嘉YOSHI/麻布十番


1年ほど前の東京カレンダーで特集されていたお店。オープン当初は軒先が胡蝶蘭で満艦飾だったので、ずっと気になっていました。
風格を感じさせるエクステリア 。白壁の輝きが目を引き、アナザースカイの挾土秀平(左官職人)特集を思い出しました。
1Fがカウンター席、2Fが個室です。カウンター席であればフリーの入店でアラカルトもOKと、この高級感の中でアジャイル型の実現は見事です(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
マスターズドリームで乾杯。アレルギーやお苦手な食材はございますか?との質問に対し、連れが「シイタケが苦手です。キノコ全般好きなんですけれど、シイタケだけが嫌いなんです」。
名刺代わりの一皿は鰹の酒盗豆腐酒盗の旨味にウズラの卵黄が優しく寄り添い、問答無用で日本酒が欲しくなりました。
日本酒は酔鯨の吟麗より。柑橘系の香りとフレッシュな切れ味。酒盗のアミノ酸をサラリ。
手前がウニとイクラのホタテ包み。まずはウニとイクラに目が行くのですが、出色なのはホタテの品質。これでもかというほど新鮮でその肉も厚い。ホタテ好きの私は早々にノックアウトです。

奥はアオリイカの黄味酢かけ。ホタテと同様にイカがクリア。黄味酢のコクと相俟って大変に満足した一皿です。
フランス産ホワイトアスパラガスのソテーに熟成コレナイ豚モモハムと温泉卵。フレンチにおけるホワイトアスパラガス料理の再構築でしょう。直径2センチを超える極太サイズのホワイトアスパラガスがゴロリゴロリと鎮座します。
温泉卵を崩してソース代わりに。黄味が悲鳴をあげたくなるほど濃厚。当店は一貫して素材の質が素晴らしいですね。ハムの旨味に結晶が見えるほどの思い切りの良い味付けに酒が進む。
一藤の金印。 これが日本酒だと言わんばかりの芯のあるお酒。燗酒にしても良さそうです。
鹿児島産初カツオのタタキと中トロの胡麻風味漬け刺身。くどいようですが素材が良い。カツオは鉄分の強い健康優良児であり、たっぷりの薬味と共に初夏を楽しむ一皿。

中トロが私的にツボ。溶けてしまいそうなほどの柔らかい脂に奥行きのある胡麻の風味。本日一番のお皿です。
アサリとクレソンのクリームスープ、カレー風味。いずれの構成要素も見事に調和。創作料理に挑戦する和食店は数多ありますが、この店の出来栄えには遠く及びません。量もたっぷりであり大満足。
浦霞の純米吟醸、禅。優しい香りとにバランスの良い味わい。食中酒にピッタリでした。

メインはイベリコ豚のロティ・牛ロース肉のステーキ・フィレ肉のグリエから選択できるのですが、「今夜は和牛ホホ肉の赤ワイン煮もできるんです」とシェフが耳打ち。シイタケ嫌いは「ふたりで違うものを注文しましょうよ」と主張するのですが、料理の味は思い出の結晶、同じものを食べたほうが記憶に残るのです。
そしてその判断は正しかった。ボルドーカラーを通り越して赤黒くすらある外観。香りを取ると、凝縮された赤ワインは当然のこと、和牛の脂の甘さまで香ってきます。箸を入れると豆腐ようの様に柔らかく、かといって脂は抜け切ってはおらず絶妙な調理加減です。肉に比肩するほどソースの味わいに存在感があり、そこらのフランス料理人は当店に修業しに来るように。
お食事はカレー・フォアグラ丼・海鮮づけ丼ゴマ風味から選びます。シイタケ嫌いはフォアグラ丼を選択。 〆の食事のオマケ食材ということは決してなく、これだけで立派な前菜を飾ることができそうなポーションです。
私はカレーと迷いに迷ったのですが、先の中トロ胡麻風味漬け刺身が忘れられず、同じベクトルの漬け丼を。こちらもコース料理の別冊付録というわけでは決してなく、そこらの和食屋のスペシャリテを張れそうなほどの美味しさとその量でした。
久保田の千寿。まさか〆の炭水化物において追加の酒を要求してしまうとは。それほどまでにしっかりとした建て付けの食事でした。
暖かいスープが胃腸に深く染み渡る。ごちそうさまでした!
デザートはクレームブリュレにヨーグルトのアイス。 バニラの使い方が気前良く、もはやクリームが黒々とした色合いに近づきそうな勢いです。一転してヨーグルトのアイスは控えめな甘さであり、酸味との調和がちょうど良かった。
最後にほうじ茶かコーヒーを選択とのことだったので、ほうじ茶を。

素直に美味しかったです。和食は食材の時点で最初から勝負は決まっていることが多いのですが、当店はその仕入れの良さに料理人の技術が組み込まれ、そのつながりが素晴らしい。ロビー活動さえきちんとすれば、ミシュラン確実の実力派です。それでいて滅茶苦茶に高価というわけではないので、十番で夕食難民になってしまった際には思わず飛び込みたいアラカルトです。

キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレに方向性は近いですが、もっともっと和食に寄せている印象。素材の良さからヴィンテージ・ケーブ・クラブでの食事を思い出しましたが、もちろん当店のほうがレベルは全然上。また、全般的に味付けが濃いので、お酒を飲まない方は私と印象が違うかもしれません。

2F階は個室であり、子供もOKとのこと。素敵な町内会を開催できそうです。また来よう。


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麻布十番にはフランス料理屋がたくさんあるのですが、残念ながら割高でハズレなお店も多い。外さない安定したお店は下記の通り。
  • エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
  • ALLIE ←ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店。
  • ラリューン ←クラシックな調理で正統派。むちゃ穴場です。
  • 麻布れとろ ←ここで合コンすれば幹事がモテる(と信じている)。
  • RRR ←ワインが割安。飲みまくれ!
  • ルバーラヴァン52 ←全般的に安い。2時間で追い出されるのが玉に瑕。
  • ブラッセリートモ ←和魂仏才、リーズナブル!
  • タストゥー ←トリュフを使ったデザートに身悶え。
  • 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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