日本料理 「十二颯」 ヒルトン東京/西新宿


ヒルトン東京2Fの和食、じゅうにそう、と読みます。ここら一帯の旧地名「十二社」から取っているのかしら。
ランチセットの「楽」を注文。先付、サラダ、にぎり6貫に巻物、お椀というラインナップ。
ごま豆腐。むっちりとした弾力が噛むたびに楽しい。豆腐自体のゴマの風味は薄いですが、それを補って余りあるほどのゴマダレが秀逸です。
海藻サラダは普段食卓で食べる機会の少ない海藻がたっぷりで嬉しい。ただしドレッシングが大衆的というか、ファミレスのそれと大差ない味わいでもう少し日本料理屋としての矜持を楽しみたいところです。
ガリは生姜を丸ごと漬け込み、その場でスライスしてくれるもの。こういうタイプのガリが一番好き。
キンメダイ。愛すべき食材なのですが、期待していたほど脂が乗っておらず淡白な味わいでした。そういう意味で最初の1貫としては相応しいかもしれません。
赤身。シャリは赤酢です。鉄分が強くマグロ味の真骨頂。ただし、非常に上品なつくりでありシャリが小ぶりでネタも薄い。もう少しボリューム感のある握りのほうが私は好きです。
中トロ。赤身から脂へのグラデーションが美しく、赤身の旨味と脂の多幸感を同時に味わうことができます。エフェメラルな質感であり、舌の上であっという間に溶けて無くなる。
ホタテ。味は申し分ないのですが、やはりネタが小さく薄く、「鮨食ってるぞ!」感に乏しいのが残念。
ボタンエビ。これは素晴らしい。大きくネットリとした海老が一口ごとに口の中で躍動する。甲殻類特有の風味と甘味の余韻がいつまでも続き、至福の時。
イクラは標準的なイクラです。綺麗で非の打ちどころのない味わい。ただしやはりサイズが…。
一方で、鉄火巻のネタのボリューム感には満足です。シャリよりもネタのほうが体積が大きいのではあるまいか。海苔の香りも小気味良く、きっちりと満腹になることができました。
玉子はすごく普通です。最近の鮨屋の玉子はカステラのような食感であったりと工夫を凝らしていることが多いですが、当店のそれは極めて古典的かつ家庭的で、言うなればオカンの弁当の卵焼きと大差ありません。
赤だしは見事。下品になりがちなお椀ですが、赤味噌は控えめであり出汁を主体にしたスープであり、具材の量とのバランスも丁度良かったです。
小豆のアイスも心から美味しい。偏差値としてはデザートが最もレベルが高いかもしれません。

オペレーションについて。職人が少なく、個室やテーブル席のグループ客からの注文が入ると、彼らの鮨をバッチ処理することになるので、カウンター席の客はしばらく放って置かれます。カウンターの本領であるリズム感を楽しむことができません。まあこれは運に因る事が多いので、仕方が無いかもしれません。

税サ込で3,500円強。ホテルで食べる鮨としては許容範囲ですが、いわゆる鮨としては費用対効果が悪いです。これなら「はし田」や「すし通」のランチのほうが満足度が段違いに高いなあ。

ホテルというハッタリのきくハコで、それなりに空いていて予約ナシでもOKという意味で使い勝手は非常に良いです。空間や雰囲気を買うという目的で活用するのが吉でしょう。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。