山猿/麻布十番

昼に何かの用事で連絡を取り合ってて、「また近々食事でも~」的な流れになり、私の辞書に社交辞令という言葉はございません。「ウイスキーとか焼酎とか飲みたい気分」とのことで、今夜はワンチャンありそうです。
当日予約したお店はコチラ。元々は新橋での人気焼鳥店だったのですが、乾坤一擲、十番のど真ん中へ移転です。
エクステリアこそ赤看板の提灯が下がった系なのですが、バーやクラブの居抜きなのか不思議な空間設計。入口近くのハイチェア群を抜け、奥の創作ダイニングちっくな広場へと案内されます。外装と内装のギャップは十番でもトップクラス。

「おまたせ」表情を持った長い髪に品の良いミニスカワンピで登場した彼女。数ヶ月ぶりに会うのですが、いつ見てもギャフンと唸るかわいさです。私はプール帰りのポロシャツ姿であり、もう少しエレガントな服装で来れば良かったと後悔。
僕は最初、ビールにするよ、と告げると「あたしは焼酎のソーダ割り。ビール飲むと、おなかがふくれちゃうからさ」ソーダ割りならビールと腹の膨れ具合は変わらんだろう、とも思いましたが、女の子が進んで強い酒を飲む食事ほど楽しいものはない。「ほんと焼酎とウイスキーがたくさん。当日決めたデートなのにリクエスト通りね。あなたはクズだけど、店選びののセンスは最高だわ」
お通しがカツオの刺身と豪華です。これで1人前。料金は1,000円と絶対額は高めですが、旨くもないマカロニサラダをお通しと言い張り500円を徴収されることを考えれば、当店の芸風のほうが全然好き。

「さっき仕事辞めてきた。しばらくは遊んで暮らすつもり。ねえ、どこ旅するのがいいかな?女ひとりで寂しくなくて、安全なトコ」開放感に浸り目を輝かせる彼女。私はなんてタイミングの良い瞬間に立ち会うことができたのでしょう。今夜はワンチャンあるに違いない。
かしわサラダ。その名の通り、鶏肉が山盛り入っています。これはサラダというよりも肉である。新橋で名を馳せた焼鳥専門店だけあって、肉質も上々であり、料理として完成した味覚です。

「久しぶりに会うから、これまであたしが登場した記事を復習してきたの。こいつ、なんてスノッブな女なんだって、我ながら引いたわ」その通り、彼女はオフィス内に個室が与えられるほどのバリキャリで、思い切り感じが悪く、ひたすらに魅力的なのである。
「ねえ、結局さ、あなたの好きな女のタイプって何なの?」うーん、リクエストを言えばキリが無いですが、強いて挙げるとすれば『健康』『自立している』『嫉妬しない』かなあ。『嫉妬しない』ってのは男女間のヤキモチだけじゃなくて、成功者を羨んだり世の不公平を嘆いたりしないことを含めてだけど。誰かを標的にしないと気が済まない女はまず却下。

一方で、『家事が完璧』みたいな内助の功プレイは一切求めないね。家事なんて誰でもできることで、もちろん僕自身だってできる。「そうね、『家事が大変!旦那が手伝ってくれない』って愚痴っている女の気が知れないわ。代行サービス頼めばいいだけなのにね」ギャフン!なんてスノッブな女!
せせりポン酢。よく動く首の筋肉をポン酢でさっぱりと。噛めば噛むほど肉汁が出て来ます。これは酒を飲むに最適の味覚。私はビールばかり飲んでいるのですが、彼女は焼酎ソーダ割り、ウイスキーソーダ割りダブル、焼酎ロック、日本酒とペースが速い。
白レバ丸焼き。フォアグラのように濃厚でありつつも、血なまぐささは一切なし。肝硬変な鶏を新鮮なうちに口に放り込み、噛むほどにコクが広がります。酒飲みには堪らない逸品。

「それにしても、好きなタイプ、屈折してるよねえ。普通に『合コンさしすせそ』が自然にできる女の子とかじゃないわけ?」『合コンさしすせそ』とは、『さすが!』『知らなかった!』『すごい!』『センスいい!』『そうなんだ!』を合いの手として挟み、会話を盛り上げるテクニックのひとつらしいのですが、実にくだらないですね。『さすが!』とか言われても、お前は俺の何を知っていて『さすが!』と評しているのかと問い詰めたくなるし、『そうなんだ!』に至っては、話題を広げることのできない知的好奇心ゼロのアンポンタンにしか捉えられない。このような低脳女がSNS上で周りの友達との出会いに改めて感謝するのである。
つくねは1本500円近くするのでビビってしまいますが、もはや串焼きというレベルを超越し、鶏ハンバーグに近い猟奇的なポーションです。

「じゃあ、『バチェラー・ジャパン シーズン2』の推しメンは誰?どの男に聞いても、あたしからしたら絶対にNGな女を皆が答えるから嫌んなっちゃう。あたしが目指してる方向が全部間違ってるってことじゃん」その番組は観ていないけれど、キミが目指してる方向は決して間違っていないよ、少なくとも僕にとってはね。これは下心があって口説くために言うのだけれど、キミは僕のめちゃんこタイプだよ。健康で、自立していて、嫉妬もしない。品が良くて教養もある。何より美人のワンダーウーマンだ。
肉付きナンコツに豚バラ。ナンコツはベーシックに美味しいですね。肉もたっぷり付随しており食べ応え二重丸。豚バラも美味しく、たっぷりの薬味も嬉しいのですが、若干脂の臭みが残り、あえて焼鳥屋で食べる必要はなかったかなというレベル。

「ちなみにあたしの好きなタイプはね」私の一世一代の告白を既読スルーする彼女。「仕事がデキて、人として尊敬できて、奥さんを大切にしている人。でも、あたしに振り向いた瞬間に『奥さんを大切にしている人』じゃなくなるから、全く興味が持てなくなるの」パラドックスだわ、と濃い溜息をつく彼女。さりげない牽制球に直面し、私も併せて濃い溜息を。
ちなみに日本酒は1合1,000円を切ってくるので、十番で飲む割にはお買い得なほうでしょう。グラスワインも600円~というお値打ち価格。

「今夜はありがと。誘ってくれて嬉しかったわ。しばらくずっと予定ないから、またいつでも誘ってね」言ったな。無限に暇な私を本気にさせると、それこそ週10回は相手にすることになるぞ。

「そう?楽しみにしてる」意味ありげな笑みを含ませながらタクシーに乗り込む彼女。ちなみに彼女の自宅はここから僅か徒歩5分。まことにスノッブな女である。


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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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