鮨 いの/二番町(松山)

松山の繁華街の雑居ビル3F。ミシュラン1ツ星の江戸前寿司(写真は公式ウェブサイトより)。「いの」という店名はシェフの苗字が猪野さんだからであり、たぶん「シェ・イノ」とは関係ないと思います。
まずはビール。話はそれからだ。銀座の超高級店もかくやという雰囲気なのに、瓶ビール600円と良心的。酒の値付けが安いので、気にせずガブガブ飲むことができるでしょう。
挨拶代わりにタコとハモ。タコの嫌な繊維は解きほぐされ、歯がスっと差し込むほど柔らかい。タコらしい骨格のある味わいもグッド。ハモはそれほど好きじゃない素材なので意見を表明しない。
茶碗蒸しの冷製。具材は地元のワタリガニにジュンサイ。ワタリガニの量がケチケチしておらず、茶碗蒸しというよりカニを食べているような満足感。ジュンサイのつるんとした食感を出汁のきいた茶碗蒸しが下支えし、さっそく私のハートを鷲掴み。
にぎりはクエより始まります。16日間熟成させたもので、普段食べるクエよりも深みがあって私得。クエってフグと同様に高い割に大騒ぎするほど旨くない魚と信じ込んでいたのですが、なるほどこのようなにぎりであればありよりのありですね。
マコガレイ。時季にもよるのでしょうか、ヒラメをはるかにしのぐ味わいであり、娘の名前は真子ちゃんにすると決心したほど美味しかった。
タイの子供。ピンク色に染まった外観が目に美味しく、ムキっとした食感が舌に美味しい。そうそう、当店のシャリはサイズが中々に大きく食べごたえがあって私の好きな方向性です。
アオリイカ。こちらも美しい仕上がりで、包丁で工夫したヒダヒダがひとつひとつの味蕾を刺激します。うっとりと甘くセクシーな味わい。
地元の赤ウニ。幻のウニと呼ばれ高値で取引されているネタです。なるほど思わず背筋が伸びてしまうほど甘く、事件性すら感じさせる美味しさでした。にぎりというのも良いですね。軍艦にすると海苔の風味が強すぎて、このウニの良さがボヤけてしまっていたかもしれません。
媛人の純米吟醸。えんど、と読みます。これがなんと1杯500円という衝撃価格。もちろんそれほどたっぷりというわけにはいきませんが、県外客が地元のお酒を飲み比べするには堪らない価格設定です。
白えび。やや色味がかっていますが幾ばくかの熟成を重ねているとのこと。これがマジでやばたんまるに旨くって、シーズン中に富山で食べたそれよりも段違いに美味しく感じました。これが仕事というものなのか。本日一番のにぎりです。
車海老が特大サイズ。割に大口な私ですらモグモグモグと必死になる大きさ、そして、美味しさです。ゆうべの鮨の間における車海老は半生仕立てでしたがこちらはしっかりとボイルされており、同じ素材ながらまた違った魅力に出会うことができました。
脂がたっぷりのったイワシ。このイワシが旨いのなんのって。ひたすらにコクと脂に溢れ、美食とは金ではないことを再認識させてくれる素晴らしい1カンでした。
トロは恐らく築地からでしょう。江戸前と名乗る面目躍如、東京の有名店で食べるそれと同等かそれ以上の出来栄えです。これで東京で鮨を食べる理由は無くなった。
コハダも伝統的な製法であり、これがコハダだと鮨の教科書からセロが飛び出させてきたような味わいです。〆のタイミングがパーフェクトであり、心に残った1カンでした。
立派なサクを贅沢に包丁でミンチにし、ネギを刻み込んで手渡し。グッっと来るプレゼンテーションならびにネギトロの質、海苔の風味でした。回転寿司やスーパーのネギトロとはもはや別次元の料理である。
江戸前の奥義、アナゴです。この柔らかさでよく握れるなと感心するほど柔らかく仕上がっており、品の良いツメと共にシャリが舌先で崩れゆく。なんだか久しぶりにちゃんとしたアナゴを食べたなあ。
お椀は赤だし。松山風のヘンな甘ったるさはなく、コースのクライマックスを飾るにふさわしい骨格のある味わいです。
ラストはかんぴょう巻。素朴ながらスキのない味覚であり、店主の江戸前への意気込みを印象づけた署名でした。
水菓子は山形のサクランボと静岡のメロン。このメロンも素晴らしいですねえ。2キレと量は少ないものの、その凝縮感と熟成感と言ったら無い。ごちそうさまでした!

お会計で椅子から転げ落ちそうになる。以上、飲んで食べて10,000円ポッキリです。なんなんだこれは。東京なら余裕で30,000円を突破するクオリティですぞ。「タケマシュランは地方の鮨は安いとか言ってるけど、交通費かかってるじゃんね(名古屋弁)」と揶揄されることがありますが、ここまで来ると交通費込でも勝負になる次元です。

この店は最THE高。もうすでにしているかもしれませんが、近々もっとブレイクする予感。ご訪問はお早めに。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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