#肉といえば松田 奈良本店/大和八木(奈良)

大和八木駅出てすぐに移転した「#肉といえば松田 奈良本店」。地元の銘柄牛「大和牛」を中心にコースを組み立てる肉割烹であり、ミシュランの奈良版にも掲載されています。SAPIXなどが入居していそうな健全なビルの2階に入居しているのが面白い。
店内も鈍く輝くグレーを基調としたスタイリッシュな空間であり、広尾の「Ode(オード)」を思い出しました。カウンター10席強の一斉スタート形式であり、半個室(?)のテーブル席は違った時間も指定できるようです(詳しいことは知らん)。
しっかりと量が入ったプレミアムモルツが800円と、この手のレストランとしては良心的な価格設定です。ワインの品揃えも豊富であり、ときたま謎にお値打ちなボトルがあるのでワインリストを熟読しましょう。
最初にこの日の出場選手をプレゼンテーション。「大和牛」とは鎌倉時代から続く歴史ある和牛だそうで、それを店内の熟成庫で寝かせたのち、ベストなタイミングで提供するとのことです。
まずはスープ。長崎県産の新玉ねぎを用いており、強烈な甘さがジンワリと身体に沁みていきます。
トロタク。もちろんマグロではなくビーフなのですが、その差がわからなくなるほどエレガントな味覚を誇る牛肉でした。
イチボを自家製の生ハムに。じっとりとした旨味に舌鼓。お出汁で炊いた(?)ホワイトアスパラガスに卵黄のソースもきちんと美味しい。
こちらはお肉を昆布締めにしました。ウニもトッピングされており、先のトロタクと同様に海産物を食べているかと錯覚する楽しさがあります。
ランプのローストビーフ。王道の味わいであり、「ローストビーフの店 Watanabe」のような塊系ローストビーフとはまた違った楽しみがあります。バルサミコ主体のソースには山椒もきいており、大人の味わい。
熟成したタンモトを焼きました。なるほど奥行きのある味わいであり、噛みしめるたびに旨味が重層的に滲み出てきます。
こちらはザブトンをタレ焼きで。ブジュブジュと官能的な食感をたたえながら甘い甘い白米とピッタリくっつきます。その辺の焼肉屋でオンザライスするのとはダンチの美味しさです。
地元の「寺田農園」で生産されるハーブを多用したサラダ。心地よい苦みが肉疲れした味蕾をリセットしてくれます。大和牛もそうですが、やはり身土不二という考え方は食事の基本に思えてきました。
餃子には大和牛の挽肉と春キャベツがたっぷり。春キャベツが活躍しているのか、これまでの熟した肉の旨味から一転、甘味が心地よいひと品でした。
「古都華(ことか)」という、奈良のブランドいちごを用いたぬたあえ。雑な氷菓でお茶を濁すことは無く、何とも丁寧なお口直しです。
ヘレ肉をカツサンドにしました。みずみずしい肉体をサッパリと揚げ、バターが豊かなブリオッシュ調のパンで挟み込む美味しさといったらない。所々に奈良漬けの食感を感じるのが洒落ています。
ステーキはランプの部分を。これまでは創意工夫に富んだ料理が続きましたが、メインは直球勝負で臨むのは好感が持てます。トリュフの取り扱いも上品。
こちらはすき焼き。大和牛のサーロインを用いており脂の甘味がたっぷり。濃厚な卵黄のソースに凝縮感のあるシイタケなど、すき焼きというよりも別の言葉で表現したほうが良い、新たな料理かもしれません。
炊き込みご飯もあわせてお出し頂けます。新玉ねぎの甘味とクレソンの青っぽさが程よく溶け合い。肉と合わせずともこのまま食べてとても美味しい。
〆の食事は3種からの選択制だったので、私はしぐれ煮を選択。この日の集大成というべき肉の甘味と旨味が詰まった逸品です。
連れはカレーを選択。ゴロリとした肉塊が放り込まれており、何とも気前の良いカレーです。
デザートはミルク主体のジェラートに、桜と餡子の風味を組み込みます。欧米系のコース料理ほどの派手さはありませんが、堅実に美味しいひと品でした。あと併せて出される大和茶がべらぼうに旨いのでお楽しみに。
以上のコース料理が12,000円。港区や銀座であれば3-4万円は請求されてもおかしくない質および量であり、旅費を加味しても大満足のディナーでした。前述の通りお酒も高くない(選択肢がある)ので、気持ちよく酔っ払うことができます。

これは良いお店を見つけました。「#ヒロキヤ恵比寿」もそうですが、店名からチャラいお店だと食わず嫌いしてしまう勢がそれなりにいそうなのが勿体ない。場所はともかく食体験として必ず満足できるので、奈良を訪れる機会がある方は是非どうぞ。

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