割烹 梅津(うめづ)/祇園(京都)

祇園の中心地からは少し離れた場所にある「割烹 梅津(うめづ)」。タクシーも通れないような細い細い路地の奥にあり、誰かに連れて来られない限りは物理的にも精神的にもアクセスが難しいお店です。
実直な割烹料理店然とした誂えで、カウンターは7-8席といったところでしょうか。2階には個室もあるようですが、やはり当店は少人数で訪れカウンター席を陣取ったほうが楽しい。

梅津直人シェフは出身は東京ながら高校卒業後はずっと京都で料理といった珍しい経歴。祇園の「なか川」の料理長を務めたのち、当店を開業。高級な日本料理店にありがちな高圧的な態度は1ミリもなく、女将さん含めて家族的な居心地の良い接客です。
瓶ビールは千円を切り、日本酒も1合千円かそこらです。料理の価格に比べると酒の値付けは安く、このマインドはきっと店主も酒飲みに違いありません。
お付きだしとしてホタルイカ。ホタルイカの旨味とソースの酸味が上手く調和し、さっそく日本酒を注文しました。
梅の茶碗蒸し。ごくごくシンプルなものですが、その温かさがジンワリと内臓を温めていき、私アイドリング完了しました。
当店はコース料理もありますが、私はアラカルトでお願いし、まずはお造りを盛り合わせで頂きました。手前からタコ、剣先イカ、サヨリ、アジ、中トロ。合わせて酒をクイ。仕事あがりの至福のひとときです。
鴨ロースが美味しい。私はフランス料理愛好家として鴨を食べる機会は人よりも多いほうなので、きっと貴方も美味しいと感じるでしょう、私が保証します。量もたっぷりだ。
タコやわらか煮。クンニャリとした歯ざわりにタコ特有の旨味がベストマッチ。思わず酒が進み、白ごはんすら欲しくなる旨味の洪水でした。
焼き物は黒ムツ味噌漬け。ジュワジュワと脂たっぷりのお魚にベッタリと味噌を撫でつけジュジュジュと炙ります。ううむ、こちらも酒の進む旨さです。ほんの数口といったサイズ感であり、美味しいだけにもっと量を食べたかった。
牛カツ。そのまま生で食べても旨そうな牛肉をサラっと高温で揚げ、レアレアの状態で楽しみます。先のお魚に比べると一転して攻めたボリューム感であり、ぐわー旨い肉食ったなあと多幸感で満たされるひと品でした。そういえば以前ツイッタラーに「牛カツという呼称は間違いで正しくはビフカツ」みたいに絡まれたことがあるのですが、そんなこと言ってるから君は女の子にモテないんだぞと気の毒に思いました。
〆のお食事に丸煮麺を注文。京都で「丸」と言えばスッポンのことであり、つまりこちらはスッポンのスープと肉を用いた麺料理です。どろりとした粘性を感じるスープの旨味がどこまでも濃く実に芳醇。肉そのものもムキムキな筋肉質で、ある意味で心臓に悪い美味しさでした。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は2万円。もう数千円安いと有難いのですが、まさに京都といった店構えの割烹で好きなものを好きなだけ食べたのだから、リーズナブルと言えばリーズナブルです。なにより常連も一見客も分け隔てなく接してくれる空気感や、本当にこの店が好きな人々が集まるという客筋の良さが素晴らしいですね。こういうお店の常連になれる方は本当にかっこいいと心から思いました。

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