Bar 510(バーゴウイチマル)/赤羽橋


美人女医と初デート。しばらく前に何かの飲み会で知り合い連絡先は交換していたのですが、彼女の住所地が水道橋などあっち方面であったため食事にも誘いづらく、そのまま時が流れてしまいました。

その後、彼女が東麻布に引っ越してきたとの噂を聞きつけ秒で連絡を取り、その5日後が今夜です。人はそれを行動力と言う。
食事を済ませ向かった先は東麻布のBar 510。オーナーが後藤さんという方で、510はゴトウと読むと思いきや、実際にはゴウイチマルらしいです。ご実家が青果業を営んでおり、そこから仕入れる旬のフルーツを用いたカクテルが自慢のお店。
「ぜんぜん連絡くれなくて酷いじゃないですか~。だいたい、水道橋って、十番からそんな遠くないし」不満で鼻を鳴らす多部未華子似。クラシックバレエの熟練者でもある彼女は、長い手足と伸びた背筋が息を飲むほど美しい。どうして連絡先を聞いておきながら半年以上も寝かせていたのだと、自分をどやしつけたくなりました。
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当店はカクテルもそうですが、年代ものの食器類にマニア垂涎。稀少なバカラのグラスに始まりIVVやウェッジウッドのお皿たち。チップでもしたら三日間は立ち直れなさそうな価値のあるものを惜しげもなく普段使いする精神性。

「火傷しちゃったんです。これで冷やそうっと」氷の入ったグラスにそっと指をあてる彼女。細く長い指にはうっすらと赤い膨らみが。なるほどこの私とのデートが楽しみで浮かれながらコテをしてたらついうっかりですねわかります。
スイカ好きの彼女はスイカのカクテルを注文。一口頂きましたが、これがスイカだと言わんばかりのスイカ味。砂糖よりも甘い太陽の味覚。

「好きな料理は断然フランス料理!母が昔から好きで、良く連れて行かれました。一番好きなお店はアピシウス」きたきたきたきたこれ!本物きたよ!ここで、キノコを焼いて花を散らして泡のタレでもかけて試験管にぶっこむような空っぽのレストランの名でも挙げられれば今後の付き合い方を考えざるを得ないのですが、王道中の王道をいの一番に挙げるセンスには、恋と言っても良いほどの特別な感情を抱きました。
私は男らしくバナナのカキ氷。輪郭のあるバナナの風味の奥底からはゴディバのホワイトチョコリキュールの香り。書いたとおりの味わいであり、これを美味しいと言わない人はいないでしょう。

「ほんとはそういうお店、いっぱい行きたいんですけど、なかなか一緒に行ってくれる人がいなくって」と目を伏せる彼女。私もご一緒したいのは山々なのですが、そこに立ちはだかるのは金銭の問題。私の胸中を見透かしてか、彼女は彼女はいたずらっぽく笑う。「あたしと付き合ってイイところはね、あたし、お金に余裕あるから、デートでもちゃあんとお支払いします。ワリカンで全然オッケー!」100人の女が泣いた瞬間である。
お通しのおつまみセット。お皿が立派すぎて緊張する。枝豆は立派な生産者のものであり、コンポタージュスープのような濃密な味覚が印象的。ブルーベリー、マスカット、ナシなど季節の果物が爽やかさに満ち溢れており、ドライフルーツの蜜のような味と、ショコラのカカオの風味にうっとりする。

「他にはこんなところも気になっているんですけど」検索画面を映しながら私の方向へ小さく身を乗り出す彼女。彼女の腕が私の腕に少しだけ触れる。表示されたお店はお世辞にも清潔とは言えない焼鳥屋。アピシウスに引き続き、さらにポイントアップです。来週のスケジュールを告げ、再び秒でデートの約束が固まりました。人はそれを行動力と言う。
彼女はスイカのカキ氷を注文。後のマダム・スイカである。先のカキ氷とは粒子の具合がまた違い、ガリッっとダイレクトに氷を感じさせる夏の味覚。

「女医って、モテないんですよ。もうずうっと恋人がいなくって」彼女は自嘲気味に笑う。「家で独りでいるとすごく寂しくて。でも、『寂しい』ってLINEで大騒ぎするのも格好悪いし、わざわざ連絡とってまで会いたい人がいるかっていうと、それも違うし」人命救助の最前線に立ち深夜に病棟を駆け回る彼女も、おうちに帰ればひとりの女の子に過ぎないのだ。
私はカキ氷をもう1杯。バーに来て酒を頼まずひたすらカキ氷を食べ続けるオジサンかっこいい。今回のテーマは桃であり、まさに熟した蜜の味わいが味蕾を多い尽くす。滑らかな氷にヒュっと熱いアルコールが染み渡り、当店はバーだけでなく、カキ氷屋としても大成することでしょう。

お会計はふたりで7,000円チョイ。妙に安いと明細を眺めると、チャージは驚きのひとり500円でした。このハードルの低さは最高ですねえ。繰り返しお邪魔することに決定。「チョー楽しかった!今夜はあたしに払わせてくださいね」片目をつぶりながら手早く支払い処理を済ます彼女。

「フィーリングって」彼女は小さく一呼吸置いてから静かに語り出す。「フィーリングって、あると思います。人と人との親密さは、時間じゃない。○○さんはあたしと相性ぴったり」

夏はこれからだ。


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