La Cime(ラシーム)/本町(大阪)

本町駅もしくは堺筋本町駅から徒歩で5~6分に位置する「La Cime(ラシーム)」。店名は「頂上」という意味のフランス語であり、その名の通り大阪でも屈指の実力店と評されています。ミシュランでは2ツ星を獲得、アジアのベストレストラン50では8位にランクされました。
黒を基調としたスタイリッシュな店内(写真はミシュラン公式ウェブサイトより)。サービスの制服まで黒に統一されており、「Hajime(ハジメ)」に雰囲気が似ています。テーブル数は4~5卓で、席数は20強といったところ。個室もありますが、ダイニングエリアだとサービス料は0%のところ個室だと15%とのこと。

高田裕介シェフは奄美大島出身。大阪で料理人としてのキャリアをスタートさせ、渡仏後は「タイユヴァン」や「ムーリス」といった最高峰のレストランで腕を磨き、2010年に当店をオープン。
ワインの値付けが良心的。一方でアルコールのペアリングは結構高く、加えて日本酒が多く含まれそうだったので、ワインラヴァーの我々はボトルで組み立てることにしました。
名刺代わりにスペシャリテの「ブーダンドック」。竹炭を用いた黒いコーンドッグ的な食べ物で、中にはブーダン・ノワールが詰まっている。血生臭さは一切なく、仄かにジャンキーな味わいでシャンパーニュが進みます。
豆腐ようをビーツで包みます。面白い組み合わせであり、恐らく豆腐ようをビーツで包んだ人物はシェフが世界で初めてでしょう。ブーダン・ノワール同様にクセは排除されており、キャラの濃い食材の使い方が上手いお店です。
じっとりと火を入れたリンゴを湯葉と共に。カリカリとしていますが味は湯葉そのものであり、リンゴの甘味も結構強く、デザートとして食べても面白いかもしれません。
大阪と言えば阪神タイガース、加えて今年は寅年ということで、虎に見立てたひと皿です。食材は虎ではなく舌平目。ムチっと凝縮感のあるタッチであり、酸味のきいたソースと共に清々しい味わい。ヤマメの卵が食感にリズムを与えます。
カブの水キムチ。フランス料理店でこのような料理を出すのはやはり世界初であり、中にはナマコが敷かれており2度びっくり。なのですが、決して企画モノというわけではなく、きちんと料理として成立している完成度でした。
山羊乳を用いて作られたヨーグルトを揚げたてのチュロスと共に頂きます。パースニップ(ニンジンみたいなやつ)の土臭さも上手くマッチしており、お凌ぎ的な膨らみを感じました。
トリュフの裏側には同等に薄くスライスされたカジキのスモークが。トリュフの官能的な香りと薫香の食欲を刺激する香りが組み合わさり、シャキシャキとしたサラダ菜の食感にマッチします。カツオの風味をきかせた緑色のソースも興味深い味覚です。
バジルの下には牡蠣、さらに底には牛骨髄から取った出汁のフラン(茶碗蒸し)。牡蠣だけでまず美味しく、続いて牛の風味が強烈に濃い。海と陸の邂逅なのですが不思議とトンマナは整合しており、小さいながらも存在感のあるひと品です。
神戸ビーフの中には牛の生ハムに舞茸(だっけ?)。これはもう、議論の余地なく旨いですねえ。薄切り神戸牛のシルキータッチに生ハムの旨味。この料理を美味しくないと思う人は人に非ず。
付け合わせ(?)にシュークルートが詰まったキャベツ巻き(?)なのですが、アルザスの人に食べさせてもこれが自分たちの郷土料理だと気づく人はいないでしょう。それほど別次元の美味なる球体でした。
まだまだ小皿が色々出て来ます。手前は金時ニンジンと柿が薄く重なり合ったもの。左はアンキモで、雑味なくクリーミィで1リットルは食べれそうな滑らかなタッチ、上のネギは程よくカレー風味で親しみやすい味覚です。私は少量多皿コースというものをあまり好まないのですが、なるほど当店ほどの完成度であれば全く楽しめるじゃないか、と考えるきっかけになりました。
白レーズンの泡泡にトレビス。ブドウがこんな風な料理になるとは興味深い。奥はトレビスをまとったイワシであり、程よく苦味がきいて大人の味わいです。
メインは鹿肉。ぬる燗というか何というか、ありそうでない温度帯です。しかしながら鹿肉の風味が自然に伝わって来る温かさでもあり、滑らかな舌ざわりと相俟って夢中で胃袋に収めてしまいました。ソースはしっかりクラシックなのがいいですな。
〆(?)に鶏スープ。シェフの出自の郷土料理である鶏飯を彷彿とさせる濃厚スープであり、加えてネットリとした舌ざわりの大根餅が良く合います。おかわりしたい。
デザートに茄子のアイスはギリ覚悟していたのですが、事もあろうに茄子の漬物まで出て来ました。おもろいやっちゃなあ。
この新たに発見されたような惑星は黒ゴマのムース(?)で成り立っており、安納芋のクリームに柚子胡椒のソースなど方向性の異なる味覚が不思議と調和しています。スイーツというようりも料理的なアプローチに感じました。
オマケで安納芋のチップスに、、、
ズラリとミニャルディーズが並びます。ビリケンさんのゼリーにミックスジュースが詰まったチョコ、外観が串カツの小菓子。地味演出ですが全て大阪名物へのオマージュです。
食後のお茶は山ほどの種類からお好きなものを選んでごちそうさまでした。

前述の通りサービス料は取らず、お食事だけなら税込でひとりあたり2.8万円。この夜は気前よく飲みワインを含めるとひとりあたり5万円に達しましたが、その支払金額に充分見合う満足度です。

カテゴリとしてはフランス料理なのでしょうが、どこまでも現代的かつ流れが軽やかで、肉々しさよりも野菜の記憶が支配的。どクラシックなフランス料理は内臓的に無理めな紳士淑女であっても気持ちよく楽しめることでしょう。

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