クリスプ サラダ ワークス(CRISP SALAD WORKS)/麻布十番

サラダボウルのブームが長い間続いている東京。雨後の筍のごとく専門店が現れては消え、開店しては閉店を繰り返しているのですが、その流行のきっかけは当店「クリスプ サラダ ワークス(CRISP SALAD WORKS)」でしょう。NYで話題となった「チョップドサラダ」すなわち具材を小さく刻んでスプーンで食べるサラダにいち早く目を付け、麻布十番を起点として都内のオシャレな街を次々と制圧。コレ系のお店ではダントツの人気を誇ります。
野菜好きの私も1~2か月に1度は利用するマイルドな常連客。しかしながらその利用形態は全てが出前(UberEats)であり、実際の店舗にお邪魔するのは初めてです。NYのミート・パッキング・ディストリクトあたりにありそうな、シンプルでスタイリッシュな内装。しかしながら、雰囲気はどうにも不気味です。
気味悪さの原因は「タッチパネルを用いての注文」という仕様でしょう。目の前に店員が何人もいるというのに会話は一切無く、ゲストは黙々とタブレットを操作し、クレカを差し込み、排出されたレシートを受け取るのみ。「カスタムサラダ」を標榜しゲストの好みに寄り添うことをクレドとしているのに、その接点は電子機器のみというのは昭和生まれの私にはどうにも受け入れがたい。
プリンタから排出されたレシートには呼出し番号が記載されており、サラダが完成したら電光掲示板の表示が変わり、それに基づいてカウンターまでピックアップしに行くという仕組みです。スタバ的「〇〇のお客様~お待たせしました~」のような声がけは一切なく、店員はカウンターに淡々とサラダを並べていくだけです。
私は「MAVERICK(マーベリック)」という、穀物が内包されたサラダを注文しました。1,350円です。内容物はワイルドライス、雑穀米、ほうれん草、グリルドチキン、フェタチーズ、スパイシーブロッコリ、アップル、ウォルナッツ、バルサミックビネグレット。味は抜群。巷に溢れるサラダ専門店の中ではダントツの味覚です。

どのサラダ専門店も素材には拘っているはずなのに、どうしてこんなにも差が生まれるのでしょうか。やはり細かく切り刻んでドレッシングを馴染ませるのがポイントのような気がします。超高級レストランのサラダであってもここまでの品質のものは中々出会えません。

量もたっぷり。サラダだけで1,350円ってのは一見高く感じますが、この素材と味覚、満腹感を考えれば妥当な価格設定でしょう。
ちなみに「自家製レモネード」は430円で飲み放題なのですが、そんなにガブガブ飲むものでもないのでお冷をもらうことに。「お冷頂けますか~」と店員に声を掛けると「あそこからセルフでお願いします」と目も見ず顎でしゃくられました。なにコイツすげえ感じ悪いじゃん。その水をセルフで入れるスペースも、厨房の半歩中の業務用ゴミ箱の隣だったりするので、色々と考え込んでしまいました。
食事中もやはり雰囲気には馴染めない。従業員はそれなりに多いのに、みな黙々と作業を続けるのみで会話などは一切なく、まるで無菌状態の食品工場のサンプルを食べているような気分になります。味は間違いなく良いのですが、UXとしては最低レベルのお店でしょう。これは食事じゃない、補給だ。

サブウェイと似たようなコンセプトのはずなのに、どうしてこんなにも気味が悪くなってしまったのか。恐らく自動販売機のように人間が全く目に入らないのであれば何とも思わないのでしょうが、目の前に生きた人間がいるというのに会話は生まれずデバイス経由でコミュニケーションを図る必要があるという状況が居心地の悪さを創出しているような気がします。
↑この写真は公式ウェブサイトからの引用ですが、これは完全にやらせですねえ。こんな状況、当店の仕組みとして絶対に起こりえません。

味は良いので、もうちょっと普通のオペレーションに戻して欲しいな。タッチパネルを排して、目を見て活きた言葉で接客すれば何もかもが変わると思うのだけれど。考えすぎかな。私がかまってちゃんなだけで、世の中そんなものなのかな。


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