出す彼女。「遅れてゴメンね、これ、お誕生日プレゼント!」ちょっと待て、私の誕生日は11月で、今は7月であり、既に8ヶ月が経っている。次の誕生日のほうが近いくらいです。「ずっとお祝いしたいなと思ってたんだけど、中々タイミングが無くて。。。いつもありがとね、感謝してる」
タイミング良く(?)店員さんが我々をショウケースへと促す。日本各地の漁港から直送される色鮮やかな素材に海産物に囲まれ、宝石箱の中にいるような気分になります。そう、当店にはお決まりのメニューは無く、行きつけの食堂で調理してもらうように、お好みの素材をお好みの調理法でフルオーダーできるのです。

しかしこれが難しい。スタッフの説明が割に雑で、イメージが全然沸かないのです。ワイン業界には体系だった用語の使い方があり、ソムリエの説明を聞けば大方どのようなワインかは推察できるのですが、当店の魚介類の説明は、素材名を述べ「個人的に僕は好きです」程度であり、客観的に物事を判断するのが極めて難しい。男が格好つけ辛いシステム。広尾のアッピアの難易度をさらに高くしたようなお店です。付き合いが長い親密な関係で訪れないと、痛い目を見るかもしれません。「それって、あたしたちみたいな関係ってこと?」私の肩にアゴを乗せ、金目鯛を見つめる彼女。
素人でも指定できる調理法と言えばカルパッチョ。11時から時計回りに黒ムツ、金目鯛、真アジ、スズキ、ホッケ、アイナメ。中央の剣先イカとタコの鮮度が抜群に良く、最初の一口として最高の一品でした。ほっけを生で食べるのは初めての試みで、言われなければホッケとは気づかない味覚で面白い。また、黒ムツと金目鯛に極上の脂が満ちており、特に記憶に残りました。
岩牡蠣につき、連れが指定した調理法はパン粉焼き。実に玄人筋なオーダーである。

ところで彼女の誕生日が程近く、僕からも是非お祝いさせて欲しいと申し出る。「最近割とヒマしてて、誕生日当日も空いてるけど、ちょっと待って。まだ可能性は無くは無い」歯切れの悪い回答に身を乗り出す。「現在進行中の案件が2つあって、ひとつは告白され済み、もうひとつはマイペースで進み方が掴めない。ただ、ふたりともあたしの誕生日のことは知らなくて、でも、付き合ってもないのにこっちから言い出すのもアレだから」
ボトルに入ります。ワインは3千円代後半から取り揃えられており、モノを選べばリーズナブルに仕上がる価格体系でした。

うーん、でも、直前になって僕にOKを出されても、ちゃんとしたお店を用意できるか自信が無いから、当日じゃなくていいから予定を固めようよ。お店は当然お鮨がいいんだよね?「あたしは金沢に行きたい。小松弥助とか

構わないけど、それは泊まりでってこと?「何言ってんの。奥さんいるでしょ?」じゃ、僕が独身ならOKってこと?「ウフフ、ちょっとお手洗い行って来るね」
良いイワシが入ったとのことで、イワシとウイキョウと松の実でアレンジしてもらう。そう、シチリアの伝統料理のアレです。タマネギが入っているのか非常に糖度が高いのが特長的。具材がとにかくたっぷりであり、パスタというよりも完全に魚料理。ブカティーニ(中心に細い穴のあいた極太パスタ)がソースをたっぷりと吸い込み、本日一番のお皿でした。
ホウボウをズッパ・ディ・ペッシェ(魚介のスープ、ブイヤベース)にしてもらう。その他エビやら貝やらを加えてもらい、トータルで6,000円と腰が引けるスープです。魚介類のエキスがスープに溶け込み、魚というよりは海の恵みを丸ごと頂く料理です。パンでお皿を拭い取り、1滴も余すことなく完食です。

そう言えば、きみの好きな男性のタイプってどんなだっけ?「最初に、あなた。有名人だとザック・エフロン、ピコ・アレクサンダー、ジョージ・クルーニー」ハリウッドの連中と同列とは、私も偉くなったものである。
そんなに付き合いが長いわけじゃないのに、僕の何がそんなに響いたの?「フフフ、それはまた、おいおいね。お誕生日おめでと、今夜はあたしにご馳走させて」自分の果たすべき役割を無理せず淡々と優雅にこなしていれば、その魅力に気づいてくれる人は自然と見つかる。長年連れ添った恋人のように過ごす、素敵なディナーでした。


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