中華 知花(CHIBANA)/松山(那覇)

沖縄きっての歓楽街、松山にオープンした「中華 知花(CHIBANA)」。沖縄には気軽な中華料理店は多いのですが、いわゆる高級中華は珍しく、ホテルを除いては当店と絶対に許せない「姚姚中華廣場(ヤオヤオ)」ぐらいしか存じ上げません。
店内はカウンターが8席のみ。松山はすぐそこなので、ウォータービジネスの同伴客が多く、客層については思うところがありました。心を乱されたくない方は多数派を握る人数で訪れたほうが良いでしょう。それが民主主義というものです。

知花治樹シェフは沖縄県出身。東京の「目黒雅叙園」や「飄香(ピャオシャン)」、「芝蘭(チーラン)」等で腕を磨き、地元に戻って当店を開業。
瓶ビールが990円と高く、場所柄仕方がない面もありますが、強気の価格設定です。中華料理店としてはワインの品揃えが豊富な点が今風です。
前菜は牡蠣にエビにチャーシューなどなど。いずれも味が濃くお酒が進みます。ど真ん中の海老の紹興酒漬け(?)が絶品で、小さじにのったクリームチーズがタレに良く合います。
よだれ鶏に牛肉。いたずらに辛いわけでなくソースに奥行きが感じられます。鶏肉のカットも大きめで、ムシャムシャと食べ応えがありました。
残ったソースに茹でたての水餃子を投入。豊富な肉汁にモチモチとした皮。そのままで美味しいのに先のソースが加わり最強オブ最強です。
フカヒレはカニミソのソースで。これはもう、どうやったって美味しいですね。個人的には土っぽい風味の活きたカリフラワーに心を奪われました。
イワシの春巻き。イワシのメタリックな味わいを香り高くバリっと揚げ切り、頑強な旨さです。脇に添えられた大根餅も上品な美味しさ。
アグー豚の黒酢酢豚。豚肉の甘味とキンカンの甘味が溶け合い美味しい。黒酢のソースも鷹揚な味わいであり、お餅に塗りたくって余すところなく食べ尽くしました。
いちごシャーベット。滑らかな口当たりで美味。なのですが、濃厚すぎる面もあり、これではお口直しとして機能しないおそれもあります。
イラブチャーの白身魚の香り蒸し。あのイラブチャーがこんなに上品な料理に化けて出てくるとは胸熱。ソース(?)の塩気も心地よく、今すぐにでも白米に飛びつきたい気分です。
火鍋で本部牛とラム肉を頂きます。火鍋と言っても全然辛くなく、複合的な旨味の奥ゆかしさを楽しむ逸品。この料理だけスピンアウトして火鍋屋として営業するのも面白いかもしれません。
麻婆白子。豆腐もそうですが、白子もたっぷり入っており、見た目からは考えられないほどクリーミーな味わいです。辛さのレベルも指定することができ、辛味を苦手とする方でも楽しめることでしょう。
麻婆には白米。目の前で炊かれたばかりであり、先の麻婆と合わせて美味しくないわけがありません。
お腹に余裕があればということで、汁なし担々麺をお出し頂けました。モチモチとした麺で美味しい。肉は雑なミンチではなく恐らく手切りであり、高級中華料理店たる矜持を感じます。
デザートは杏仁豆腐に紅芋の胡麻団子。やはり目の前での揚げたてアツアツであり、胡麻の香ばしさとイモの上品な甘さを楽しみます。

お会計はひとりあたり1.5万円。沖縄での夕食としては思いのほか高くつきましたが、料理だけなら1.1万円であり、同クオリティのコース料理を東京で食べることを考えれば割安です。那覇では珍しい業態なので、同伴客を中心にヒットしそう。そのため冒頭記した通り、強すぎる香水の匂いに心を乱されたくない方は多数派を握る人数で訪れましょう。何なら貸し切りだ。

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沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。