中国菜 エスサワダ/西麻布

大阪でミシュラン1ツ星を堅持し続ける「中国菜 エスサワダ」が東京進出。西麻布の交差点から歩いてすぐという立地であり、かつては熟成牛の雄「カルネヤ・サノマンズ」があった場所です。
シンプルな内装で誰かの家に遊びに来たかのような雰囲気。場所柄どチャラい雰囲気を想像していたのですが、ホールスタッフの皆さんはシックな身のこなしであり、意外に硬派な空気を感じました。

澤田州平シェフは香港の老舗「福臨門酒家」で腕を磨き、2016年に西天満に「中国菜 エスサワダ」を開業。ミシュラン1ツ星ゲットの余勢を駆って2020年2月に当店をオープンしました。
アルコールは流石の西麻布価格。我々はワインをボトルで頂きましたが、一番安いシャンパーニュでさえ11,000円で、これにサービス料が乗って来ます。基本は広東料理で白ワインなどが良く合いますが、〆は麻婆豆腐ということをお忘れなく。
名刺代わりにスペシャリテのフォアグラバーガー。フォアグラの表面をカリカリにキャラメリゼさせ、シャクっとしたリンゴと一緒にバンズに挟んで頂きます。これが旨い。話に聞いていたよりも全然美味しく、リンゴと梅ジャム(?)の酸味がコッテリとしたフォアグラを引きたたせます。
名残の上海蟹。紹興酒漬けにしたいわゆる酔っ払い蟹であり、風味が強く無限にお酒が飲めてしまいます。味が強くのんびり食べる一皿であり、料理と料理の間の空白を埋めてくれるのも良いですね。
白子の春巻き。パリっとした皮と白子のトロっとした食感の対比が心地よい。大葉の爽やかな香りも見逃せません。白眉は脇に添えられた塩。広島は呉の淡雪塩であり、柔らかな塩気と旨味がもうこれだけで美味しい。
こちらも名物、フカヒレの白湯煮込み。親指と人差し指で作ったピストルサイズのフカヒレを、鶏のエキスが詰まりに詰まったスープと共に頂きます。これはもう、どうやったって美味しいですね。超高級天下一品もかくやという味わいであり、このスープでラーメン屋を始めて欲しいくらいです。
想いが通じたのか白米様がやってきました。お行儀などは無視して先のスープにぶち込みリゾット風に。事件性を感じさせる美味しさです。
お魚料理はキンキ。和食のお店で食べることの多い食材ですが、なかなかどうして中華料理も良いですね。見た目通りのキレイな調味であり、それでいて素材の脂をコッテリ活かした逸品です。
こちらもスペシャリテのクリスピーチキン。その名の通り、パリっとした皮の食感に笑みがこぼれ、ジューシーな脂の旨味に心がほだされます。たっぷり食べれるのも凄くいい。多くのお店では丸々一羽プレゼンテーションしたとしても取り分けられる肉はほんのわずかという店が殆どですが、当店はガチで丸々一羽を2名で分け合うこととなります。美味なる鶏肉だけで腹が膨らむ至福のひととき。
〆のお食事は麻婆豆腐。広東料理のお店のはずですが、そのへんの細かいことは気にしない主義なのでしょう。凝縮感に溢れる豆の味の濃い豆腐に穏やかな辛味、奥行きのある旨味。どこを取っても一級品の味わいです。
たまたまクリスマスの時期だったので、可愛らしいデザートが出てきました。こうした遊び心や先の麻婆豆腐も含め、やはり細かいことは気にせずに、市場の声に耳を傾けるお店です。
もうひとつの甘味はバスクチーズケーキ。アクセントに中華風のスパイス(?)が振りかけられており、腹パン状態でもあとひと口もうひと口と背中を押してくれる味覚。

以上を食べ、ふたりでワインを1本飲んでお会計はひとりあたり2.5万円ほど。立地を考えれば悪くない費用対効果です。また、もっとちょづいた店かと思いきや意外にベーシックな味わいで、それでいて(誤解を恐れずに言えば)本格的すぎないお料理の組み立てがゲストに優しい。気取り過ぎず高すぎず、仲間とちょっと良い中華食べに行こうぜという機会にちょうど良いお店でした。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。