チーズをめぐる冒険 vol.5~Airbnbのホスト夫妻が大喧嘩~


2016年ニーストラックテロ事件の現場へ。7月14日の夜、フランス革命を記念する花火の見物客目がけてトラックが突っ込み、約2キロにわたって市民をひき殺しながら暴走、さらには銃を乱射し、最終的には警官隊と銃撃戦となったテロ事件。
追悼台の近くでは自然と背筋が伸び、涙が溢れてしまいます。84人が死亡。テロリズムに対してどのような姿勢で臨めば良いのか、今のところ私の中に解はありません。最大多数の最大幸福の逆というか、世の中の悲しみとか不幸とかが極小化できればいいのにな。
旧市街へ。新市街に比べると幾分のんびりとした雰囲気が漂う街並みです。
マルシェもどことなくのんびりとしているというか、平たく言うと活気が無い。今から思えばヴェルサイユのマルシェはお祭り騒ぎだったなあ。あの精力を日々間近に感じられるというだけでヴェルサイユに住みたくなる。
そうそう、コート・ダジュールを散歩する際は犬のフンに気をつけてくださいね。南仏の人々の気質なのか、フランス人とはそのような人種なのかはわかりませんが、ペットの排泄物の後片付けをするという習慣があまりないように思えました。ビニール袋が街の至る所に備え付けられおり、行政が啓蒙活動に勤しんでいることは理解できるのですが、それでも道のそこかしこにウンコが落ちているのでご注意を。
「鷲の巣村」のエズへ。「鷲の巣村」というのは、南仏に点在する海岸に張り出した岩山の上に築いた村々のことです。由来はその名の通り、村の姿が鷲の巣のようだから。
ご想像の通りアクセスは最悪であり、いずれの村も秘境も秘境に位置しています。仮に公共交通機関でエズに行こうとすると、ニース外れの長距離バスターミナルから、2時間に1本のバスに30分揺られる必要がある。海外で路線バスに乗ることほど不安なものはありません。
そこでまたUBERですよ!見て見て!UBERだと待ち時間など一切なく、たったの30分で目的地にたどり着くことができるのです。感覚的には地に足がついたどこでもドア。

しかもドライバーは皆気のいい奴らで、景色の良い地点で我々が窓にへばりついていると「写真撮るかい?」と絶景ポイントで停車してくれたりするんです。どうしてUBERの運転手たちはスマートな方々が多いのか。タクシーの運転手で「また是非この人にお願いしたい」と思ったことは一度もないのに、UBERの場合はかなりの確率でそう思う。

話は逸れますが、帰国後、浜松町から乗ったタクシーの運転手が本当に酷かった。乗車前乗車後のトランクの開け閉め荷物の上げ下ろしまで客にやらせ、十番までのナビまで客に要求し、態度も悪けりゃ運転技術も低い。

私は普段、まともな人としか付き合わないようにしており、行くレストランも接客がきちんとした場合が多いので、対人関係においてストレスを感じることが殆どないのですが、唯一の例外がタクシードライバーなんです。タクシーに乗るたびに毎回イライラしてしまう。
村の麓で車を降り、ここからは気軽なハイキングです。観光案内所で地図は貰えるのですが、小さい村ですし、とりあえず上を目指せばてっぺんにたどり着くという、非常にわかりやすい構造です。小さいモン・サン・ミッシェルと思って頂ければ大体あっています。
どうしてこんな辺鄙な立地に村を作ったかというと、昔々に悪い奴らに見つからないようにするために断崖絶壁の山の中に村を作る必要があったそうです。気分はもうドラクエ。のんびり探検すると小一時間。足腰が丈夫なうちにどうぞ。
山の頂上は別料金の植物園。地球の歩き方大先生が「植物園としては大したこと無いが景色が良い」と、褒めているんだか貶しているだかよくわからない評価をしています。
なるほど絶景。完璧に晴れ、水蒸気なども無ければそれはそれは見応えのある景観でしょう。これは写真や言葉じゃ伝わらないなあ。訪れた人のみが味わえる最上の経験です。
そしてその景色を手中に収めながらミシュラン星付きの料理を味わうというアクティビティがこの村にはあるのです。いや、正確に言うと私がお邪魔したのは2ツ星ですが、その隣には3ツ星店が。まったくフランス人の食事にかける情熱には脱帽する。超ド田舎の山上の村にミシュラン3ツ星と2ツ星のレストランが隣り合わせにあるなんて。極上の食体験の詳細は別記事にて。
気分がアガってしまったので、急遽予定を変更し、イタリア国境近くの街、マントンへ。思いの外距離があり、天下のUBER様でも40ユーロ近くかかってしまいました。また、不用心にも夫婦揃って爆睡してしまったのですが、それでも運転経路はしっかりと記録されており、遠回りされることもなく納得感があります。UBERバンザイ!うばんざい!
マントン。フランスの7割近くのレモンを産出する柑橘系リゾート地です。春先のレモン祭では街中がレモンで埋め尽くされ、何処へ行ってもレモンの香りが漂うとか。
ただし、レモン祭の時期でなければ見るべき所は思ったよりも少ないです。何かのついでに来るには悪くないけれど、ここだけに来る街ではなさそう。それでも地球の歩き方大先生はすぐに「最低でも丸一日、できれば1泊したいところ」などと言ってくるので鵜呑みにしないように気をつけましょう。
帰りは国鉄駅から電車で戻ります。途中、モンテカルロで大勢の浮かれた客が乗って来ました。モナコ、懐かしいなあ。何もかもが高くって、何もできなかったなあ。もう6年も前の話なんですね。ちなみに私も当時はプロニートであり、何も仕事をしておらずブラブラしていたのです。つまり、今回のプロニートのくだりは妙に親近感を覚えるというか、シンパシーを感じているからこその手厚い記述。
夕食はゆうべのチーズの残りにソッカチップス。ソッカチップスとは、ひよこ豆のクレープ「ソッカ」をスナック菓子に仕上げたものです。デザートはランチのお土産のケーキ。昼にたっぷりと食べ夜は軽く。これぐらいでちょうどいい。

今夜のプロニートは忙しそうに電話をしていました。しかしどうも和やかというか、絶対に仕事の話ではないことはわかります。

その数十分後、どのような経緯かはわかりかねるのですが、突然ホスト夫婦が口喧嘩を始めたのです。リビングに居るのが気まずくなって我々は自室に戻ります。夫婦喧嘩が耐えない子供の気持ちが痛いほど理解できました。

その後、バタンと勢い良く家を飛び出るプロニート。おそるおそるリビングに戻ると奥様のため息が絶えない。これは一大事だ。Airbnbのホスト夫妻が喧嘩している際、ゲストはどのように振る舞うべきなのか。このままだと、このままだ。新しい人間関係においてどこからどこまで踏み込んで良いのかわからないまま何もできず、布団を被って震えながら現実から逃避する。



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