La Chevre D'or/Eze


 
エズ村の麓から歩いて数分に専用の駐車場があります。徒歩の場合は村の中からアクセスすることが一般的ですが、徒歩であっても駐車場側から入ることをオススメします。
なぜなら駐車場から店に続く遊歩道の至る所に不思議なオブジェが並べられており、また、当ホテルおよびレストランの関係者しかいない排他的な空間であるため、村の中とはまた違った雰囲気を味わうことができるからです。ライオンとか象とかいっぱいいるよ。
予約時間より少し早めに着いたので、レストラン予約客専用のウェイティングスペースへとご案内。
山の頂上からの景観と同様に絶景。ただし日差しが強いため気温は高く、したがってアペリティフには目と鼻の先モナコ公国のビールを頂きました。

そよ風が吹くと心地よく、人生の幸せはここにあると越に入っていたその瞬間、ビュウと突風が吹き、私の左に設置されていたパラソルがフワリと浮き上がる。その瞬間、右手はグラスで塞がっていたものの、反射的に利き腕では無い左手で空中に浮いたパラソルの軸をキャッチ!「ナイスキャッチですサー!」と店員から褒め称えられ、ちょっとしたヒーロー扱いしてもらえました。
「ナイスキャッチですサー!」騒動により、テラス席の全てのパラソルが閉じられることとなりました。つまり、日差しがガンガンに降り注いでくるので暑いったらありゃしない。もっと言うと、パラソルを閉じたたけであり根本的な対策は何もされていない。それでも「ナイスキャッチですサー!ワッハッハ」で終わらせる南仏の度量に感心しました。
 
強烈な日差しに苦しむのも束の間、テーブルが整うとすぐに空調の効いたフカフカの絨毯の部屋に通されます。大きな窓の脇のテーブル。すぐそこには断崖絶壁。気分はポジタノやアマルフィあたりのレストラン。
前菜が到着。くどいようだが絶景である。非日常の空間で最高の味覚を楽しむとこは幸せこの上ありません。この大パノラマを味わうにはやはりランチでしょう。

なお、客層は全て(フランス人にとっての)外国人であり、店内の会話は全て英語で統一されていました。仕事関連の利用が多いのか、それほど親しそうでもない会話の弾まないテーブルが多いのが何だか可笑しかったです。それでも何のためらいもなく昼から酒を注文しても許されるのはフランスの魔力でしょう。

もちろんゲストたちの衣装も手抜き無し。ちょっとした山登りだったので、ドレスダウンしようかとも考えましたが危ない危ない。頑張って革靴にジャケットで来て助かりました。その点、女の子ってラクですよね。ワンピ1枚でどこへでも行ける。
球体のものはフォアグラを柑橘系の風味でコーティングしたもの。フォアグラのコクと柑橘の爽快感のバランスが素晴らしい。

カリカリの座布団に乗っかるのは恐らくエスカルゴ。グニグニした食感と凝縮感のある旨味が食前酒を後押しします。
アミューズに生牡蠣が出るのは珍しい。それも単純な生牡蠣ではなく、酸味が清々しいソースが添えられており恐ろしく手の込んだ生牡蠣です。

貝殻にのせられているの魚はサバ。表面は勢い良く焦げ目が付けられており、焼き目の香ばしさが食欲を刺激し、半生状態の身の滑らかさに鳥肌が立つ。
パンは密度が高く緻密な組織。卵黄でテカりが与えられており、パンごときにここまでの手をかけるかと感服する。
ぶくぶくソースがかかったものは興味をそそり一品は、
恐らくはラタトゥイユの再構築。色鮮やかな夏野菜がたっぷりと刻み込まれており、ここまで斬新かつ美味なラタトゥイユは初体験。
オリーブのフォカッチャと塩バターパン。フォカッチャは油分がやや多くベッタリとしていますが、オリーブの個性が強烈で、日常生活であればこれだけで立派なオカズです。他方、塩バターパンは普通くん。
前菜はトマト。色とりどり様々なトマトが、種々の調理法により仕上げられています。驚いたのは左のヘタつきのトマト。驚くべきことにこれだけ温製であり、カリカリのチーズでコーティングされているという面白い調理。また、中央の水牛製のチーズにもノックアウト。ジューシーにミルクの旨味に圧倒されます。
昨日のボルドーに懲りること無く本日もワインはソムリエにお任せ。結論から述べると当店のペアリングはパーフェクトでした。トマトの酸味とワインの酸味が溶け合います。ワインの旨味がトマトの滋味を引き出し口の中で新たなソースを創りだす。完璧という言葉以外の表現が見当たらないほどのマリアージュでした。
マンゴーのスープにモッツァレラチーズのアイスクリーム。これはちょっぴり残念賞。甘さがクドく、決してまずくはないのですが、序盤に食べるには抵抗のある一皿です。
メインは鳩。ここまで美しい鳩があるか?まさに芸術。このまま額にかけて一日中眺めていたいほどです。見た目が美しい料理は大体味も良いのが通説。小さいポーションながらも野趣あふれる凝縮感にクラクラします。
ワインはローヌより。鳩の強いクセにシラーのスパイシーな味わいがベストマッチ。ううん、当店のソムリエのセンスには目を見張るものがる。
料理に戻りますが、脇役である付け合わせまでが手抜きなしの見事な味わい。新鮮なイチヂクに最上の調理、ラヴィオリの詰め物はこれまた野性味溢れる鳩の挽肉。ソースも絶品。1滴たりとも無駄にするまいと、パンで全て拭い取りました。
チーズはコースに含まれてはいませんが、追加で注文。明細を見て驚き、30ユーロでした。世界の色々な高級店にお邪魔しましたが、チーズで30ユーロは最高値です。

しかもサービスしてくれた方があまり英語が得意でないらしく、限られた語彙での説明であったのが辛い。かといって、他の店員を捕まえて改めて説明を求めると彼女は傷つくだろうから、色々と悩んでしまった一時でした。
6種頂きましたが、とりわけバノンが素晴らしかったです。山羊乳の香りと心地よい酸味、絶妙な熟成によりトロトロとした舌触り。添え物のヘーゼルナッツも最高品質。オリーブのジャムも面白い取り合わせです。
チーズ用のパンは明治のコパンのピザ味のような味わいで、これ単体で美味しい。パクパクと勢い良く食べてしまい、デザートを前にしてうっかり満腹。
デザートのテーマはレモン。ガラス製のボウルのてっぺんに付いている葉っぱみたいなのも食べることができます。しかも単なる遊びのハッタリではなく程よい酸味と甘さが、手抜き無し。
デザートワインは変に甘ったるくなく、レモンのデザートにこれまた的確な調和。デザートワインをぴたりと併せてくるとは相当な手練である。
左上の丸っこいのはメレンゲにレモンシャーベット。レモンの形状をしたオブジェを2つに割ると、レモン味のパルフェがギッチギチに詰まっていました。表参道あたりのカフェであれば2,000円は請求できるレベルです。
もうこれ以上は食べれないとグッタリしていたところに小菓子が隊列を組んで目前に迫る。いつもであれば「全部くれ」と威勢が良いのですが、ギモーブ(マシュマロみたいなやつ)やキャラメルまで加えるととんでもないことになりそうだったので、他所では食べることができなさそうなモノのみをピックアップ。
12時から時計回りにレモンケーキ、チョコレート、ピスタチオ、フランボワーズ。ここに来てもレモン味のレベルの高さが光りました。当店のシェフおよびパティシエは酸味の魔術師に違いない。

全体的な評価としては素晴らしいの一言に尽きます。味、接客、雰囲気、全てにおいて世界トップクラス。ただ、ランチコースとしてはもう一皿欲しいところ。私はチーズを追加注文したので結果滴に満腹になりましたが、そうでなければやや物足りなさが残ったかもしれません。

次回は夜にフルラインナップで臨みたい。でも夜だと真っ暗で景色が見えないのかなあ。そうか、昼にフルラインナップで注文すればいいのか。



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