歓盃 人形町田酔はなれ/人形町

「オープンしたばかりで全然情報無いんだけど、系列店はいい感じだから」とご予約頂きました。私とは生活圏が全く異なる連れ。しかし彼女の良い店を選び取る眼力には間違いがないので、安心して臨みます。
「ウォーミングアップしよう。ここいつも混んでるから、今がチャンス」ということで、流れで突入。
生ビール中。思ったより小さくて3口で飲み切る。
もつポン酢は280円と破格。きちんと美味しく酒場のツマミとして完璧。
中ジョッキじゃアレなので大ジョッキ1リットル。飲んでも飲んでも減りゃしない。中間を用意して下さい。

というわけで、おなかタプタプほろ酔い気分でウォーミングアップ完了。
さて歓盃。かんぱい、と読みます。田酔というお店の新店。開店祝いの胡蝶蘭の数がものすごい。
新品の香りがする店内。清潔そのもの。日本酒のプレゼンテーションもワクワクする。「広告とか、ネット上に情報を公開したりとかしておらず、田酔経由のお客さん中心で始めてます」と、店主。スタートアップ時から関与できて私は嬉しい。
食前酒は済ましているので、早速本題に入ります。すし初で日本酒を飲む機会が多いため、結構知っているものが多くて嬉しかった。
お通しにアワビ。適度な歯ごたえと上品な肝ソースが酒を呼ぶ。
湯葉はコクと旨味に溢れ、ああ、和食食べてるな感がすがすがしい。
と、他のお客さんが入り慌しくなってきた。店主はおひとりで調理をこなしているのです。つなぎで出して下さったアテと
日本酒。いやあ、酒飲みにはたまらないおもてなし。
新政のようにわかりやすい銘柄を組み込んでくれるのが喜ばしい。
とらふぐの薄造り。今シーズン初フグ。しかしこの価格帯でフグを出してくれるとは、頑張ってくれています。
ボンボコ日本酒が出てくる。ここまで日本酒とのマリアージュを前面に押し出した和食店って珍しい。
赤ナマコ。コリコリゴクリ。コリコリゴクリ。何この永久機関。素晴らしい。
やはり而今は美味しい。目を閉じてでもはっきりとわかる。おかわりだ!
ごまさば。ごまさばって九州かおにまるでしか食べないので、ある意味目新しく感じました。3杯目の而今に進むかと逡巡し、夜は長いと自制する。
カキグラタン。柿の器に牡蠣と白子がグツグツと煮立っております。完全にオヤジギャグですが、柿の甘味が絶妙で心から楽しめました。大阪の三ツ星フジヤ1935のトリュフのトリュフとは一線を画す。
辛さと酸味のバランスが良くて好き。
ちなみにこちらの酒蔵の松本さんはDJでもあります。若い才能が日本の伝統を支えるのって大事ですよね。
酒粕とベリーをあわせたもの。センスいいなあ。ちょうど良い箸休め、のはずが、酒に合うのでちっとも肝臓は休まらない。
カニとポルチーニのコロッケにタルタルソース。説明無用。どう考えたって美味しい組み合わせ。
何という味だろう。その名に違わず気品溢れる香りの豊かさ。引き続きオヤジギャグに近いものを感じますが、これが正しいと言い切る姿勢につい納得してしまう。
お、アンキモ!と思いきや、フォアグラでした。
甘味が感じられフォアグラのパワーに負けてない。
すき焼きです。お、さすが人形町とつぶやくと「そうなんです、今半さんから仕入れてます」。
考え抜かれた組み合わせを様々に楽しむことができ、日本酒ラヴァーにとっては最高の店ですな。隣席の品の良い女性4人組に話しかけられ手を叩き合う。いいぞ、君たちと僕たちは今日から親友だ。
目の前で割り下を作るところから始めていたのですが、ギョギョギョそんなに砂糖入れて大丈夫?と心配になりました。が、杞憂。確かに甘味が強いのですが、焼き豆腐と良質な卵が全てを受け止め、味わいを深淵なものにしています。
お食事はサバの炊き込みご飯。これには参った。うまいのなんのって。
サバの旨味が米の一粒一粒にまで染み渡り、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。柚子の風味も心憎い。直接材料費という意味では大したことないのかもしれませんが、兎にも角にも美味しかった。
お漬物と

赤だしもあわせて供され
私はひたむきに2杯目3杯目へと突き進みます。私に釣られてか、連れもおかわり。女性4人組はお土産にオニギリにしてもらっていました。
もうちょっと飲もうかということで、酒を追加追加。「生酛(きもと)って何?」と連れに尋ねられ、平たく言うと手が込んでるってこと、と答えると「あたし日本酒のこと良くしらないけど、キミが平たく言いすぎてるってことぐらい、わかるわよ」。
クロアチアのような酒。だがしかしこのあたりで記憶があやふや。明日は二日酔い確率80%であり、1日を無駄に過ごすことでしょう。

お会計で驚く。ふたりで3万チョイ。これだけの料理と酒をひっきりなしに楽しんでこの価格は奇跡。そりゃあ、開店したばかりなのに連日満席になるわけだ。一夜にして当店のファンになってしまいました。

食事のコースは完全予約制ですが、夜遅くになればバータイムとなり、予約不要とのこと。きちんとしたバーでややこしいカクテルを2~3杯飲めば、それだけで1万円近くになることを考えると、当店のバー使いは大いにアリですな。

次回は是非とも田酔に。お、六本木ヒルズにも分店があるじゃないか。すぐ行こうっと。


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