新華(しんか)/乃木坂

中華の鉄人・ムッシュ脇屋友詞より薫陶を受け、日本のヌーベルシノワの第一線で活躍を続ける新山重治シェフが、そのキャリアの集大成としてオープンした「新華(しんか)」。性加害に定評のあるジャニーズ事務所のすぐそばです。
20席程度の小さなお店であり、我々は個室にご案内頂けました。ダイニングエリアとは動線が完全に分離されており、秘密の会合にピッタリです。
なのですが、土地柄含めて酒代はバリ高いですねえ。ウリはお食事に合わせたペアリングなのですがコース料金に迫る価格設定であり、思わず腰が引けてしまいます。けっきょく我々は泡に続いて手頃なボトルを楽しむこととしました。
アミューズは中華風のフラン。ジュンサイを多用するなど面白い試みで、今後の展開に期待が持てます。
「華の彩り」と称した前菜。何とも見目麗しいひと皿であり、上質な食材が百花繚乱。案内文には気が遠くなるほどの素材名が羅列されており、それでいて全体としてまとまりがある。本日一番のお皿でした。
ぶっとびスープ。先日、台北を訪れた際に食べ損ねた有名料理だけに私嬉しい。「あまりの美味しさにお坊さんがぶっとんでしまった」という逸話が目を引く料理ですが、当店のそれはどちらかというと滋味あふれる味わいであり、五臓六腑が活性化する旨さです。
ホタテ料理につき、ホタテそのものが美味しいのは当然として、長ネギやニンニクの香りが立っており、それらの風味を春雨がジンワリと受け止め、しみじみ系の美味しさです。
フカヒレの姿煮込み。シェフは恵比寿の「筑紫樓」で腕を振るっていたこともありフカヒレ料理はお手の物。上品な昆布の旨味が支配的で、コッテリしたソースになりがちなフカヒレ料理をエレガントに仕上げています。
ポークとナスミルフィーユに。しっとりと唇に吸い付く口当たりであり、ぷっくリップです。残ったタレには麺とパクチー、砕いたピスタチオを追加してくれ、その四川風のソースを余すところなく楽しむことができます。
〆の食事には香港式の土鍋ご飯。おこげをカリッカリに仕上げてくれ、いわゆるライスの食感ではなく、また別の料理と呼称しても良いかもしれません。奄美産のホロホロ鶏の上品な味わいも見逃せません。
デザートはマンゴー大特集。そのまま・プリン・ソルベと多様な表情を楽しむことができ、濃厚にして落ち着きのあるスイーツ事情でした。
小菓子と中国の新茶(?)でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上の「新華の初夏コース」が2万円。エレガントな料理に上品な客あしらいと、ラグジュアリー系チャイニーズとしては申し分のない食体験でした。

冒頭に記した通り、個室への動線や人通りの少なさから秘密の会食にも活躍しそう。ジャンルは異なるもののお店の雰囲気は斜向かいの「乃木坂しん」にも似ており、つまるところ私はこういった居心地の良いレストランを好むのかもしれません。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたいかた必読の書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。客に日本人は殆どいないのですが、コロナ禍で海外に行けない今、ある意味では海外旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。