川次/栄(名古屋)


ガッルーラでメインを食べることができず、その他の料理にも不満しか感じなかったので、そうだオヤツにウナギを食べて帰ろう、という暴挙に。
ヘンな時間帯だったので、いわゆる有名店は休憩中。慌ててスマホから検索し、丸栄という百貨店のデパチカにあるイートインコーナーへ。こういう時、食べログってすっごく便利。
何とも赴き深い店内です。キッチンを覗くとタレでベッタベタに汚れており、料理を提供する姿勢としてどうなんだろうと先行き不透明な気持ちが育まれます。
これは安い!と思って慌てて飛びつくと残念ながら売り切れでした。
それではと、ひつまぶしを注文。税抜1,600円は驚異的な安さ。東京なら倍とられてもおかしくありません。
注文して10分ほどで注文。「ウナギは注文を受けてからさばき始め、40~50分は待つのが正統的」という愛好家もいらっしゃいますが、私のバカ舌では10分調理と50分調理の違いが良くわかりません。したがって私にとっては当店ぐらいのスピード感がちょうどいい。
うなぎ。値段の割にしっかりとした大きさであり、色艶や香りも食欲をそそります。ちなみにメニューに「活〆」という表記があるのは、その日の朝に〆たうなぎを用いているからとのこと。
この値段で肝吸いまで付いてくるのは奇跡。味はまあ、標準的なものです。私にとって肝吸いとはウナギを食べる際の儀式のようなもので、めちゃくちゃに美味しいと感じたことは一度もありません。
奈良漬け。これも普通。
1杯目はそのまま頂きます。外皮がバリバリと香ばしく、一方でインサイドはジューシー。好みのタイプ。くどいようですが、1,600円でこのレベルのウナギを食べることができるのはミラクルである。
薬味はヘナヘナ気味のネギと画一的なワサビ。悪い意味でなく、この値段であればこんなものでしょう。
2杯目は薬味入り。私がひつまぶしを最も美味しいと感じる瞬間はこの時です。まだ腹が膨れておらず、出汁で味がボヤけてもおらず、同じ味が続いて飽きてもおらずという絶妙のタイミング。
出汁は大容量をお好みで投入。
まずは出汁のみで。当店のタレは甘味が強いほうなので、出汁で少し希釈したぐらいがちょうど良いかもしれません。
残りの薬味と出汁を用いてごちそうさまでした。

リーズナブルなお店です。サイズ自体はあつた蓬莱軒まるやよりも小さく、成人男子であればやや物足りなく感じるかもしれませんが、価格設定の低さがすべての満足度を押し上げます。

そこそこ美味しく並ぶことは無く、安い。名古屋の中心地で小腹が空いて、パパっと名古屋らしいものを食べたい場合にオススメです。



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卯の刻/六本木


ミッドタウンから国立美術館方面へ。築年数の深い雑居ビルの2階にあります。トイレは共用のもので非常にシュール。衝撃的。ある意味見ものです。
生湯葉と金時草のおひたし。いわゆる居酒屋料理であり、特別な工夫などは特にありません。
和風カニ・エビシューマイ。ポーションが大きくわかり易い味わいです。あまり甲殻類らしさは感じられず、どちらかというと九州のイカシュウマイのような味わいでした。
八丁味噌のふろふき。圧倒的な八丁味噌の風味を上手に利用しています。そぼろ肉がアクセントとなり、これだけで立派なお酒のツマミになりました。
メヒカリの唐揚げ。バリっと高温で揚げられた香ばしさが心地よい。思い切りのある調理です。ホクホクとした肉質もグッド。
炙りフグの九条ネギ巻き。これはイマイチでした。旨味に乏しいフグに妙な食感のネギ。食材それぞれがバラバラに分離しており、全体を取りまとめるはずのジュレも見当違いな味わいでした。
穴子ちまき。初めて聞く料理名。ドキドキしながら御開帳。
ドーンとした穴子が絵になります。モチ米のネットリとした食感にホッコリとする穴子の食感。味付けの品も良い。本日一番のお皿でした。

ただし全体として捉えると、料理もサービスも印象に残り辛いお店でした。この地この価格帯この料理で、どこに向かいたいのかビジョンが見え辛い。そういう意味ではビジネスライク。アラカルトメニューは充実していたので、ちょっと高級な居酒屋として使うのが良いのかもしれません。

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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。


トラットリア フラテッリ ガッルーラ/名古屋


5~6年ほど前は名古屋に年間200泊ほどしていたのですが、最近再びお邪魔する機会が増えてきました。当時最も衝撃に感じた名古屋弁は「コロ」です。彼らは冷たいうどんのことを「コロ」と呼ぶ。
名駅前が東京の丸の内のように変貌しています。

ちなみに名古屋の人は名古屋駅のことを「名駅(めいえき)」と呼びます。「東京の丸の内」という書き方をしたのは、名古屋にも「丸の内」という地名があり、もっと言えば「自由が丘」「港区」のような地名もあります。同音ながら東京とイメージが全く異なる街であるのでご注意を。
TRATTORIA FRATELLI GALLURA。八事(「やごと」と読む。名古屋の地名)の名店のカジュアルラインです。入居する大名古屋ビルヂングのレストランフロアの目玉商品。
ランチで2部制という超人気店。私は開店と同時に予約ナシで訪れたのですが、運良くカウンター席に通してもらうことができました(以上、写真は公式webサイトより)。
メインの有無により2コースに分かれます。このあと用事があったので、80分でお店を出たい旨を伝えると「それならば絶対にメイン無しのコースで!」とのことでした。あーあ、メイン食べたかったなあ。
スペシャリテ。フォアグラのスモークとマンゴー、はちみつのソース。溢れ出るヒルズダルマット感。いかにも作り置きをちょいちょいと盛りつけた見栄えです。

スモークと銘打ちながら薫香や食感にそれを感じることができず。また、はちみつの甘味にも思い切りが感じられない。マンゴーに至っては目を閉じて食べればそれとはわからないほど風味に乏しく、これがスペシャリテであるならば前途多難である。
左は自家製のフォカッチャにタマネギを載せて焼いたもの。タルトフランベのような成り立ちであり、タマネギの甘味に溢れこれだけで立派な一品です。

右は「バケットラビット(baguette rabbit)」という名古屋の有名なパン屋のものらしいですが、全体的に粉っぽいというか、半生のお好み焼きというか、ビルズのパンケーキを食べているような錯覚で、私は好きではありませんでした。
オリーブオイルも出してくれます。お好み焼きを浸すとちょうど良くなりました。
シイタケとサルデーニャ島のからすみのアーリオオーリオペペロンチーノ。外観上シイタケの迫力は文句なしなのですが、どうにも旨味に乏しく見かけ倒しです。

パスタの茹で加減は悪くないのですが、味付けが全体的にボンヤリとしておりパっとしません。塩気もニンニクも唐辛子も何もかもが物足りない。
デザートはゴルゴンゾーラのジェラートに洋梨のスープ。これはいいですね。ビビッドな青カビの風味がきいています。
飲み物はエスプレッソを選択。味は良いのですが、量が底から1センチほどしかありません。これが本場風だと言われればそれまでなのですが、私にとっては張り合いのない1杯でした。

ここまでの所要時間は35分。冒頭の「絶対にメイン無しのコースで!」のくだりは何だったのか。メイン余裕で食べれんじゃん。がっかりだ。回転させることだけに意識が行き、キッチンの稼働状況とか、料理のリードタイムとか、客の置かれた状況とかにあまり興味が無いのでしょう。

料理は高級なファミレスといった印象。まずくはないが、うまくもない。それでいて3,000円を超えてくるので非常に割高に感じました。都内の人気店であれば1,000円代でまとめてくることでしょう。八事の本店に行くのを躊躇してしまいます。

サービスも気になりました。きちんとした接客をこなすベテランもいれば、明らかにサービス初心者のバイトもいます。ランチで3,000円を超える店にはちょっとなあ。



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すし初/湯島


「年末だし、そろそろすし初行こうか」と大学時代の先輩よりお誘い。「年末だし」に特に意味はありません。
凍てつく寒さの夜ですが乾杯はビール。
里芋のすり流し。黄色い色味には少量のカボチャを加えているとのこと。すり流しって美味しいですよね。自宅の水道を捻ればいつもすり流しが出てくればいいのに。
くりりん、という銘柄のカボチャ。糖度が高くフルーツのよう。モノによっては1玉6,000円を超えることもあるそうな。
れんこん。照り焼きの香りが鼻腔をくすぐり、独特の食感が食欲を増幅させます。海苔のアクセントも心憎い。
早々にビールを切り上げ日本酒へ。今夜もたっぷり飲みますよ。
普段とは趣向を変えて、単純に刺身を出すのではなく、日本酒を熱し軽く茹でてお刺身を出して頂きました。寒い冬の前菜にぴったり。

まずは甘エビを3匹。エビの香りと食感のグラデーション。まったくエビは生でも火を通しても優秀な食材です。
ヒラメをミキュイ(半生)状態で食べるおは初めてかもしれません。熱を持つとコクが膨らみ、いつものヒラメとは一味違った印象に。
稀少な日本酒。バナナのような香りで芳醇な1杯。
アオヤギ。仕込みに大変時間を要するネタです。部位によって味の印象が少しづつ変わります。バター焼きなどにしても美味しそう。
ブリ。こっていりと大トロの部分に火を通し、一番美味しい上品な部分を凝縮。日本酒の盟友として最適な逸品でした。
サバと中トロ。当店の刺身はスライスが厚いのがいいですね。きちんと魚を食べている時間を楽しむことができます。マグロは鉄分と脂質のバランスが良かったです。
特大サイズのタラとその白子、マツタケ。タラは万能な食材でリーズナブルだと捉えているのですが、すし屋や和食店では思いのほか食べる機会が少ない。濃厚でクリーミーな白子と共に澄み切った身を含み、香りはマツタケで補完する。味わいと香りが複雑に折り重なった一皿でした。
味が乗った日本酒で、白子のコクを堂々と受け止めてくれます。そして意外とキレもある日本酒。
銀ダラの西京焼き。むはー、こういう普通の料理をきちんとしたお店で食べるのが一番の贅沢。品の良い西京味噌の風味がグラスを持つ手を後押しします。
ペースが速くなってきました。1品1品にあわせて手を変え品を変え日本酒を合わせてくれる。さすがは熟達した利き酒師。
牡蠣も誇らしいほどに旨味が凝縮され、酒を飲む手が止まらない。
それにしてもよく飲む男たちである。東麻布天本でも思いましたが、写真を今ふりかえり、自分で自分にひいています。
秋刀魚の照り焼き。秋の脂をたっぷりと含んだ秋刀魚をガラリと焼き、これまた濃厚に照り焼きで仕上げます。味に味を重ねる足し算の調理。これまでとは方向性の異なる皿で胃にスペースが空きました。
足し算の調理にはフランスワイン。そう、店主は実はソムリエ資格も有しており、隠れキリシタンのようにワインを隠し持っていることがごく稀にあるのです。
ようやくにぎりにたどり着きました。大きな大きなエビに黄味酢をのせた一貫。当店のにぎりではコレが一番好き。ジャクジャクとした歯ごたえのあるエビに黄味酢の複雑な風味がベスト・マッチ。
酔いも回り始め、店中にある日本酒ジャンジャン持ってこいモードに入ったので、ここからすごい飲んでます。
ホタテ。あつぼったい身に焼き目の香ばしさ。若干の苦味がクリアな味わいを引きたてます。
とろりとした飲み口にハッキリした強めの味。興が乗ってきた際の火付け役に適任です。
ホッキ貝。イントレチャートのような見栄えは大将の努力の賜物。一口で頬張り永遠に噛み続けていたい独特の風味。
4番ファースト而今。メロンのような丸みのある香り。しみじみと行き渡る温かい酸。やっぱこの酒おいしいわ。
サバ。タラとどうように、安くて抜群に美味しいネタです。表立ってサバを出してくれる鮨屋が少ない中、当店は堂々と私の心の設計図を読んでくる。うまいっ。
ヅケ。赤身の鉄分とヅケ地の旨味が融和します。サッパリとした仕上がりで、別腹を少しづつ広げてくれました。
秋刀魚を炙ってヅケ地で洗ったもの。香ばしい焼き目の香り、ヅケの香り、脂の香り。香りを食べるにぎりでした。
ブリ。たっぷりと脂がのったロールスロイス級の肥満体。シャリの甘さと渾然一体となって胃袋に雪崩れ込んできます。
ここまで来ると酩酊状態。隣の客と母校が同じことが判明し、肩を組んでの大宴会。
筋抜き。トロのトロットロの部分から筋を抜き、トロトロの極みを目指した逸品。バイブスがヤベえ。鮨好きでこの握りを好まない人はいないのではないか。にぎりの中では本日一番のものでした。
穴子はツメの甘さを楽しみながら、ほろりほろりと崩れ落ちる。酷く旨いが、この味わいは蛍の光。今夜のフィナーレも程近い。
〆の巻物はネギトロ。トロの刺身を丁寧に包丁でつぶし、優しく優しくシャリで包み込みます。キッチリ腹10分目!ごちそうさまでした!
カーテンコールに而今をもう一杯。今夜も楽しい一夜でした。
デザートに梨。ふくよかな自然の甘さに人心地つく。
デザートに合わせて面白い酒を。スペインから輸入したシェリー樽に火入れの「七本槍 純米」を入れ熟成。
お開きにオーク樽熟成貴醸酒。ハチミツの香りと濃厚な甘味。個性的な日本酒です。

いやー、食べた飲んだ、満腹じゃ。「そりゃそうですよ、タケマシュランはウチの客で一番飲み食いする。大体、普通の人の倍量ですね」道理で最近腹回りに肉がついてきたわけだ。年末年始はクルーズ旅行。毎朝ガンガンに運動しようかしらん。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。


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