La Vieille Fontaine/Avignon


オテル・ドゥロップ。1799年の開業以来、多くの著名人が投宿した老舗です。そのメインダイニングに今夜は予約を入れました。
La Vieille Fontaine。ホテルの中庭にテーブルを配置し、天気が良ければお外での食事です。室内にも当然席はあるのですが、誰も使用しておらずガランとしているのが不思議な感じ。
我々のテーブルは立派な木を望むことができる特等席。近くの小さな噴水の音とライトアップされた木々がディズニーランドでの食事を彷彿とさせます。
今夜はロゼで1本で通す。ジゴンダスのロゼを飲むのは初めて。イチゴのような芳香とその味わい。まさしくチャーミング。ハイスペック男子が居たら殴り飛ばされるかもしれません。
アミューズにエビ、グリーンレモン、アーティチョークど混ぜ混ぜしたもの。エビの味が強烈で美味。その他の工夫は感じられる。

茶色の塊はタマネギ。飴色にじっくりと磨き上げられたそれは固体のオニオンスープを食べているかのようです。

魚はおそらくカツオ。タタキのように表面を香ばしく仕上げており日本人好みの味わいです。

なのですが、店員の英語力が低いというか、そもそも飲食に対してそれほど情熱を感じられない身のこなしであり、「オニオン」「フィッシュ」など、そんなん言われんでもわかるわいというな説明しかしないのが気に入りませんでした。
「キャロット、クミン」の2単語。ううむ、確かにその通り。ただしニンジンの穀物感が大掛かりであり、まるでウサギになったかのような気分。そういう意味でパルムドールシェーブルドールのレベルには全く達しておらず、なるほどミシュラン無星なのも納得です。
「ゴーダチーズ、フィッシュエッグ」。貴様の語彙力は中学2年生か。よくよく見ると我々のテーブルを担当した店員は謎のミニスカをはいたゴリラ系彼女であり、「お客様にお食事を楽しんでいただこう」という姿勢が見当たらず、もしかしたら単なるバイトなのかもしれません。
試験管で料理を出されるとテンション下がるんだよね、とひとりごつと、「そういうことをイチイチ言うのやめたら?」と妻よりお叱りを受けました。だがしかし彼女が試験管を口にした数秒後、「ごめんなさい、あなたの予言が正しかったわ」とのコメント。つまりは単なるトマトジュースにビーツをすりおろしたものを加えただけであり、端的に言うと手の込んだ手抜きである。
妻の前菜は豆腐。ちなみに彼女が積極的にこれを注文したわけではなく、料理名や食材すら書かれていない白紙の4皿コースからの提供。妙なタプナードをまぶされており、これなら冷奴のほうがマシだろうなあと気の毒に思いながら彼女の難しい顔を眺める。
「ゴーダチーズ、ベジタブル」バカにしないでくれる!?知ってるわよそのくらい!!説明も説明であれば味も味である。これなら成城石井の気のきいたサラダのほうが10倍美味しい。
「シュリンプ」。この行間を読まなければならない接客ってほんとどうなんでしょう。しかめっ面をしながらシュリンプを口に運ぶと思いのほか旨い。「美味しいけれどそれはエビが美味しいだけであって料理としてはイマイチ」って顔してるわよ、との指摘を受けました。
ゴリラ系彼女が「セロリ・リゾット」だけ発して置いていった妻の一皿。「これは絶対にセロリじゃない。セロリの香りが一切しない!」とMK5だったので、ゴリラ系彼女ではなく他の責任感のありそうな男性に説明を求める。

すると確かにこれはセロリであり、米の替わりにクセを抜いたセロリのみじん切りを用いているとのこと。なるほど理解しました。しかしそのような台詞があるのであれば、開店前のミーティングで共有しておいて下さい。
パンはモソモソは全くダメ。セブンの山パンのほうがうまいっすー。
「フィッシュ、マッシュルーム」ううむ、ブリのような味わいの白身魚です。マッシュルームとは言いつつもおそらくはトランペット茸。野菜はチンゲンサイか?それにしても鑑識課のような食事にはもうウンザリ。
妻は「ビーツ」。そのまんまのビーツと、砕いたビーツらしいです。「一口食べる?」と言ってもらえたのですが遠慮します。それほど味の予想がつく料理です。それにしても料理のバリエーションだけは立派。そんなことせずに、コースを絞ってまずは美味しいものを作ることに専念すれば良いのに。
私の手元には「ソーセージ」。ほほう、それでそれで?え?それだけ?途端に家庭料理が出てきました。もしかして近所のモノプリ(スーパーマーケット)のデリで買ってきたのではあるまいか。それくらい普通のそれなりに美味しいソーセージでした。しかし、よくもまあこれを1皿として出せますよね。私が当レストランに仕事として関与していたら、矜持としてそんなこと絶対に許さないのだけれど。
「ポーク、ベリーデリケートポーク」わお!初めて形容詞が付きました!さぞや優美で繊細で上品で優雅な豚肉なのだろうと喜び勇んで飛びつくと、これが全くもって美味しくない。というか豚肉の味も、味付けすらも全く感じられません。

付け合せのラヴィオリの中身の肉はまあイケました。しかしただし生地が野暮ったい厚さで冷えきっており、これまた鈍器のような味わいです。得意気にトッピングされたリンゴも料理に全く貢献しておらず、久々まともなレストランで酷い料理を食べました。
妻のメインは「ラヴィオリ、フィグ(イチヂク)、シイタケ、バジルソース」と4単語と最長文ですおめでとう。私のラヴィオリと生地が同じなのか、これまた絶望した表情を見せる妻。辛い思いさせてごめんな。
「マッシュルームスープ」として恭しく妻の傍に置かれたのは泥水のような液体。妻が一口食べるやいなやスプーンを置き、「死ぬほどまずい」との一言。

さすがに興味を持って私も味見させて頂くと、お通夜のような味わいでした。土が付いたままのキノコを湯に一晩放り込んでおけばこのようなスープができるのか。考え方によっては漢方のような存在なのかもしれません。
チョコムースもシャトレーゼレベル。チョコソースはまさかハーシーズではあるまいな。
イチヂクになんのアイスだっけ?皿数だけは多いのでイチイチ覚えているのも面倒になっています僕。
フルーツどかーん。東横インの朝ごはんと大差なし。
小菓子については「マダムにはコレとコレとコレ、ムッシュにはコレとコレとコレ」と、謎の指定がありました。もう誰が何食べるとかどうでもいいじゃんそんなの、それよりも「コレ」が何なのかきちんと説明してくれよ。

全くもって酷い店でした。料理好きの専業主婦が食材費をケチって作った創作料理のような味わいです。素材も使い回しが多く、またこの食材か、という印象が永遠に続くディナーでした。

私はよく「海外で美味しいものばっかり食べていいですよね」と言われることが多いのですが、それは全くの誤解であり、今夜のような外れも多いので、平均すると海外の食事には満足できないほうが多いです。何なら毎日大戸屋を食べていたほうが全体としての満足度は高いことでしょう。

割合としては3の失敗と6の普通、1のグッド。その1の中に瞬間最大風速がとんでもない例外中の例外のようなレストランがあったりする。その快感に巡り遭うためには数多く打席に立たなければならないのです。皆さんが思うほど良いもんじゃない、レストラン巡りって。



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