SECRETO(セクレト)/牛込神楽坂

数年先まで予約が埋まっているという噂の牛込神楽坂「SECRETO(セクレト)」。場所は住宅街、というか普通のマンション(?)の1階にあるのが面白い。神楽坂の至宝「ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)」のすぐ近くです。
入ってすぐはウェイティングバーになっており、検温・消毒を済ませます。アルコール込みで2.2万円の先払いであり、このあたりの運用は西麻布「81」と同じです。19時ピッタリになると暗い廊下を通ってメインダイニングへと案内されます。
おおー、照明の暗さや音量の大きさ、演出、内装などなど西麻布「81」にそっくり。ただ、シェフが芸人風味というか何というか、テンションが異常に高い三枚目であり、全盛期のショーンKのように仕切りが上手い。舞台装置のシリアスな雰囲気とのギャップがとても楽しいです。

ちなみに藪中章禎シェフは輪島出身で、スペインを中心にヨーロッパの名店で経験を積み、マンダリンオリエンタル東京「タパスモラキュラーバー」のスーシェフを務めた後、当店の開業に至りました。
アルコールペアリングにつき、シグネチャードリンクのジントニックに始まり、カクテルを中心に進捗し〆はワインといった流れです。気前よく注ぎ足しもしてくれ、これで全部込み2.2万円というのは良心的。
まずは「秘密のハート」をひと口で。チョコレート(?)の中にはジュースが詰まっており、楽しいスタートです。
おや、そうめんだ。三輪山本の白龍(有名な素麺ブランド)にウニ・キャビアなどをトッピングし爽やかに仕立てました。前衛的な日本料理店で供されても違和感のないボーダレスなひと皿です。
チュッパチャップスを見立てたコロッケ。万人受けする味わいに仄かにトリュフが香ります。
タコスには和牛に新鮮なお野菜がたっぷり。タコスという料理において最高峰の美味しさです。
スぺシャリテの「フォアグラ・フレンチトースト」。液体窒素で凍らせたフォアグラをフレンチトーストに削りかけます。シェフ自らゲストひとりひとりに丁寧に提供し、その間きちんと言葉を交わすなど、「山元麺蔵 (やまもとめんぞう)」を彷彿とさせる好人物です。
たっぷりのお野菜にノドグロ・サザエ・ミズダコなどなど。能登の山海の珍味を凝縮したひと皿であり美味しかった。
トウモロコシのスープ。甘味が強く滋味あふれる味わいです。
「ハチメ」という能登の地魚。サラダチキン1枚分ぐらいはありそうなサイズ感であり食べ応え抜群。どことなくブイヤベース調の味覚も感じられ、私の好きなタイプの料理です。
パンが美味しいですねえ。どこかからの仕入品だそうですが、生地そのものが美味しく、アクセントに詰め込まれたオリーブの風味も堪りません。
メインはホロホロ鳥。こちらも「ハチメ」に続いて特大サイズ。モダンスパニッシュ~イノベーティブ系のレストランって、チマチマした料理が延々続いて、結局なに食べたんだっけ?という食後感になることが殆どですが、当店はきちんと主題を明確にした料理が多く、記憶に残りました。
土鍋ごはんは能登のイノシシにたっぷりの夏野菜。トマトやスパイスも多用しており、パンチのあるタコライスを食べているかのようです。お腹に余裕がある方はお代わりもどうぞ。
デザートはコーヒーをその場で液体窒素に漬け込み(?詳しいメカニズムは知らん)、その場で氷菓を作り上げます。美味しいのですが、派手な演出の割に味も量も地味であり、これまでの料理の陰には隠れてしまったかもしれません。
フレッシュハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

正直なところ、またエルブジの二番煎じが出て来たなと斜に構えていたのですが、実際に訪れてみると良い意味で想定外が続き、これだけ楽しんで2.2万円は大変お値打ちに感じました。

何より料理が普通に美味しい。予算を考えれば食材に限界がありつつも、その範囲の中で最大限の美食を提供してくれます。人はそれをセンスと呼ぶ。

一方で、ドンドンパフパフといった賑やかな演出は抜きにして、シェフの純粋な料理を楽しんでみたいという気持ちもあります。全盛期に軽やかに東京をイグジットして、地元の輪島で地産地消を追求したオーベルジュみたいなのをやって欲しいなあ。

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