口福料理なかもと/大井町

「大阪割烹の穴場がある」とのことで、大井町から徒歩7~8分、「口福料理なかもと」へ。「大阪割烹」という表記が正しいかどうかはさておき、どのようなジャンルの料理かというと、客の好みに応じて即席に作った出来立ての高級な和食をカウンター席で気軽に食べさせる料理店、と説明されることが多いです。大正・昭和初期に大阪で大流行したため「大阪割烹」と呼ぶ人もいるそうな。例えば難波は法善寺横丁の「き川("き"は七がみっつ)」など。
店内は当然にカウンター席が中心。テーブル席は4人掛けが1卓のみです。大将がおひとりで全てをこなすワンオペ形式。
生ビールはエビス。タンブラー形式で少量です。量を求める方は同価格のビンビールを注文すると良いでしょう。
お通しがミラクルに凝ってます。旨味の強い出汁の冷製スープ。トロンとしたトロミにたっぷりのキノコ、そしてイワシのツミレ。あまりにハイレベルであり、この時点できちんとしたお店だと安心しました。
まずは軽やかにアジの刺身を。肉弾的で噛み応えがあり、旨味も強く美味。
豚バラ肉の米煮。初めて食べる料理です。あっさりとした塩味のお粥で似た角煮とでも評しましょうか、トロトロと優しい口当たりに円みのある味わい。お米のエキスが内臓を保護してくれそうな優しい接触。
鯛のあら炊き。上質な天然の鯛の身と脂、ゼラチン質が折り重なって懐かしい味わい。付け合わせのゴボウも抜け目なしの逸品。
日本酒のラインナップは豊富というわけではありませんが、2合で1,000円~と、とにかく安い。これだけリーズナブルだと楽しくなってガブガブしちゃいます。
お造りの盛り合わせ。タコが特にいいですね。ガッシリとした歯ごたえに噛みしめるほどに溢れ出る旨味。
茄子の田楽。低カロリーながら味は濃く、酒がいくらでも進むという悪魔のツマミです。
地鶏の山椒焼。筋肉質な鶏肉をコッテリとしたタレで包み込む。思ったよりも山椒の香りは強くなかった。
レンコンまんじゅうは家庭では絶対に作れない味覚ではありますが、これ1個で1,000円を超えるのはちょっと高い。技術料だと割り切れない費用対効果の悪さがありました。
ゲソとアスパラのバター醤油炒め。こちらも間違いなく美味しいのですが、私でも作れそうな1皿であり、やはり1,500円という価格設定は割高に感じました。
海鮮グラタン。魚の切り身や貝などがゴロゴロと飛び込んだ逸品。チーズは控えめであるため、海鮮をベシャメルソースで味わうという新たな試みに感じました。
地鶏とキノコの卵とじ。これは鶏肉が大層旨く感じました。強く焼かれた皮目の香ばしさといったらない。こちらも家庭料理といえば家庭料理かもしれませんが、家庭では実現できない確かな美味しさが感じられました。
マナガツオの西京焼き。西京味噌というよりも、魚の凝縮感が印象に残りました。チビチビとツマミながら冷酒をクイ。至福のひと時である。
〆はフランス産の鴨を網焼きで。コチラは他の肉料理に比べて非常に食べ応えのある1皿。それでいて1,000円という価格設定は謎。もちろん美味で、最後を締めくくるに相応しい満足度でした。
お会計はひとりあたり1.5万円強。大食漢ふたりで好き放題飲み食いしたので、まあ、こんなものでしょうか。常識的な食事量ならびに酒量に留めれば1万円ほどに着地するでしょう。となると当店はかなりリーズナブル。一流和食店にひけをとらない高次元な料理でこの価格帯なのですから。ただし料理によって割安/割高の差が激しいので、その見極めには回数を要するかもしれません。気取らず旨いものをたっぷり食べたい時にどうぞ。


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