ラチェルバ(LACERBA)/北新地(大阪)

北新地は新ダイビルの2階レストランフロアに入居する「ラチェルバ(LACERBA)」。ミシュランや食べログはノーマークで、ゴエミヨだけが掲載しているという変わり種のお店。メディアでは「イノベーティブ・フュージョン」と紹介されることが多いですが、新ダイビルの看板には「イタリアン」と明記されていました。
店内はカウンターが6席にテーブル席がいくつかの丁度良いサイズ感です。厨房は全く隔絶されていて料理人の数を把握することはできず、ホールにサービスが1人という陣容です。

藤田政昭シェフは関西大学を卒業後、サラリーマンを経た後に料理の世界へと転向した変わり種。大阪のイタリアンレストランで経験を積んだ後イタリアへと渡り、帰国後も関西のイタリアンレストランで活躍した後に独立を果たしました。
飲み物はちょっと方向性がわからなかったですね。ワイン5杯セット的なプランをお願いしたのですが皿数と合っておらず追加で注文する必要があり、またそのラインナップの殆どがフランスワインであったりと、あまり哲学を感じることはできませんでした。
アミューズの手が込んでいて、鶏のリエットにカボチャのドーナッツ、フォアグラのタルトといずれもレベルが高い。ってあれ?何だかとってもフランス料理的な滑り出しです。
剣先イカのタルタルにホタテとカリフラワーのムース。いずれも素材の味が濃く、キャビアで上手く塩気を加味しています。ってあれ?やっぱりフランス料理っぽいぞ?
タイを軽く炙った上でソースはチーズだったっけな?上質な素材にセンス溢れる調味であり美味。「シチリア風」と称してピスタチオのペーストをトッピングするのはご愛敬。
菊芋のフラン。菊芋の土っぽい風味にカニの旨味が良く合います。フランとするだけでなく色々な調理法で菊芋を表現しており、様々な食感を楽しむことができました。
アナゴのフリット。おおー、こんなにキュートなアナゴ料理は見たことがありません。アナゴそのものの美味しさはもちろんのこと、多種多様な野菜の使途に加え説得力のあるソース使いなど、やはりフランス料理的なニュアンスを感じました。
ついにパスタが出て来ました。具材は牛のハラミにラディッキオで赤ワインで上手く煮込んでいます。麺量少な目味濃いめでありワインの進む炭水化物です。
メインは鹿児島の黒豚。丁寧に調理されており素直に美味しい。白眉はシイタケで、凝縮感のある火入れに濃厚な調味と、シイタケが嫌いな人に食べさせて感想を聴取したいお気持ちです。
デザートに移ります。こちらはきな粉を主体としたジェラートであり、黒ビールのアルコール分を飛ばした工夫を仕込んでいる、意欲的な甘味でした。
メインのデザートは栗が主軸。栗そのものの味覚を楽しみつつ、プリンの骨格のある味わいで全体を整えました。
ハーブティーで〆。ごちそうさまでした。以上を食べ、ワイン5杯セットにいくらか追加して、水やら税サやらでひとり3万円弱といったところ。いずれも上質な素材を用いた上で繊細な調理を施しており、納得の食後感です。

ただ、正直なところ何料理かは判然とせず、かといって何料理でもなくオレの料理だ!と言うほどの個性は感じず、何とも座りの悪い印象を受けました。ワインについての哲学の無さについては既に述べた。

加えてサービス料を12%を取る割にその根拠は薄弱で、色々とハテナが浮かんだディナーでした。料理が美味しいのは間違いないのですが、色々と議論の余地のあるレストランに感じました。

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