鮨の間/二番町(松山)

愛媛、いや四国ナンバーワンとも誉れ高い『鮨の間』。居酒屋やキャバクラ、スナックなどが群雄割拠する大繁華街・番町に位置します。店主は今治の『健寿司』で16年修行の後、独立。青は藍より出でて藍より青し、ミシュラン2ツ星。
カウンター7席の、ちょっと銀座っぽいコンパクトな鮨屋です。客層もほぼ全てがウォーター系同伴カップル。ただし東京のようなハイアマチュア・パパ活ネーチャンは見当たらないので、ある意味健全かもしれません。
生ビールを注文すると、薄張りのグラスの琥珀色の液体。ホップの香りとコクがたっぷりであり、恐らくマスターズドリームかブラウマイスターのいずれかでしょう。昨今のクラフトビールブームに触発されてか、ピルスナー一辺倒だった日本のビール業界に動きが出始め何よりです。
お通しは穴子(?)とキュウリの酢の物に、トウモロコシと豆乳のスープ。前者はサッパリとして最初の第一歩として最適ですが、後者は酷く甘ったるく、序盤に頂くには些か苦しい。
ややこしいツマミなどは用意せず、刺身とにぎりの2本立てというシンプルな構成。まずはアコウ(キジハタ)。今が旬の高級魚。程よい歯ごたえに清澄な味わい。ただ、これは私の好みなのかもしれませんが、フグ同様にそれほど有り難がって食べる美味しさでも無いような気がします。
アオリイカ。細かく包丁が入れられ、優しく塩が振られ、イカながらフンワリとした食感に感じます。味蕾への接地面積が大きく、甘い。
手長ダコ。こちらもフワっと柔らかいのですが、心のある歯ざわりで、噛めば噛むほどに旨味が滲み出ます。やはりこのような地の物に出逢えるのがグルメツアーの醍醐味である。
お酒はやはり地元のものを。石槌の純米吟醸に始まり、川亀の純米吟醸へと進みます。1合1,000円を切るというお値打ち価格。
右からアジ、シメサバ、シメサバの炙り。こんな旨いアジを食べることができ感無量、と評してよいほど旨い。思い切り肉厚で、ガシッガシッっとした健康的な噛みごたえ。旨味とはまた違う独特の美味しさにノックアウト。

シメサバも素晴らしい出来ですね。左手は添えるだけだと言わんばかりの〆具合であり、サバそのものの素材の良さが際立つ仕事。炙りに至っては言わずもがな。本日一番のお皿でした。
マナガツオ。先の皿が本日一番と言っておきながら、コチラも甲乙つけがたい味わいです。個人的にはあまり好まない食材なのですがこの刺身は別格。マナガツオってこんなに脂がのってるんだとショックを受けた個体でした。
にぎりに入ります。まずはヒラメ昆布締め。にぎりのスタイルが印象的ですね。親指大ほどの小さなシャリであり、米粒の食感がはっきりと感じられる芸風です。個人的にはもっとガッツリした食べごたえを好むのですが、まあそれは人それぞれ。
タイの昆布締め。ヒラメに比べるとフレッシュで食感が豊かなにぎりでした。
イシガキダイ。タイをより筋肉質にしたような味わいであり、なるほど徐々にクレッシェンドとなってにぎりが迫ってくる寸法ですね。
アジ。ガシャーン!やはりこの日のアジは最高である。気のせいか、刺身の時よりも凝縮感を感じ、より一層の旨味を感じました。
車海老。完全にボイルするわけでなく、ミ・キュイの状態です。ボタンエビは生で食べることが多いけれど、車海老をこの火入れで食べるのは珍しい。甲殻類の香りと旨味。美味しゅうございました。
金目鯛。疑う余地もなく美味しいです。ただ、アジのハイ・パフォーマンスっぷりに比べると印象は薄い。
ノドグロ。ぐわー、やっぱりノドグロは旨いだよー。口に放り込んだ瞬間にジュワっと溢れ出る肉汁。まるで肉のような魚です。高級魚は斜に構えて接してしまいがちですが、ノドグロに限っては値段に見合った美味しさがある。
ヅケ。おお、これは旨い。塩味と旨味、若干の酸味がバランス良く赤身に染み渡り、いくらでも食べ続けられる美味しさです。
中トロ。金額としては赤身よりも高くつくのでしょうが、個人的にはヅケのほうが美味しく感じました。魚の値段って不思議ですね。もちろん魚が値札をつけて泳いでいるわけではないので、あたりまえと言えばあたりまえですが。
ウニ。うっとりと甘く官能的な舌触り。ただ、非常に小ぶりなシャリに数ピース載せるだけという、流行に逆行した上品な握りであるため、てんこ盛りのウニに慣れた現代っ子にとっては好みが別れるところでしょう。
玉子もブームのカステラのようなものではなく、れっきとした玉子焼きです。卵そのものの風味が感じられ好感が持てました。

飲んで食べてひとりあたり1.3万円。うわーお、安いですねえ。東京であれば倍とられてもおかしくない質および量です。全体を通して量が少なめなので、大食漢の方は事前に申告し、たっぷりコースでお願いすると良いかもしれません。

大将も女将も親しみやすい雰囲気を身にまとっており、客を試すというようなことは一切なく、非常に居心地の良いお店です。愛媛に来ることが決まった瞬間に予約の電話を入れましょう。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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