ソンブルイユ (SOMBREUIL)/飯田橋

「ソンブルイユは披露宴の印象が強いけれど、平日夜にきちんとしたディナーを注文すればかなり美味しい」という噂を聞きつけ、早速予約を入れました。場所は飯田橋から神楽坂と反対方面に歩いて7-8分です。

さすがはレストランウェディングが主戦場だけあって豪華な外観。一方でラボエム的というか何と言うか、景観にそぐわない嘘っぽいテクスチャーでもあり、何か特別な事情で利用するのであれば事前に下見しておいたほうが良いかもしれません。
千代田区によくぞこの空間を、と驚嘆するほどの広い館内。我々はお庭に面したダイニングにご案内頂けました。ディナーで訪れたので真っ暗なのが残念。ランチにお邪魔したほうが色々と映えるかもしれません。ちなみに店名はバラの品種のひとつであり、実際に当館のお庭にも咲いています。
ワインはお料理に合わせたペアリングでお願いしました。まさに王道といった組み合わせであり、好みが分かれることはないでしょう。量はちょっと少な目だったかな。
アミューズはサクっと軽い生地にサーモンをトッピング。食欲に火をつけるに的確な味覚です。
続いてオマール海老と天使海老のサラダ。この海老の種類を織り交ぜるアイデアは良いですね。オマール海老は間違いなく美味しいのですが量が多いと食べ疲れるきらいがあるため、天使海老の相対的に軽やかな味覚の座りが良かった。ソース(ドレッシング?)の味覚も複雑で、サラダと呼ぶには贅沢すぎるひと皿です。
パンは3種用意され、いずれも手が込んでいます。バターやオリーブオイルもたっぷり用意されており、当館の気前の良さが垣間見えました。
ビーツのムースとコンソメのジュレ。旨味が強く、これを美味しくないというフランス料理愛好家は存在しないでしょう。一方で、器が食べづらく溢しそうになるので神経を使いました。
天然のヒラメをカダイフで巻きました。この料理はべらぼうに美味しいですねえ。カダイフの食感に負けないヒラメの重量感。ソースには柑橘の風味もきいており、どこか東南アジア調のテイストなのも面白い。この料理、バンケットでも出るんかな。だとしたら天晴れである。
お口直しのグラニテ。並のフランス料理店はシンプルなレモンの氷菓でお茶を濁すことが多いですが、当館はシャンパーニュを用いており、キールロワイヤル調に仕上げるなど手が込んでいます。
メインは牛サーロイン。見目麗しいプレゼンテーションであり、思わず歓声が上がります。最近は値の張る和牛を焼いただけで大いばり(場面でトリュフやキャビア、ウニなどもトッピングされたりする)の幼稚な飲食店が増えて来ましたが、当店は素材だけを自慢するのではなく、野菜やソースもこねくり回して芸術とも言えるひと皿に仕上げています。これがフランス料理の神髄であり、フランス料理とはつまりこういうことだと私は思う。
デザートひと皿目はブランマンジェにヨーグルトのアイス。オーソドックスな味覚ですが素直に美味しい。泡状にしたシャルトリューズのクセっ気がお洒落です。
メインのデザートは立体的で複雑。球体を割れば軽い口当たりながら濃厚なショコラがあふれ出て来、ここ最近で食べた甘味としては最も記憶に残りました。キャラメルのソースも直線的で美味しい。
お茶菓子はワゴンサービスでお好きなものをお好きなだけ。先のデザートから当店はショコラだと判断し、全種類のショコラとショコラ味のカヌレを頂き、その選択は間違っていなかったと思わず目尻が下がります。
以上を食べ、ワインのペアリングをつけて税サ込で2.6万円。変な表現ですが、ロブションの3分の1の値段で済み、これはちょっと信じがたい費用対効果です。空間はロマンチックでサービスもパーフェクト。これぞグランメゾンというべきレストランであり、当店の予約がいつでも取れて、港区のバカっぽいカウンターフレンチが予約困難なのは東京の七不思議と言えるでしょう。

ちなみに宴会料理にしては凝りすぎでレベルが高すぎるので、披露宴での利用を考えている方は試食会などに参加し、どういう料理が出るのかをきちんと確認しておいたほうが良いでしょう。そんな心配をしてしまうほど満足したディナーでした。

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