ブルガズ アダ/麻布十番


シイタケ嫌いから「1ヶ月に1回ぐらい、ちゃんとしたお店に行くようにしましょうよ」との提案。恋人かよ。ということで今月はオスマントルコ宮廷料理として有名な麻布十番のBURGAZ ADAへ。
エキゾチックで神秘性のあるインテリア。奥の個室を陣取り宴の始まりを待っていると「うっかりどこかの王かと間違えました」とシイタケ嫌い。確かにそう思わせる独特の空気感があります当店には。
トルコのビールで乾杯。ピルスナータイプでいわゆる一般的なビールです。ちなみに「エフェス」とは「エフェソス公会議」の「エフェソス」のトルコ読みであり、彼の地に船で訪れたことのある私は自分で言うのもアレですが通な客である。
ナスの中にトマトやハーブを詰めたもの。普通に美味しい。が、 どのあたりがオスマントルコなのかはわかりませんでした。

公式ホームページに「歴代皇帝たちに供された門外不出の料理のレシピを継承するレストランは、世界にたった3軒―イスタンブルに2軒と、ここ、BURGAZ ADA」とあるのですが、そこまで希少性が強すぎると、「これは正統的なオスマントルコ宮廷料理である」と判定できる人がもはやいないのではないでしょうか。
パンはフレンチやイタリアンで見かけるものとは一風変わっています。バターのコクは薄い代わりにコロっと軽快に焼きあがっており、ゴマの風味も心地よい。好きです。
冷前菜盛り合わせ。右から順に、エビを種々のハーブで味付けしたもの。普通にイケる。アーティチョークはクセがきちんと取り除かれておりしっかりとした素材の味。ムール貝のピラフも見た目の通りの味わいで美味。カナッペにはこれまた種々のハーブにトマト味。

白い球状のものはフムス。ヒヨコ豆を潰したペーストで糖度を上げたタマネギを包んでいます。緑色の直方体はそら豆味。左奥はインゲンでした。
チキンスープ。たいそう珍しいショートパスタが入っているらしいのですが、知らずに食べれば全く気づくことができない量でした。アメリカのデリで売られているチキンスープと大差なし。

「今夜はどうぞよろしくお願いします」とシェフが挨拶に来てくださいました。物腰柔らかで人柄の良さが滲み出ています。彼のコンピテンシーが店内に伝播しているのか、他のサービスの方々も非常に丁寧でホスピタリティに溢れたお店です。
トルコの白ワイン。土着品種の全く知らないブドウが3種混ざっています。フレッシュで軽快。若干の苦味と棘々しさが残ります。
冷前菜盛り合わせ。12時から時計回りに豆の煮込み。中東あたりで食べられる標準的な豆の煮込みです。赤いアーティチョークはシンプルでそのままの味。ホウレンソウのキッシュ(?)もこれまたアメリカのデリにありそうな味わい。右下はホタテ。当然に美味しいですが、特徴的な調理ではありません。

茶色い球体はハンバーグ。なんとハンバーグ発祥はトルコなんですって初めて知った。しかし味は可もなく不可もなく。

お隣のパイは味の濃い肉とたっぷりのチーズが詰め込まれており素直に美味しい。左下は「歴代皇帝が愛したオムレツ」らしいのですが別に普通。言ったもの勝ちですよねこういう料理は。「歴代天皇が愛した卵焼き」と書けばそれなりに厳かになるのと同じ。左上は魚のディップでした。
魚料理はタイ。飾り気の無い調理ではあるものの、肉厚でその歯ごたえを楽しむことがき、他意無く美味しかったです。
肉料理に向けて赤ワイン。こちらもトルコ産で、聞いたことの無い土着品種とシラーが混ざっています。意外にエレガント。
メインはシェフおすすめの羊料理にしました。色々と時間をかけて高尚な調理をしているらしいのですが、ウルトラチョップのラムのほうがわかり易くて好き。一方で、カリフラワーのソースは完全にフランス料理のそれであり、これぞタンジマートと唸らせる出来栄えです。
デザートは冷たいお汁粉のようなもの、杏仁抜きの杏仁豆腐、砂糖よりも甘く味付けしたニンジン。もの珍しくはあるものの、取り立てて美味しいものではありませんでした。
食後にチャイ。トルコのチャイはミルクで煮出したりはせずストレートに飲むようです。つまり、普通の紅茶である。

どの皿も面白くはあるのですが、殊更に褒めるほどの料理でもありませんでした。四捨五入するとフランス料理であり、「わ!これがオスマントルコか!」という瞬間は見当たりません。

それでも立派なレストランなのでお会計は結構高くつき、費用対効果は非常に悪いです。デートなどで行くお店ではなく、一通り食べ込んで一回転した食通向きの変り種なお店でしょう。接客は完璧なので、接待とかにいいかもしれません。

シェフのセンスはひしひしと感じられたので、「オスマントルコ宮廷料理!」のような虎の威を借る必要は全く無いと思います。別形態のお店で出店して、トルコの型に嵌めることなく自由な料理を楽しんでみたいなあ。
帰宅後、シイタケ嫌いから「トルコ料理ってものを知らないだけかもしれんが、俺あんま好きじゃないのかも、、、。」というメッセージ。わかる、わかるよその気持ち。互いの物足りなさを補うため、飲み直しにおにまるへと改めて家を出る。

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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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