Restaurant Des Teinturiers/Avignon


アヴィニョン城壁内の東側、若者が集まるカフェやビストロが多いタンチュリエ通り。
その角に当店はあります。地元産のトリュフを用いた料理が有名なRestaurant Des Teinturiers。
予約をしていなかったので念のためにオープンと同時に入店。さすがに人っ子一人おらず、「どこでも好きな席、座っていいわよ~」と気のいいおばちゃんの接客が心地よい。
印象的な黒板脇の特等席を選択。
自由に書いて良いとのことだったので、3センチ四方程の爪痕を残しておきました。
お通しは紫芋のチップス。自家製かどうかは不明ですが、いずれにせよ手を伸ばすと止まらない味わいで、ものの数分で食べ切ってしまいました。
シャトー・ヌフ・デュ・パプのハーフボトルは25ユーロ、フルボトルは48ユーロ。なんて良心的な価格設定。それならばと同じ銘柄の白赤をハーフで1本づつ注文です。

白は樽がしっかりときいていてバターのような香り。どっしりとしたボリューム感がありながらも複雑。単なる巨乳キャラと思いきや頭の回転が速く教養もある小池栄子のようなワインです。
フレッシュな山羊乳製チーズとほうれん草のパイ。滋味溢れるほうれん草の大地の味に、トロトロかつ爽やかなチーズが行き来する。松の実の食感もついもう一口を呼び起こす楽しい逸品です。

付け合せはトマトバジルアイスクリーム。これは温度が極端に低く舌がバカになってしまい、味を丁寧に確かめることができませんでした。

奥の何でもない野菜が殊の外美味。マスタードの甘味と適度な酸味が相俟って、今回の旅行のベストサラダ賞を贈呈します。
カニの身をカレーソースで和え、生春巻きの皮のようなものでラッピングしたもの。これは純粋なフランス料理というよりも、東方的なエスプリを感じさせる一皿です。

グラニースミスアップルがどこかに入っているらしいのですが、存在感はなく埋没。一方で、ミントの迫力は過剰であり、苦味がやや残ってカニの旨味を邪魔しているように感じました。マンゴーソースは既成品なのか、どぎつい甘さでかけないほうが私は好き。
パンは普通です。これは非難の「普通」でなく賞賛の「普通」。普通に美味しいです。それにしても街中でバゲットを持ち歩いている人を良く見かける。日本の1,000倍ぐらいの確率でパンを持っている人に遭遇します。日本のコンビニぐらいの勢いでパン屋がある。日本人がご飯を炊くような感覚でバゲットを買うんでしょうな。
こちらは赤。ラズベリーとブルーベリーの中間のベリー。白と同じく樽のしっかりした造りであり、コーヒーのような芳香も感じられます。タンニンもしっかりと主張してあり素直に美味しい1本。

やはり気候は大事ですね。私はボルドータイプの赤が好きだと信じていたのに、コート・ダジュールの暑さの中では一切飲む気がしませんでした。また、料理についても所謂ソース主体のフレンチは高気温帯ではさほどそそられることはなく、新鮮な野菜をオリーブオイルとニンニクで味付けたものを白またはロゼで流し込みたい気分に駆られていました。気候や体調は料理にとって非常に重要なファクターであることを再認識。
出ましたスペシャリテのフォアグラのラヴィオリ、トリュフクリームソース。ソースの中にこれでもかという程のみじん切りのトリュフが溶け込んでおり、仕上げにサマートリュフのスライス。見た目はどんくさい料理かもしれませんが、一口ごとに必ずトリュフが入っており、味は確かです。
フォアグラの脂にクリームとバターのコクを重ね合わせる足し算の料理。ヤワな消化器官の方は確実に胸焼けすることでしょう。もちろん私にとっては天上の美味。敬愛すべき珍味の塊です。
チーズは左からクロミエ、ブリア・サヴァラン、リヴァロと説明を受けました。クロミエとリヴァロはオーケイ。問題はブリア・サヴァラン。これって外皮ありましたっけ?
不安になってもうひとりの店員に確認すると、丁寧に絵に書いて説明して下さいました。なるほど、これがブリア・サヴァランのアフィネ(熟成タイプ)というものなのかもしれません。疑ってすまんかった。

それでもやっぱりブリア・サヴァランはフレッシュなものが好きだなあ。ジャムとかドライフルーツを添えて、チーズケーキのように甘く食べるのが良いのです。
デザートはチョコレートケーキに卵のカスタードクリーム。派手さはなく基本に満ち溢れた一皿ですが、文句の付け所が一切ない味わいで大満足でした。

そうそう、食事中に店のおばちゃんがやたらと私に話しかけ、帰り際には力の限り握手をし、料理に対するコメントを求められました。うっかりハグしてホッペにチュウしそうな勢いである。「世界のどこに行っても人気者になれるあなたの才能、尊敬するわ」と半分は呆れ顔、もう半分は誇らしげな妻の表情。



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