チャイナルーム/六本木


「フランスいつからだっけ?飲もうよ」というお誘い。大変ありがたいのですが、「フランスいつからだっけ?」というのは「夏が終わるまでに」であったり、「連休で混む前に」であったり「今週が終わる前に」であったり「明日が来るまでに」であったりと、理由に意味は無いことを私は知っています。つまり彼女は飲みたいのである。

「グランドハイアットのロビーで待ってて。中華を予約しといたから」とホテルでの待ち合わせが多い連れ。お、このあたりで中華と言えば!
チャイナルーム!ずっと行きたいお店であり、それでも家から近いのでいつでも行けると高を括っていると何年も行けずじまい。渡りに船の生ビールに乾杯。
お通しで出されるカシューナッツ。塩味が色濃く塗されており、青海苔のフレーバーも発展的。これまでの人生で最も美味しいカシューナッツとなりました。

ディナーコースは12,000円~と結構なお値段。それでも惹かれる料理名が見当たらなかったので、「ねえ、アラカルトにしない?」と連れ。さすがはチャンピオン級のグルメ、自身の慧眼に自信満々です。
”よだれ鶏”四川式蒸し薩摩赤鶏 辛味胡麻ソース。紳士のような味わい。ここまで品の良いよだれ鶏は初めて食べました。完全無欠の美味しさなのですが、もう少し荒々しく野暮ったい味付けでも良いかもしれません。上品すぎてヨダレは出ない。
トリュフの香り豊かな小龍包。香りどころかガチっとしたトリュフ殿が鎮座しておられます。程よい厚さの生地を優しく広げると、禁断の肉汁が溢れ出て絶頂に達します。これは旨い。
私は紹興酒をそれほど好まず、またワインも辛い料理が出てきては台無しなので、徹底的にビールで通す。それにしても青島ビールは軽い。川の流れのように飲めてしまいます。
麻婆豆腐。連れは料理人であり「中華の料理人の腕を見るのは麻婆豆腐が一番。それに、麻婆豆腐が美味しいお店って、すごく儲かるの。原価、めちゃめちゃ安いから」。なるほど、麻婆豆腐をそのような目で見たことはありませんでした。

気になる味を結論から言うと傑作。予想外に驚くほど甘い。甘くてギョっとしつつも後からジワジワと溢れる辛味と痺れ、複雑性。なんとも不思議な味わいで、世の中知らない料理がまだまだ沢山ありますね。歳を取るのも案外悪く無いかもしれません。
山椒は卓上のガリガリで自由に追って良い形式。カキ氷のように遠慮なく削り取ると、暴力的な痺れが押し寄せ始めました。青島ビールにちょうど良い。
タラバ蟹と上海蟹の卵入り黄金炒飯。これは普通でした。どちらが正統的なのかはわかりませんが、あまりにもパラパラに調理されており、食事をしている感が乏しいです。タラバ蟹はそれなりに入っていますが旨味に乏しく、上海蟹の卵も砂金のような存在です。
豆板醤入りの塩麹をトッピングできるのですが、味が粗くあまり脈絡もありません。
〆の1本はオリオンビール。そうそう、カラオケで盛り上がるべきタイミングでは「オジー自慢のオリオンビール」を歌うことが多いのですが、最近この歌を知らない人が多くポカンとされることが多い。やはり歳は取るものではない。
ラストは黒胡麻担々麺。色合いとは裏腹に透き通るような黒さです。漆黒なのに清澄。コクは意外に少ない。不思議なスープです。麺は中太麺でモフモフした食感。きちんとした中華料理人が本気で担々麺を作るとこうなるのかと、色々と刺激を受けました。

「あたしが誘ったんだから」と私の財布を頑なに閉じる連れ。「じゃあいくらか当ててみて」と問われたので、税サ込22,000円と答えると目を丸くする彼女。正解は21,200円と、僅か800円の誤差でした。今ならゴチバトルで無敗を誇ることができるかもしれません。経験や審美眼というものは自腹でこそ積まれるのです。



Instagram


関連記事
それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。


関連ランキング:中華料理 | 六本木駅麻布十番駅乃木坂駅