レストラン・パッション(PACHON)/代官山

代官山にある老舗のフランス料理屋。シェフのアンドレ・パッションは1944年モンペリエ生まれのカルカソンヌ育ち。「カスレ(後述)の王様」と名高いマルセル・エメリックのもとで料理人としてのキャリアをスタート。紆余曲折あり1984年当店をオープン。日本におけるフレンチレストランの草分けとなりました。
赤い絨毯に白いクロスがバリっと輝き、重厚感の溢れる店内。店の奥にはリアルな暖炉があり、実際に薪がくべられ、その熱を利用して肉料理も調理されています。しかしながら、厚みたっぷりの空気感であるものの、客層は微妙ですね。蛍光グリーンフード付きパーカのウォークインを認めるなど、あまり店の哲学やストーリーを大切にしない方針に映りました。
ワインリストをお借りして渾身の一本を選び出したのですが、「ただいま切らしております」の一言で終了。ソムリエからの代替案も全くの見当違いであり、加えて倍の価格帯。ワインに対してもあまり思い入れがないお店のようです。波立つ気持ち。面倒になって一番安い泡を注文。写真撮り忘れた。
アミューズは緑色の豆のムース(?)にタマネギのムースをトッピング。いずれも塩気が濃くわかり易い味付けです。
前菜はアボカドとエビのフランにコンソメのジュレ。アミューズ同様、非常にわかり易い味付けであり、ややもすると俺のフレンチ的ですらあります。

そうそう、入店から着席、オーダーやワイン選びの時から感じていましたが、当店はサービスのレベルが非常に低い。頭数ばかり多くドタバタがちゃんがちゃんと身のこなしがエレガントでない。お隣のバンケットルームでは結婚式披露宴が開催されており、エース級はそちらに取られていたのかもしれません。私の黄信号が照度を増して点滅する。
パンは結構美味しい。本日一番のお皿でした。
カブのポタージュ。アミューズと前菜の強い調味とは対照的に、実にボヤっとした味わいです。かといってカブの風味が強いかというとそうでもなく、うーん、ちゃんと味見してるのかなあ。
メインはスペシャリテの「カスレ」を注文。カスレ(cassoulet)とは フランス南西部の豆料理であり、豚肉ソーセージや羊肉、ガチョウ肉、アヒル肉等と白インゲンマメを長時間煮込んで作る豆のシチューです。
ここでもサービスがやらかしてくれました。「お取り分けします」と言いつつ、ボロボロと皿からこぼしまくります。ただでさえ肉の量が少ないのにそれを丸ごと落としても知らんふりかよ。やってくれるな。このために命を失った鴨・素材の生産者・料理人・ゲストに対してあまりに失礼な仕打ちです。そんな状態を目の当たりにしながら食べるスペシャリテの味など中くらいである。
デザートはピンクグレープフルーツのソルベに柑橘類。これは見た目通りの味わいであり美味しかった。
小菓子はガラガラとワゴンでやってくるのですが、「おひとりさま4つまで」という謎のお個数制限。鴨肉は平気でゴミにしてくれる割に随分と狭量なこと。6種類しかないんだから全部くれたっていいじゃん。
コーヒーは中々に上質でした。

やはりバンケットが稼ぎ頭のレストランはダメですね。小笠原伯爵邸で受けた印象とそっくりです。食事はそれなりに美味しいですがそこらへんのビストロと大差ないレベルであり、ただ単に仰々しく盛り付けてあるだけです。がっかりだ。


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