ヴィンテージ・ケーブ・クラブ(Vintage Cave Club)/アラモアナ(ハワイ)

白木屋というハワイでは有名な日系スーパーがあるのですが、そこのオーナーが半ば趣味でオープンした会員制のレストラン。入会金には数百万円を要するとのウワサもありましたが、ここ数年では一見客であっても割増料金さえ払えば入店を許されるようになりました。
アラモアナセンターの駐車場の奥まった所に、謎のレンガ造りの一画があります。近づくと物腰の柔らかそうな日系人の方が、お店の外でずっと待っていて下さったことに気づく。このあたり名古屋のトゥ・ラ・ジョアを彷彿とさせます。

一歩足を踏み入れると、重厚で厳かな内装にただただ圧倒。広々とした店内にポツンポツンとテーブルが配置されており、贅沢この上ありません。我々はピカソの絵が何十枚も並べられた前のテーブルに案内されました。
料理はフレンチ懐石300ドル一本勝負。ハワイとしては破格の値付けです。
ワインは店の格の割にそれほど高くはありません。例えば我々が注文したテタンジェのボトルは1本110ドルでした。2週間ぶりにワインを飲みましたが、やはり美味しいものですね。
前菜盛り合わせ。12時にあるのはモッツァレラチーズにトマトのジュレ、ワインビネガーを粒状に固めたものに、アルボワを粉末状にしたもの。水っぽくふぬけた味付けでイマイチ。妻と眉をひそめ合う。

生牡蠣も同じく水っぽい。キュウリとメロンを冷やし固めたトッピングは爽やかでグッド。

右下の魚の皮は意図が不明。硬いだけで全然美味しくありません。歯が丈夫でない方は恐る恐る口に含んだほうが良いでしょう。
パンは左から豆乳風味、シラカワ(何かは不明)でできたもの、クランベリーとクルミ味。いずれも小麦の旨味と甘さが伝わる美味しいパンでした。
手前はモロカイ島のアマエビ。何よりも目を引くのは背中に担いだキャヴィアです。聞くとカリフォルニア産。粒が大きく、おシャンパーニュに良く合います。

刺身はアオリイカにオコゼ、大トロ。いずれも日本産であり、東京の最上級和食店で食べるとそれと同等の味わいで大変美味しかった。

右上のガーデンサラダも見事。素材の新鮮さはもとより、それを引き立てる柚子ビネガーのドレッシングも絶妙。アイスプラントの塩気もアクセントにちょうど良く、たっぷりのゴマ味噌ペーストは酒のツマミにピッタリです。
ウニのシチュー(?)。ランチのアランチーノで食べたウニとは段違いの品質です。シチューの旨味もたっぷりであり、南仏のブイヤベースの豊かさに通じる味わい。
クロワッサンも甘味がハッキリとしており食べごたえのある付け合せでした。
アイナメにシトラス系のクリーム。アメリカで食べるソースとしては極めてレベルが高かった。何のクリームかは何度聞いても聞き取れなかった、というかそもそもの単語を知らなかった。アイナメの品質も上々であり、ケッパーを揚げて食べるというアイデアも興味深い。
アマダイの身と白子。トマトクリームソースの味覚が芳醇であり、いかにも日本人好みしそうな創作和食です。シイタケは凡庸な調理であるものの、コナ産のアワビは見事な美味しさでした。
シャンパーニュが空いたので、次のワインをスタッフと相談。色々しつこく聞いていると「一番詳しい者を呼んできます」とバトンタッチ。
肉料理1皿目はダックの燻製。スモーキーな香りが食欲を刺激します。付け合せの「トウキョウネギ」が秀逸。シャキシャキとした外皮に歯を入れるととろりとした液状の旨味が流れ出る。ダックそのものには臭みが残りあまり好きな味ではなかったのですが、妻は旨い旨いと喜んでいたので、このあたり好みの問題でしょう。
ソムリエ(?)との議論の末、落ち着いたワインはソノマのピノ。元気いっぱい過ぎるきらいがあり、樽香を通り越してココナッツのような香りまで感じ取れました。
熱意が伝わったのか、「これは私の気持ちですので、試してみて下さい。良い造り手です」と、ナパのカベルネを妻と私に1杯づつサービスして下さいました。なるほどアメリカのカベルネながらエレガントな味わいであり、彼が自信をもってお届けするだけあります。「あなた、でかしたわ。その万国共通愛されキャラ、一体どこで身につけたの?」と妻。
メインはNY州のフォアグラに佐賀牛です。へえ、NYでフォアグラ作ってるんだ、と感心しながら口に運ぶと全然美味しくありません。とにかく脂っぽく、その脂ものっぺりと胃壁にへばりつくようであり、気持ちが悪くなりました。

佐賀牛は間違いなく美味しいのですが、日本人の我々としてはハワイまで来て何を食べているんだという気持ちが無いでもない。我々の表情から察してか、「ちょっと脂がキツすぎましたかね」と、先のソムリエも苦笑い。

ちなみに彼はアランウォン(ハワイの超有名レストラン)のイクスピアリ店の立ち上げメンバーとして、10年ほど前に千葉に住んでいたことがあるとのこと。「日本はとにかく魚が旨く、魚好きの私としては幸せな日々でした」。
「普段はどんなワインをお飲みになられますか?」と客に対する興味から私個人に対する興味へと移り変わり、心が通じ合った瞬間です。趣味っていいな。国境を越えて分かり合える。「当店のワインリストをお渡ししますので、ご自宅でじっくり御覧になってみてください」と、丸々1冊お土産に頂けました。値段入りなのにすごいなあ。ちなみにロマネ・コンティ2009は29,000ドル。
デザートは思いの他シンプル。小さいリンゴにリンゴのソルベとジュレ、飾り付けにベリー。ここまで風格のあるお店なのだから、もう少しデザートを充実させて欲しいところです。
ちなみにコーヒーと紅茶はそれぞれ10ドルづつ。このあたりはさすがの価格設定。
食後は「もしお急ぎでなければ」と、店内すべてをくまなく案内して頂けました。
とにかく美術品の山山山。これだけのものを収集するのにどれだけの手間と時間、そしてお金がかかったことでしょう。
短絡的に美術館を作るのではなく、会員制のレストランにするというアイデアも素晴らしいですね。

コチラはスシバー。昔はひとり600ドルでスシを提供していたが、今はフレンチ懐石一本に絞ったとのこと。すし匠もハワイに上陸したことですし、もう一度スシバーを再開し成果を競い合って欲しいところです。


VIPメンバー向けのワインセラーや

オーナーのプライベートなオフィスにまで案内して頂けました。どうぞどうぞと写真を撮らせてくれる懐の広さ。
これまでお邪魔した中では、ハワイひいてはアメリカで最も美味しいレストランです。もちろん雰囲気に呑まれてしまった点も多分にありますが、それを差し引いても充分に記憶に残った料理でした。
ハワイにとって非常に意義深いお店です。地元資本がオーナーというのが良いですね。本土や日本の資本が入ってしまうと、うっかりアイランドテイストを取り入れたくなってしまい、ここまで振り切った舞台を創り上げることは決してできないことでしょう。だって当店はハワイのお店なのに窓すら無いのですから。
ただし、税金とチップを含めると、ふたりでゆうに10万円を超えてきます。それを経験と割り切れるかどうか。コスパ厨は決して訪れてはならないお店です。
かといって、当店に利益が残っているかというと決してそうではなく、むしろ赤字なのではないでしょうか。最高の食材に(ハワイにおいては)最高の調理技術。完全無欠のサービス陣。賃料の高さに内装費、美術品の保険料。これはオーナーの文化貢献事業であり、それに賛同した客は費用対効果がどうのこうのと野暮なことを言ってはならないのでしょう。


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