ピアット・スズキ/麻布十番


さて今月のシイタケ嫌いとの立派な会食はピアット・スズキです。クチーナヒラタ系列のヴィノヒラタから独立したシェフ。
泡で乾杯し、メニュー表と格闘。食事の選択肢の幅がものすごく広いです。「アラカルトでも結構ですし、コースもあります。『コレだけは必ず食べたい!あとはお任せで』も大丈夫です」と懐が深い。
ピクルスやオリーブをつまみながらこれは旨そうだこっちも美味しそうと注文のための議論を重ねるのは外食の本義。「お苦手な食材はございますか?」との問いには当然に「シイタケ」と回答。

「笑わないで下さいよ。こっちは大変なんだから。『シイタケが苦手』って言うと『キノコ全般が苦手』とミスリードされて、トリュフまで外されることもあるから、言うべきかどうかいつも迷うんです」なるほど彼の悩みは想像以上に深刻です。
バッカラ。タラの塩漬けのペーストを一口でパクリ。ちょっと上品すぎるというか荒々しさが欠けています。名刺代わりの第一投はもうちょっとパンチが欲しいところ。
前菜盛り合わせ。右上のハムは塩気もコクも充分であり美味。右下のモッツァレラチーズとトマトのスープ(?)は味が薄いというか先のバッカラと同様に品が良すぎます。左下の甘エビのタルタルは絶品。ソースも海老味噌仕立てであり、私の好みのど真ん中。左上はスミイカとジャガイモなのですが、やはり薄味仕立てで印象に残らない。中央はサゴシと言ってサワラの子供。たっぷりと脂がのっており、バリっ焦がした皮目の香ばしさと共に心に残りました。
飲み物の値付けは全般的に高めです。6,000円台の万能型をなんとか選出。私はグリ系をそれほど好まないのですが、コチラはかなりイケました。たまたまですが後述の料理たちにもピッタリ。
パンは普通のバゲットです。私はフォカッチャが好きでイタリア料理屋でそれを食べるのを楽しみにしているのですが、今回は残念ながら出場の機会を得ず。
白子とチーズをオーブンで焼いたもの。コレやばたん。大好きです。トロリと蕩ける白子に追い討ちをかけるようにトロリとしたチーズ。味付けもしっかりしており実に美味しかった。
カラスミのパスタ。酒飲みには堪らないカラスミの量。ただしあまりにもカラスミの主張が強く、パスタそのものについての記憶は曖昧です。
寒ブリのラグー(煮込み)。これすごく好き。旨味と塩気が溢れる海の味。パスタとのバランスも良く素晴らしい。
アイナメをブイヤベース的に。こちらはあまりパっとしません。味の輪郭が定まっておらず大人しい。ガツーンと魚介の旨味を凝縮させたババーンとした味付けのほうが私は好き。それにしてもガツーンだのババーンだの、私のボキャ貧もいよいよ深刻です。
メインは松阪牛。こちらはお見事。酸味の強いソースなのですが、牛の脂と溶け合って新たな味覚を奏でます。ややもたついた感じのコッテリ和牛にピッタリのソース、格別なり。
グラスで赤を1杯だけ飲もうと目論んでいたのですが、思いのほか高かったので、急遽安めのボトルへ変更。お蔭様で酔っ払いの完成である。
「ワインもまだまだたっぷりあるし、僕はデザートじゃなくてチーズにします」とシイタケ嫌い。何その食べ方オシャレかよ。
連れは栗のロールケーキ。一口頂きましたが程よい甘さである一方で栗の味わいが前面に出ており美味しかった。
私はアンコのパートフィロ(クレープのパリパリ薄いやつ)包み。大当たり。品の良い甘さのアンコとチーズが結束し、ドルチェの新時代を創り上げています。パートフィロのパリパリとしたアクセントも小気味良い。

「ねえねえ、やっぱ一口もらっていい?」とシイタケ嫌い。先ほどのオシャレとは何だったのか。
小菓子もつけてくれるのです。
骨格のあるエスプレッソでごちそうさまでした。

ノームコアというか究極の普通というか極めて実直な料理でした。私はワイルドな調理を好むので全般的にちょっと物足りない印象なのですが、女性陣には「パスタ2皿食べた後にお魚もお肉もスイスイ完食できるイタリアンは珍しい」と大好評。

しっかり飲み食いしてひとり2万円チョイ。ちょっと高いかなあ。その功があってか客層が上品に保たれている。そういう意味で、とても麻布十番的なイタリアンです。

サービスは非の打ち所が無く感服。高圧的でも慇懃無礼でもなく、懐に飛び込んで来る系。ものすごく気持ちの良い時間を過ごすことができました。このような居心地の良さ演出できるのは努力とか経験じゃなく、センスなんだろうなあ。そういうものにわたしはなりたい。


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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。