すし初/湯島


これまで何度か当店における鮨と日本酒のマリアージュの妙についてご紹介してきましたが、ついに見つかってしまいました。
ワインスクール最大手、アカデミー・デュ・ヴァン。その「レストラン・コース」における『実践マリアージュ お寿司と日本酒』というテーマにつき、当店の若旦那が講座を受け持つこととなり、即日完売のキャンセル待ちというジャニーズ状態。フフフ、私の審美眼は確かであった。
さて本日は大学時代の仲間5人でカウンターをL字に陣取ります。日本酒が自慢の当店ですが、夏の暑さには敵いません。喉が渇いていたので立て続けに2杯も飲んでしまいました。
ビールには枝豆。「日本で5本の指に入る生産者のもの」とのこと。なるほど豆の味わいが確かであり、芯の在る美味しさです。
トマトのすり流し。和風ガスパチョの趣であり、トマトの爽やかな酸味で足取りが軽くなります。
大ぶりな茄子は見事に水分を湛え、この上なくジューシーです。味噌の少し焦げた香りが食欲を引きたて、その旨味が酒を呼ぶ。
ここから本題。食事と日本酒のマリアージュの始まり始まり。ちなみに今夜は数ヶ月前よりバンコクで奮闘している妙にマバタキが多い男(以下マバタキ)の一時帰国祝いです。祝い、と言っても会をアレンジしたのはマバタキ自身なんだけど。
軽めのお刺身軍団。鯛が秀逸。ムチムチとした歯ごたえに品の良い旨味。
「ああ、美味しいなあ、赴任前ぶりに刺身を食べましたよ。バンコクにいると生魚を食べる気がしなくって。日本人経営の鮨屋もあるんですけど、高い割に美味しくないですねえ」と、マバタキ。バンコクで鮨しっかり食べとるやないか、という無粋なツッコミはあえて執行しない。
マグロにカツオ。マグロの美味しさは当然として、カツオの迫力がアグレッシブで行動的。大ぶりにカットされたマッチョな肉質。食べ進めるうちにカラダからエネルギーが漲ってくるような錯覚をおぼえるほどの印象。
タイの煮付けは塩系でサッパリと。頭頂部のゼラチン質の美味しさと言ったらない。貝特有の旨味も程よいアクセントであり、一滴も余すことなく飲みきりました。
「いやあ、魚料理なんて食べたの、半年振りですよ」ダウト。私は彼と共にスブリムにお邪魔し、目の前でヒラメを食べているところを目撃している。いちいち大袈裟な男でる。
鰯の西京焼き。丸々と太った脂たっぷりの鰯に西京味噌で旨味の上塗り。欲望だけでできているような味わいであり、本日一番のお皿です。
4番サード而今。やはり当店で飲む酒と言えばコチラです。「いやあ、日本酒なんて飲むの、半年振りですよ。バンコクにはいわゆるスタンダードな日本酒しかなくて、どうにも味気ないですね」バンコクでしっかり飲んどるやないか、という無粋なツッコミはあえては執行しない。
にぎりに入ります。コハダから。品のある陶器を見るような輝きであり、柔らかい酢の酸味が消化器官をリセットしてくれます。
アジ。厚みのあるスライスで歯ごたえを楽しむことができる逸品。「いやあ、鮨なんて食べるの、半年振りですよ」以下略。
赤身はヅケにて。旨味が増したマグロはそれ単体で酒の消費量を加速させます。
カウンターの端に見知った顔がいたので声をかけ、一緒に飲むことに。「わ!嬉しい!交ぜてもらいたいなって、遠くから眺めていたんですけど、図々しいかもと思って遠慮してたんです」鮨屋へひとりで飲み食いできる女の子って格好いい。
イクラ。強めに漬かっており、先のマグロに輪をかけて旨味が強い。ここまでパワフルな味覚に耐えうる日本酒といえば、、、
ハード・コアな玉櫻。このエチケットを飲むのは初めてであり、こなき的な方向性ですねえと知ったようなコメントを述べると、「よくそんなにニッチな日本酒知ってますねえ」と若旦那に褒められました。エヘヘ。
アナゴも引き続き旨味が強く、ヅケ・イクラ・アナゴの3連単は外国人の味覚にも受けるかもしれません。もちろん先の日本酒にもぴったり。今夜は気前の良い商社マンとの2人飲みというわけではなく、趣味嗜好の異なる5人での参加であるため、にぎりはこのあたりで自重しておきます。
「○○さん(私の名)、早くタイに遊びに来てくださいよ。みんな首を長くして待っているんですよ。メイドが身の回りのこと全部やってくれるから、ウチ泊まって下さいよ。運転手もいるから、便利ですよ」なぜかバンコクに住む友人が多い私。近いしいつでも行けるやと思っているのと、何かの用事でそのうち行く機会があるだろうとタカを括っているため、いきおい優先度は低くなってしまうのです。

「え!?バンコクにお住まいなんですか?あたし、バンコクでアナウンサーやってるタイ人が親友で、よく遊びに行くんです!」と謎の人脈を披露する独り飲み女子。ここからはバンコク議論に花が咲く。ここからはタイのお二人に任せてお先に失礼することします。
ところで私はかなり涙もろい人間なのですが、その中で最も泣いた小説はバンコクが舞台のコチラです。でもまあ、賛否両論の激しい物語ですね。男性陣は割と好きな方が多い気がするのですが、女性からの印象は極めて悪い。

ただ、私の女友達は「あたしがちょうど不倫してるときに読んだから超のめりこんだ」と仰っていました。



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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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