Restaurant Stéphane Derbord/Dijon


Stéphane Derbord。ミシュランの星は獲得していませんが、地球の歩き方先生が大絶賛しており、トリップアドバイザーでの評価も上々。Airbnbのホストに今夜はここでゴハンなんだと伝えると「素晴らしい選択だ」とお墨付き。
予約時間の20時に入店。物腰柔らかいマダムが旧知の仲のように迎えてくれました。が、このマダムがちょっと困ったちゃん。仕事を部下に任せられない司令官であり、彼女がゲストの出迎えや接客についているときは全てが滞るのです。

挨拶を兼ねて注文を取るのは彼女にしか認められていない仕事であり、その間、他のスタッフたちは待ちぼうけ。彼女が数分かけて各テーブルの意向を聞いて周るので、自分たちが注文できるまでにものすごく時間がかかります。
その間はキールを飲みながら時間を潰す。嬉しい誤算というか、これが驚く程美味しかった。これまではキールが食前酒だなんて甘すぎて信じられない、というスタンスだったのですが、考えを改めます。溌剌とした白ワインの酸味にカシスの繊細な甘さが心地よい。ムートンが造ったカシスを彷彿とさせる味わいです。
ヒマなので登場人物を整理しましょう。肩書きは私のイメージです。
  • マダム:司令官であり当店の絶対権力者。接客と注文取りとお会計は彼女の仕事。
  • ソムリエ:ワインにしか触れない超越した存在。
  • 社員:料理の皿出しとその説明。
  • バイトリーダー:英語に難あり。料理の説明を全て「ミート&ベジタブル」「フィッシュ&ベジタブル」で済ます。チーズ担当。
  • バイトその1:パンと水をサーブするのみ。
  • バイトその2:パンと水をサーブするのみ。
徹底的な分業制および従業員内格差です。バイトくんたちが可哀相。今すぐ仕事を辞めるべきでしょう。ここで時間を重ねてもスキルアップは望めない。
アミューズは左からタプナード、チーズのカリカリ、サーモン、シェーブル、謎のボンボン。きちんとした説明は得られませんでした。フランス人に対して少しフランス語で声をかけると、嬉しそうな機関銃のようにベラベラと返ってくるのですが、英語となると彼らはとんと口数が少なくなります。

ちなみに私は3皿コースにチーズとデザート。妻はアラカルトで前菜とメインのみ。ワインはふたりで1本。そして水。まるでミシュラン調査員のような注文である。
「前菜です」とだけ言い置いて立ち去ろうとするバイトリーダー。ちょっと待てこれは何だと捕まえても「前菜です」の一点張りで全く噛み合わず彼は肩をすくめるのみ。だめだこりゃ。

恐らくですが、左からチーズのカリカリにカレー風味をきかせたスティックにトマトのガスパチョ。黄色いトマトと青いトマトを織り交ぜているのは食べていて楽しい。

真ん中はトマトにイワシのリエットでまあ普通。右のイワシのムースも普通です。
パンはホカホカで麦の旨味を感じられ、なかなかレベルが高かった。
バターも程よい塩気とコクが良い。うん、食べ物全般のレベルは高そうなお店です。
コチラは94ユーロとお買い得。日本のレストランで飲むと恐らく3万円は下らないでしょう。緻密なラズベリーの香りと繊細なタンニン。普段、自分から好んでピノを飲むことは少ないですが、これにはノックアウトされました。
ロブスターとサフランのテリーヌ。付け合せは生野菜にニンニク風味のマヨネーズを取り合わせたもの。これはもう絶品。ロブスターのほぐし身がラッシュ時の埼京線のように詰め込まれており、ブツ切りの肉もゴロンゴロンとトッピング。甲殻類の出汁を固めたジュレも快楽的。付け合せの彩りも豊かで、なるほど、サービスはともかくとして、シェフの腕前は天下一品である。

しかしここからが長かった。1皿を食べ終わってからのインターバルが40分もあるのです。すわAfter Sevenの再来か、妻が死刑判決を言い渡しませんようにと祈るばかり。
手長エビの旨味を凝縮しカリカリに揚げられた出色の一皿。オマケのトマトが天晴れ。ベーコンなど旨味の強い肉類が程よく押し詰められており絶巧ここに極まれり。貝の出汁のジュレも強固な味わいで一口食べるごとに唾液が次々と溢れ出てきます。

しかしこの皿から次の皿へは30分の切れ間があるのです。外国のレストランはサービスレベルのボラティリティが大きすぎる。星付きレストランではサービスにストレスを感じないことが殆どなのですが、無星だとイライラする場面が非常に多い。星の多寡は皿の上だけで判断するというミシュランの主張が疑わしくなってきました。
シャロレの熟成牛肉。シャロレとは地名および品種名です。私はあまり熟成が進んだ食材を好まないのですが、当店のそれは私の許容範囲内に抑えられており、言い換えると傑作です。繊維の1本1本まで美味しくトリュフの香りも嫌味なく心地よい。付け合せのマッシュポテトにはセロリの風味が取り込まれており、細かい工夫に才覚を感じます。
バイトくんがヒマに絶望していたので、パンを追加で頂きました。
チーズをサーブして良いのはバイトリーダーのみらしく、これまた各テーブルを待たねばならないので、切って出すだけなのに何十分も要しました。
しかしスライスは驚くほど薄く、中々のナイフさばきです。やるじゃんバイトリーダー!ちょっと物足りなかったけどな。
デザートはチョコケーキにチョコアイス。非常に解かり易い味わいで、濃厚なカカオが口から食道にかけてネットリと流れ落ちる。ううむ、料理だけでなく甘味も見事。
小菓子は和のテイストが感じられるマカロンにラズベリーとライチのムース、カルダモンのゼリー
にバナナのタルトです。最後の最後まで細やかな仕事ぶりでした。

うーん、評価に迷うお店です。味は抜群。値段も安い。しかし食事のテンポが悪すぎるし、非効率的なオペレーションが丸見えなのでイライラする。司令官がもっと権限委譲できれば完全無欠の料理店になるのになあ。



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