杉の井 穂濤(すぎのい ほなみ)/金沢

犀川(さいがわ)に面した「杉の井 穂濤(すぎのい ほなみ)」。ミシュラン2ツ星。もともとは「杉の井」という名前だったらしく、最近店名に「穂濤」がドッキングしたとのこと。明治末期の邸宅をリノベしたかっちょええ建物です。
石畳を渡り迷路のような廊下を抜けて我々の個室へ。おおー、ジャパンである。どの個室からも望むことができる日本庭園は150坪もあるらしく、掛け軸や建具なども含めて味のある空間です。

越沢晃一郎シェフは早稲田大学卒のインテリ。サッポロビールに就職後、二代目主人として料亭の跡を継ぎます。「和甘味つぼみTSUBOMI」「杉の井 穂濤 離れ」などの新業態を矢継ぎ早に発表するなどやり手の実業家。
なるほどビールはサッポロのヱビス。中ビンが800円とこの格のお店としては控えめな価格設定。日本酒も1合が千円強と悪くない価格設定です。
食前酒の日本酒ならびにエビとトウモロコシの煮凝り。海老の美味しさは当然として、トウモロコシの力強い甘味が美味しかった。ひんやりサッパリしているのも夏にぴったり。
アミューズいろいろ。ウナギをキュウリで巻いたやつがさわやかで美味。鮎の一夜干しは酒が進む味わい。
お椀は海老しんじょう。すり身だけでなく海老そのもののブリっとした個体も入っており、いただきますから海老好きには堪らないラインナップです。
お刺身はアラにキジハタの昆布締め、マグロ。キジハタの味わいに昆布の旨味がしっとりと効いていて美味。また、予想外と言っては失礼ですが、マグロがびっくりするほど旨かった。
焼き物はスズキなのですが、このバジルソースは意味不明。普通に塩焼きでいいのに。やっぱずっとやってると飽きてまうんかな。
炊き合わせはトコブシ。まるでアワビ、というか目をつぶって食べればもはやアワビであり、料理全体にコクという名の背骨を与えています。
食事はシメジとサザエの炊き込みご飯。具材はさておき、ライスの炊き加減が絶妙でした。おかわりという仕組みは特に採用されておらず。お味噌汁とお漬物はごくごくシンプル。
デザートにしてスペシャリテである「くずきり」。吉野の本葛の根のみを使用しているらしく、なるほど自慢の逸品だけあってとても美味しい。深みのある黒蜜の味覚も心に残る。本日一番のお皿でした。
軽く飲んでお会計はひとりあたり1.1万円。ミシュラン2ツ星というブランドに美しい庭と建物を愛でながら楽しむ食事という意味でリーズナブル。総合芸術。窓から望むグリーンが素敵なので、まずはランチでどうぞ。
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黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。