サンプリシテ (Simplicité)/代官山

渋谷駅・代官山駅・恵比寿駅からいずれも徒歩15分ほど。アタレザンファン ギャテ (Les enfants gates)RINGRAZIARE KOJI MORITAなどの有名店が集うグルメ地帯に居を構える「熟成魚フレンチ」。
相原薫シェフはフランスの星付きレストランで腕を磨き、帰国後は銀座「レカン」のスーシェフ、広尾「レヴェランス」、荻窪「ヴァリノール」のシェフを歴任し、2017年12月に当店を開業。店名のSimplicitéはSimplicityすなわち「単純な」「簡素な」の意味。加えて古フランス語においては「誠実さ」という意味も含まれているそうな。
飲み物メニューを所望すると「ございません」とのこと。シャンパーニュやビール、グラスワイン、中国茶が用意できるとのことでしたが、いずれも聞かれない限りは値段を言おうとしないのはなんかやだ。このあと私は息子の進路に係る3者面談があり酔っぱらってはいられない状況だったので、まずは白のグラスワインで様子見です。
蕎麦粉の生地でズワイガニを包みます。最初の第一歩としては手の込んだ逸品であり、旨味の強さが食欲を増幅してくれます。
釜揚げのシラスは卵黄をまとっており奥行きのある乙な味。左上のマドレーヌの正体はブラックオリーブであり、ひと口で頬張ると液状化現象を起こしたオリーブの風味が爆発。食感を含めて面白い料理です。
「玉手箱」と称した1皿。中には熟成したイワシが鎮座しており、ネットリとした食感に強い旨味の溢れ出る熟女感。もわもわと立ち込める燻製の香りも食欲を刺激する。
ジャビットみたいな外観ですが、実はコレ、サヨリと菊芋なんですね。サヨリと菊芋のペーストが手を取り合って引き立てあう。外側を覆うカリっとした菊芋の食感も良く、センス抜群の1皿でした。
パンは加水率が高くモチモチとジューシーな味わい。発酵バターと黒ゴマの取り合わせも悪くない。
特大の帆立にもち粉を塗して豪快に揚げたもの。外皮のサクっとした食感から中心に進むにしたがってネトネトとグラデーションしていくのはガチヤバイ旨さです。イカスミのソースの深みにキノコの食感も含め、本日1番のリアルガチでやばいかもな1皿。
ヒラスズキ。皮目は思いきりのよい火力で炙っておりカリカリとした食感。他方、身についてはしっとりと水分を湛えており、なんとも色気のある味わいです。ホウレンソウのソースも味覚の複雑性を演出しており、大粒のケッパーも良いアクセント。

ところで、サービスがてんでダメですねこのお店は。明確なサービスマンはおらず、下っ端の料理人たち(?)が場面で動いているだけです。結果として、料理は出すがカトラリーの準備を忘れてしまうなどのボーンヘッドを連発し、料理の説明についても気迫が希薄です。一方で、シェフは特定の客とひたすらに話し込んでおり、奈良の3ツ星点における佐野ひなこ事件を思い出しました。
私も連れも、あと飲めて1杯だけだったのでシェフに相談すると、魚と肉にそれぞれ合わせて半量づつお出し頂けるとのことで、その提案に乗っかります。マコネの定番。程よく樽の香りを感じながら旨味もしっかりと強い。
メインはお肉。群馬県の「せせらぎポーク」を低温調理した1皿。これが肉かと思わせる程スっとナイフが入る触感であり、じっとりとエキスを湛えた食感は犯し難い旨さ。ソースには和のエスプリも感じられ、ちりめんキャベツの使い方も心憎い。魚料理を中心にこれだけの多様性を実現させる手腕は見事としか言いようがなく、加えて肉料理も上手いともなると鬼に金棒です。
合わせるワインはサヴィニー・レ・ボーヌのプルミエ。若いヴィンテージを全く感じさせない熟成感であり、上品な酸と奥行きのあるタンニンがグッド。

なのですが、やはりサービスの姿勢については甚だ疑問。「サヴィニー・レ・ボーヌのピノです」とだけ言って置いていくだけであり、ワインに対する愛情が一切感じられません。鳥貴族における「プレミアムモルツです」と言って置いていくテンションと同等であり、やはりこのクラスのレストランであればサービスのプロを1人は入れるべきでしょう。現状、サービス料10%を請求する資格はありません。
デザートは、ほうじ茶のブリュレにサクサクとしたクランチが盛りだくさん。嫌味の無い甘さに程よいお茶の香りがベストマッチ。
食後のお茶には台湾茶をセレクト。小菓子が本格的なシュークリームであり、生地の食べ応えに芳醇なクリームと、抜け目のない味わいに大満足。

しかしながらお会計で首を傾げる。5,000円のランチコースにグラスワインをお任せで2杯(白1杯・白半分・赤半分)飲んだだけなのにひとりあたり1万円を超えていました。税サが加算されたとしてもひとりあたり1,000円か2,000円は高い印象。明細を求めると、先の半量の白と赤はそれぞれ1,200円、1杯換算で2,400円という計算。恥を忍んで本当にこれで間違いはないかと再確認すると、「あれは良いワインなので」の一言で説明は終了しました。チーン。

何をもって「良いワイン」とするのかは人それぞれですが、最後の赤を「良いワイン」と呼び1杯2,400円を請求するのはまあ納得。しかしながらその前のマコンを1杯2,400円とするのは承服しかねる。あのワインは酒屋で買って1本3,000円を切る費用対効果の良いデイリーワインだ。

より全体を俯瞰して見てみると、いくらお任せにしたとは言え(値段が記載されたドリンクメニューが無いから任せるしかない)、5,000円のランチコースに事前説明なく2,400円のグラスを平然と出す姿勢は一般的とは言い難い。私は国内外含めて年間100件以上フランス料理店を訪れているのですが、5,000円のランチコースにグラスワインを2杯つけると1万円を超えるお店はかなり珍しい部類に入ると判断しました。

一方で、このランチコースが5,000円というのは実に割安であり、7,000円であっても納得できるクオリティです。仮に最初から「コース料理ひと通りとそれに合わせたワイン、税サ込で12,000円です」と宣言されていれば、何も違和感を覚えなかったことでしょう。消費者の心の在り方を読み解くのは難しい。

シェフの料理に係るセンスは間違いなく一級なので、いっそのこと大箱で雇われシェフに徹し、ワインや接客、利益管理はそれ専門の人に任せてしまうほうが、最大多数の最大幸福に寄与する気がしました。人間には得手不得手がある。好むと好まざるとにかかわらず。

レストランは料理だけ旨けりゃいいってもんじゃなく、店の雰囲気やサービスのホスピタリティ、全体を通しての納得感を含めての総合評価なんだなと、たいへん勉強になったランチでした。


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