Mono-bis (モノビス)/渋谷

青山学院大学脇の名店「モノリス(MONOLITH)」がセカンドライン「Mono-bis (モノビス)」を出店。コロナ禍を念頭に置き、フランス料理を定食スタイルで短時間で提供するという試み。もちろんおひとりさまでも大歓迎です。
店内はラーメン屋ほどの広さであり、カウンター6席に2人がけのテーブル席がひとつ。それだけです。しかしながら朝2回転、昼2回転、夜3回転という従業員にとって地獄のオペレーション。サービスはおらず料理人が作ったそばからそのまま出す割烹料理屋のようなスタイルであり、これは斬新なシステムです。
アルコールは千円ほどから始まり、安いワインであればグラスで千円強といったところ。グラスのシャンパーニュは2千円で、お店の雰囲気を考えればちょっと高いかなあとも思いました。
まずは牛スネ肉のコンソメで胃袋を温めます。ひと口飲んで思わず笑みがこぼれる。これはもう、定食屋とかそういう次元ではなく、モノホンのフランス料理のお出汁です。

メニューは4-5種類用意されており、せっかくなので私は最高値であり限定メニューである「ピジョン山椒焼き御膳」を注文。6,500円です。これにお通し代として550円が加算されます。
カリフラワーのフワフワスープ。素材由来の滋味あふれる味わいにジュレ状にしたコンソメの旨味が響く。しかしこの完成度はすごいな。てっきりビストロ料理をワンプレートで出すものだと考えていたのですが、完全にグランメゾン級の料理じゃないか。
続いてモナカ。スモークサーモンとクリームチーズ、アボカドがギュウギュウに詰まっており、場面でイクラの塩気が感じられます。モナカのサクっとした歯ざわりが心地よく、食べ進めていくうちにアーモンドのコリコリ感も増してくる。そのへんの自称高級フレンチのアミューズのレベルを軽々超えてくる出来映えです。
タラのブランダードをコロッケ風に。ブランダードとは石井剛シェフ得意の南フランス料理のひとつであり、魚をペースト状にした食べ物です。オリーブで周りを覆って真っ黒に仕立て上げるアクティブキュート寄りのエレガントです。
サバを炙った上で桜のチップで瞬間燻製に。フタを開けた際の薫り高さはもちろんのこと、口に含んでも皮の焦げ目の香ばしさが後を引く美味しさ。ソースには大葉を多用しており、前衛的な日本料理店とのG線上のあなたと私。
おや、春巻きだ。しかも重い。恐る恐る口に含むと内部には豚足や豚耳がタップリ。揚げたてアツアツなのでゼラチン質が溶け出し実にジューシーです。ちなみに純粋な春巻きではなく皮はガレット(蕎麦粉のクレープ)だそうです。
フランには大量のなめこが。フランとは平たく言うと洋風の茶碗蒸しなのですが、トッピングがなめこであることも含め、やはり日本料理との境界線が曖昧で興味深い。鮨とフランス料理は全然違うけど、意外に日本料理とは近いコンセプトに感じてきました。
真打登場、ピジョンです。フランスはランド産の鳩を丸々一羽調理しており、胸肉やモモ肉はもちろんのこと、内蔵の何やかんやまで全てひとりで頂きます。基本的にフランス料理店では「メインディッシュはおふたりで揃えて下さい」とか寒いこと言われつつ1羽をシェアさせる店が殆どであるところ、当店では完全に独り占め。これはいい。すごくいい。ソースというか甘辛いタレと山椒という重くない調味であるため、量は多いものの決して食べ飽きることはりません。
お膳なのでゴハンも出て来ます。これがただの白ごはんではなくバターライスであり、コッテリした鳩の味覚に良く合う。私は年に100回はフランス料理を食べるため、ゴハンが欲しいなあという場面が多々あるのですが、当店はその課題をあっさりと解決してしまいました。

以上を食べ、ワインをグラスで2杯飲んでお会計は1万円を切りました。グランメゾンであれば2万円超えは当たり前の質および量であり、割安割安超割安です。キッチンからカウンター越しにホイっと提供されるのでサービス料を取ることはなく、代官山のボッタクリフレンチが学ぶべき姿勢です。

一方で、所要時間は1時間程とロマンもへったくれもない食事形態なので(なんせディナーは3回転だ)、一緒に行く人はきちんと選びましょう。何ならソロ活動が一番です。最安値コース(?)は「山形豚厚切り低温生姜焼御膳」が3,300円であり、朝食の時間帯であれば「モノビス・バーガー御膳」は2,500円だ。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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