SOTO(そと)/富山市

アメリカで30年以上にわたってSUSHIを啓蒙し続けてきた小杉外博シェフが故郷の富山に開いた「SOTO(そと)」。ミシュラン2ツ星です。
内外装ともにシンプルな誂えで、カウンター10席強といったところ。入店時の消毒やアクリルボードの配置など、衛生面について意識の高いお店です。荘厳なクラシック音楽をBGMとして流しているのは珍しい。食事はおまかせコースのみであり、料理だけだと2万円、日本酒のペアリングをつけると2.4万円です。
最初に胡麻豆腐。泡状にした醤油フォームが面白い。
甘海老には塩麹やオリーブオイルを用いたりと興味深い試み。外子の塩漬けが酒を呼びます。
キジハタはポン酢主体でサッパリと。シソやショウガの風味がその爽やかさを後押しします。
フクラギ。ブリの幼魚であり、ブリほどコッテリしておらず軽やかな味わい。しかしながら調味にトリュフオイルを用いる意図はよくわかりませんでした。
ゲンゲ。富山湾の奥深くに棲む深海魚であり、そのブヨブヨとしたゼラチン質が特徴的です。
モズクに太刀魚をトッピング。土佐酢のジュレが潔い味わいで美味。
タコの小豆煮。初めて食べる料理ですが、仄かな甘味と小豆の風味が思いのほかタコに合いました。
ヒラメの薄造りは昆布の旨味と柚子の香りが心地よく、潔い味わいです。
バイガイはたっぷりのカイワレと共に。素材そのものは悪くないのですが、ガーリックパウダーを多用しており調味が暴力的で、とっ散らかった味わいです。
茶碗蒸しが独特。ボタンエビの出汁がガツンときいたヘヴィ級の味わいであり、具材は無いものの存在感のあるひと品です。
白エビはシイタケの風味がきいたお出汁と共に。白エビを食べると富山に来たなあという気持ちが盛り上がります。

なのですが、いよいよ料理を出すテンポが遅すぎますね。そろそろ我慢ならんくなってきた。常連と喋ってばっかいないで手を動かして欲しい。
フクラギとサバの燻製をムースにしたひと品。見た目は白く可愛らしいのですが、味覚はスモーキーで凝縮感のある味わいです。
煮物はバイ貝にガスエビ。海の美味しさがギュウギュウに詰まっており日本酒が進みます。
セヴィチェと称したひと品。タネはボタンエビやホウボウ、アオリイカであり、レモンやライムを中心とした酸味が心地よい逸品です。
焼き物はクロムツに、太刀魚の味噌漬けをトッピング。ここにおいてもトリュフ塩を用いており、軽はずみな調味と言わざるを得ません。
入店から2時間半経過してようやくにぎりに入ります。ちょっともう、ひとつひとつ記述するのも面倒になってきたので、ハイこんな感じでした。ちなみににぎりに入ってもスピード感は相変わらずで正直ダルい。常連とのおしゃべりも長く、シャリをずっと手に持ったまま話し続けるのはどうかと思います。
また日本酒のペアリングについても吟醸香の強いフルーティーなものばかりが続き、当店のバラエティーに富んだ料理に合うとは言い難かったです。ひと皿づつに合わせるので種類は多いものの、1杯1杯の量が少ないので、その酒の核心をじっくり楽しむことができないのが残念。
疲れた食事だなあと振り返りつつ公式ウェブサイトに目を通してみると、メディア各社に対する要望が異常に長い。「取材要求に対しては(中略)、まずは主旨を明確に(シンプルに)記述しEメールで連絡ください。」という注意書きに思わず苦笑いしてしまいます。隗より始めよ。

食事にしろ文章にしろ無駄に長かったなあというのが率直な感想です。「天本(あまもと)」「照寿司(てるずし)」での食事もかなりの時間を要しますが、あちらは練りに練られた長さでなのでストレスは感じない。他方、当店は漫然とした長さであり、このままここで一生を終えなければならないのかと不安になるほどの所要時間でした。

食材の質と量については文句なく、お酒もトータルではたっぷり楽しめるので、2.4万円というのはお値打ち。もっと皿数を絞ってそれぞれのポーションを大きくしテンポを良くし、進捗に支障をきたす程のおしゃべりを控えれば私好みなのになあ。まあ、店主とダベりたい層も一定は居ることですし、好みは人それぞれなのでしょう。時間に余裕を持ってどうぞ。

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観光地としてあまりパっとしない富山県につき、「幸福県」すなわち「恵まれた自然環境の下、住居・労働・教育などの都市機能が整備されている県」であることに目を付けた富山本。富山の魅力を様々な観点から紐解いています。